2014年4月10日木曜日

山手通りの自転車インフラの問題点と改善案

山手通りの車道の構造は
自転車が走る事を全く考慮していませんが、
それでも車道を走る自転車はいます。

設計者が想定したであろう利用形態



ですが、こういう現実も有ります。

中距離(5〜15kmくらい)を自転車で移動する人にとっては、
山手通りの自転車通行指定部分(歩道上の自転車レーンもどき)は
劣悪な通行環境です。具体的には、

  • 急な屈曲、急な勾配変化が有り、まっすぐ快適に走れない。
  • 駅やスーパーの周辺では歩行者や駐輪自転車に道を塞がれる。
  • ブロック舗装や縁石の段差で乗り心地が悪く、疲れやすい。
  • 幅員が2mしか無く、追い越しやすれ違いが安全にできない。
  • 交差点やバス停、陸橋、地下駐輪場入口の周辺でレーンが途切れる。

2014年4月13日 写真を追加

たったの2mでは狭すぎる。

設計者は自転車に乗らない人間なのでしょうか。
たったこれだけの幅員では
すれ違いも追い越しも冷や汗ものです。

さらに、ただでさえ狭い空間を低木の枝が侵蝕しています。
これは樹種の選択からして間違っています。
剪定も年一回だけで、夏の終わりにはボーボーに伸びてしまいます。

植栽でカーブ前方が死角に

ここも不適切な植栽です。
安全への配慮がまるで為されていません。

無駄に屈曲の多い線形

バス停や植栽などの皺寄せを全て自転車通行指定部分が蒙っています。
設計上の優先順位が最低だという事が露骨に現われています。

交差点ごとに縁石の段差で衝撃が来る。

段差の多さは、或る程度の距離を連続して走る場合は
じわじわと効いて来るので、最後には軽い脳震盪になる事も有ります。
そこで、多少の危険には目を瞑って車道を走るわけですが、

レーン幅に全く余裕の無い単路区間

車道外側線が引かれていない区間は
車道の端に空間の余裕が有りません。
安全マージンも考慮すれば、自転車は実質的に
車の流れに混ざる形になります。

このような場所では、
リスクテイキング傾向の強いドライバーに
危険な追い越しをされる事が有ります。

私も、中井駅の北でJRの高速バスに
撥ね殺されそうになった事があります。


駐車帯の有る単路区間

駐車帯は、路駐車両が無い限りは
安全な自転車レーンとして使えます。
(ただし、渋滞時はモーターバイクのすり抜け空間になります。)

ここを路駐に塞がれると、自転車は車の流れの切れ目を見計らって
車線変更しなければならないので、運転は一気に難しくなります。
一部のドライバーは自転車が手信号を出しても無視して
強引に自転車を追い越すので、とても安全とは言えません。

また、路駐車両のドアが突然開く事も有るので、
その“ドアゾーン”を避けて走る工夫が必要ですが、
後続車の圧力も有って、上の写真のサイクリストのように
ドアゾーンにまともに入ってしまう人が多々見られます。


横断歩道の手前の狭窄

駐車帯は交差点や単路の横断歩道の手前で消滅します。
これは、ボトルネックの原因になる路上駐車を防ぐ効果と、
歩行者の横断距離を短くする効果が有ります。
車道を走るのが車だけであれば合理的な構造です。

しかし、自転車にとっては強制的に車の流れに
合流させられるので、合流時に車から追突されたり、
サイド・スワイプ(引っ掛け衝突)されるリスクが生じます。


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私から見れば、山手通りは失敗作です。

主要路線という位置付けの道路であるにも関わらず、
短距離利用の遅い自転車しか考慮していないからです。
その結果、中・長距離を速く走ろうとするサイクリストは、
不快な歩道か、危険な車道かという、選びたくない二択を迫られています。
このような環境ではマイカーから自転車への
モーダルシフトを大々的に起こせません。

では、どう作れば良かったのか。

短距離だけでなく、中距離を中速(20〜30km/hくらい)で
移動する自転車も安全・快適に走れるように、車道から分離された
高規格な自転車道を整備すべきだったと私は思います。

イメージとしては、
  • 幅員3〜4m
  • 段差が一切無く、車道と同じ滑らかなアスファルト舗装
  • 緩やかなカーブ、緩やかな勾配変化
  • 歩道との境界に縁石(間違って乗り上げても転倒しない形状)
という感じです。
この他にも欲しい機能は有りますが、
  • 交差点での advanced stop line
  • バス停部分のバイパス構造
  • 車道と自転車道の間の緩衝帯
  • 単路の横断歩道や交差点の左折で信号待ちが不要
実はこれらは現状の自転車レーンもどきで
既に実現できています。

「失敗作」とは言っても、実際はほんの少しの改良で
劇的に変身する可能性を秘めているわけです。

そうなれば、山手通りは
広域自転車ネットワークの旗艦路線として
世界的にも高く評価される事例に数えられるでしょう。

少なくともロンドンの Cycle Superhighway 2 は
ぶっちぎりで追い越せます(断言)。
アムステルダムの s100 にも勝てるかもしれません。


2014年4月20日
改良イメージを描きました。
山手通りの自転車レーンの改良イメージ