自転車利用に対するイギリス人の意識を調査しました。
「自転車に乗るのは良い事だ」という意識は有っても、
走行環境への不安から実際の利用には繋がっていないようです。
road.cc
2014年4月2日
What’s keeping Brits off the bike? In a word: fear, says new study
(引用元の記事を要約)
University of the West of England の研究者が
イギリス国内の成人を対象としたアンケート調査を実施した。
主な項目の結果:
- 33%が自転車での短距離の移動を検討している
- 34%が自転車での移動に自信が無いと感じている
- 65%が自転車インフラへの支出増に賛成
- 72%が自転車は環境に良いと考えている
- 46%が「自転車に乗る事はクールだ」に同意
「自信が無い(I'm not confident)」とは
どういう事でしょうか。
日本では「自転車通勤を続ける自信が無い」とか
「体力に自信が無い」とは言いますが、イギリスのそれは、
「生きて職場に辿り着く自信が無い」という意味のようです。
関連する過去の記事
調査を企画した UWE Bristol の Alan Tapp 教授の発言からも
貧弱なインフラに対する危機感が読み取れます。
road.cc
2014年4月2日
What’s keeping Brits off the bike? In a word: fear, says new study
“... government must meet the urgent need
for a safer cycling environment by investing in cycleways.
(「……安全な自転車通行環境という緊急の課題に対し、
政府は自転車専用道路への投資で応えるべきだ。)
そうした実態を反映してか、自転車通勤をする人の割合は
イギリス全体では低調なまま変わっていないようです。
the Office for National Statistics(イギリス国家統計局)
2014年3月26日
2011 Census Analysis - Cycling to Work
(引用元の記事を要約)
イングランドとウェールズを合わせた範囲で
「自転車通勤者/労働力人口」の割合は
2001年から2011年までの10年間で
2.8%のまま変わっていない。
酷い数字だ。まだ日本の方が高い。
2010年の日本の国勢調査によれば、
通勤通学に自転車を使っている人は11.2%(*)、
鉄道やバスと組み合わせて使っている人も含めれば15.9%になります。
* 通勤通学の手段が自転車のみの場合。
イギリスの統計では「主な手段が自転車」の場合を集計している。
2014年9月2日追記
{
統計名
平成22年国勢調査 従業地・通学地による人口・産業等集計表番号と表題
(人口の男女,年齢,就業者の産業(大分類))
01110 常住地又は従業地・通学地による利用交通手段(31区分)これだけだと買い物や子供の送り迎えの実態は分かりませんね。
}
では、イギリスで危険な環境を厭わず(或いは我慢して)
自転車通勤をしているのはどんな人なんでしょうか。
the Office for National Statistics(イギリス国家統計局)
2014年3月26日
2011 Census Analysis - Cycling to Work
(引用元の記事を要約)
- 年齢は30から34歳(Figure 8)
- 性別は男性(Figure 9)
- 自転車通勤率が低い地域ほど男性の割合が高い(Figure 10)
若い男性でないと耐えられないような過酷な通行環境という像が浮かび上がってきますね。
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日本では自転車問題と言えば歩行者との事故や
駐輪場の不足(「放置自転車」という言葉は意地でも使わないぞ!)
が中心的で、安全な通行空間については真剣に議論されていません。
一方イギリスでは自転車の歩道走行が原則禁止で
危険な車道を走らざるを得ないので、自転車問題は
生きるか死ぬかの切実なものとして認識されているようです。
さらにオランダの場合を見てみると、
安全安心な自転車インフラが整っているのは当たり前で、
- もっと滑らかな舗装を
- もっと幅の広い自転車道を
- もっと待ち時間の短い信号を
(運転中のスマートフォン使用や駐輪場不足など、
日本と同じ課題も抱えていますが。)
こうして眺めると、マズローの欲求5段階説を
絵に描いたような構図ですね。