「自転車ツーキニスト大集会」の告知が届きました。
バスと自転車の共存問題について討論するそうです。
告知メールに気になる点が有ったので、
三つのトピックを抜き出してそれぞれ考えてみます。
(1) ルール・マナー無視問題
東京では通勤に自転車を使うツーキニストが増加する一方で、一部の危険な歩道逆走やルール・マナーを無視した利用者のために自転車への批判も強くなるなかで
(2) 幹線道路に自転車レーン
「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」に基づき、東京の主要幹線にも車道上の自転車レーンが整備されようとしています。
(3) バスとの空間共有
これまで主に車道の左側を使ってきた路線バスと、どのように共存するのか、他の迷惑を顧みない交通を停滞させるような乗り方をどうやってなくしていくのか。バス専用レーンでの正しい自転車走行の実現が、エコで健康な未来都市・東京の第一ステップともいえるのではないでしょうか。
(出典:【NPO自活研ニュース】2014年4月18日)
まず (1) について。自活研は
ルールを守らないサイクリストにどうやってルールを守らせるかという視点に立っているように見えますが、
それは議論の出発点として間違っています。
そのルールは本当に合理的なのか?まず、ここから問うべきです。
- 何故そのルールが必要とされるのか。
- そのルールを守らない事でなぜ危険が生じるのか。
- 〈個々人にとっての最適な行動〉と
〈ルールが求める行動〉が一致しないのは何故か。
人ではなくルールやインフラの側に有ります。
また、人の過ちを責めても問題は解決しません。
ヒトは間違える生き物(errare humanum est)だからです。
それに気付いてインフラを抜本的に見直してきたのが
オランダやデンマークといった正真正銘の自転車先進国であり、
それに気付かず失敗を続けているのがイギリスや日本です。
過去の関連記事
---
次に (2) について。自活研は国交省のガイドラインが示す方針を
基本的に肯定しており、先の都知事選の際の署名活動でも
車道上の自転車レーンを求めていました。
私も車道上の自転車レーンを一概には否定しません。
車の実勢速度と交通量が充分低く、幅員に余裕が有れば、
レーンをペイントするだけでも充分でしょう。
但し、幹線道路まで自転車レーンで済ませようとする
ガイドラインの方針は間違っています。
過去の関連記事
そもそも何のために自転車インフラを整備するのか。
- 自転車が歩道上で歩行者と交錯している状況の解消
- 自転車による中距離移動の促進(と、マイカー利用抑制)
- 自転車と車の事故防止
であれば、自転車インフラは少数の勇敢なサイクリストだけが
使えるのでは不充分で、残りの大多数のママチャリ利用者も
安心して使えるものでなければ意味が有りません。
統計上の数字が安全を謳っているだけでは不充分です。
個々の利用者が安心を実感できるインフラでないと駄目です。
これは私自身も以前はあまり意識していませんでしたが、
ひびき出版の田村編集長のブログを見てハッと気付かされました。
事故率の点では自転車レーンは自転車道より安全と言われますが、
日本ではまだ自転車道の安全設計のノウハウが
蓄積されていないという事情も忘れてはいけません。
過去の関連記事
---
最後に (3) について。
〈バスとどうやって共存すればいいのか〉という問題提起ですが、
これも (1) 同様、発想が根本から間違っているように思えます。
実際に自転車でバスと同じ空間を走ると、
- 停留所で停車中のバスに足止めされる
- バスの後ろに付くと排気ガスを浴びせ掛けられる
- バスに横スレスレを追い越される
- (そこがバス専用/優先レーンでも)細街路に
左折進入しようとする一般車に進路を塞がれる
自転車にとってバスレーンの共用は、
旅行速度の点でも、事故リスクの点でも、呼吸器への負担の点でも、
言われているほど理想的なものではないというのが私の感覚です。
それよりはバスと自転車の通行空間をハッキリ分けた方が、
どちらにとっても遥かに安全で快適なものになります。
オランダ、アームスフォートのバス停
(Google Street View @ 52.154598, 5.383827 より)
過去の関連記事
そもそも、バス専用レーンが設置できるような広い道路(*)で、
なぜ自転車専用の通行空間が確保できないのでしょうか。
(* 東京の青梅街道を念頭に置いています。)車の通行容量や旅行速度の維持に固執しなければ充分可能なはずですし、
モーダルシフトの観点からはそうするのが望ましいでしょう。