2015年4月29日 文中の「レーン」を「通行空間」に変更
細街路との交差点の現状
狭くて段差だらけのブツ切れの通行空間を……
改善イメージ
広くて滑らかな連続空間に。
※センターラインを連続線にしたのは作画の省力化の為です。
適宜、破線と見做してください。(以下のイメージも同じ)
交差点周辺の現状
自転車の通行空間が途切れています。
歩行者は自由に歩かせて、自転車利用者に気を付けさせる
というコンセプトなのかもしれませんが、
そんなものは自転車インフラの名に値しません。
山手通りの自転車インフラは実質的に「単なる広い歩道」——。
その事を端的に物語る設計ですね。
改善イメージ
歩行者の滞留空間と自転車の通行空間を明確に分けます。
「歩行者に進路を塞がれて一々ブレーキを掛ける」といった
ロスが無くなるので、長距離を快適に走れるようになります。
また、車道を走るのと違って赤信号に足止めされる事もありません。
これは自転車の旅行速度を高める上で絶大な効果が有ります。
(最高速度を引き上げるより、止まっている時間を短くする方が大事。)
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歩行者の滞留空間の横には自転車用の滞留空間も設けており、
自転車通行空間から車道の自転車横断帯へと段差無しで繋げています。
これは一見、過剰で無意味な構造に思えますが、
二つの重要な機能を持っています。
一つは、自転車通行空間を走る自転車に、横断歩道から
他の自転車が合流してくる可能性が有る事を視覚的に知らせる事。
もう一つは、車椅子やハンドバイク、シニアカーなどに
段差の無い通行環境を提供する事です。
(自転車通行空間は自転車だけでなく、段差や横断勾配に弱い
他の乗り物にも便利に使えるインフラです。)
単路区間の現状
この空間配分は不公平だろ!
仮に歩行者の方が通行量が多いとしても、
歩行者と自転車では必要な安全マージンの量が違います。
高速で移動する自転車の方が大きなマージンを要するという
ごく基本的な事を、この空間配分は考慮していません。
改善イメージ
自転車通行空間(構造分離型)の幅員は 3.0m は欲しいですね。
これは一方通行でも双方向通行でも同じです。
最も安全マージンを要する場面が追い越し時だからです。
(前を走っている自転車の乗り手は自分が追い越されようとしていても気付かない事が多いので。)
(自転車の速度は個人差が大きいので追い越しは必ず発生します。
追い越し非対応の通行空間では、車道を選ぶサイクリストが出てしまいます。)
さらに歩道との境界は縁石で段差を付けます。
これは歩行者に「車道」と「歩道」の
境界を認識させる心理的なキューになります。
縁石の高さはそれほど必要有りません。
そこが通行空間の境界だと歩行者に伝われば充分です。
自転車が間違えて乗り上げてしまっても転倒しないように、
縁石をスロープ断面(下記参照)にするのも良いでしょう。
スロープ断面の縁石(東京都三鷹市・かえで通り)
バス停(画面奥)周辺の現状
細街路との交差やバスベイによる歩道の抉り込みで
またもや自転車の通行空間が途切れています。
あまりにも安易な処理です。
改善イメージ
バスベイは廃止し、自転車通行空間を真っ直ぐ通します。
自転車の動線とバスの停車位置の間に交通島ができるので、
ここを待ち合いスペースにします。
バス乗客は自転車通行空間のゼブラを渡って
交通島と歩道を行き来する形です。
元々バスベイは停車中のバスが一般車の流れを滞らせない為の設備ですが、
バスの発車が困難になるという副作用も有るので、
走行車線上にそのまま停めてしまった方が、バスにとっては有利です。
さらに、車から自転車へのモーダルシフトを推進するという観点からは、
バスで車の流れが滞った方が自転車に有利になるので望ましいです。
それと、間違い探しのような違いですが、
郵便ポストを車道側から民地側に移設してあります。
集配作業の効率よりも歩行者の安全を優先した配置です。
オランダではこの配置が普通です。
現状
沿道の駐車場への車の出入りが有る場所です。
こういう場所でも一々自転車の通行空間が断ち切られています。
自転車利用者に車を意識させる意図なんでしょうが、
これでは車に優先通行権が有るように見えてしまいます。
また、車道に出ようとする車が待機する位置が
自転車の動線をモロに塞いでしまうのも問題です。
2014年5月1日追記
道路交通法では、車が歩道上を横切ろうとする場合、
17条2項と、歩行者優先を明確に規定していますが、
……歩道等に入る直前で一時停止し、かつ、
歩行者の通行を妨げないようにしなければならない。
自転車との関係については単に
17条3項と書いてあるだけで、優先関係を定めていません。
……やむを得ないときは、自転車道を横断することができる。
自転車の歩道通行の特例を定めた63-4条も同じです。
欠陥法ですね。
改善イメージ
自転車が優先である事をインフラの形で明示します。
車にはスピードを出させない為に縁石を複数回乗り越えさせます。
この構造は細街路との交差部分にも応用できるので、
出会い頭事故の防止に幅広く貢献できるでしょう。
なお、車道に出る車には自転車通行空間を完全に通り過ぎた位置で
待機してもらうのが理想ですが、ここでは自転車通行空間と車道の間に
充分なスペースを確保できていません。これは要改善です。
尤も、そもそも論で言えば、車を自前の車庫に入れさせるより、
自転車通行空間と車道の間に駐車枠を設けてそこに停めさせた方が、
動線の交差が生じない点で好ましいと言えます。
現状
充分な空間的余裕が有るのに、横断歩道の近くというだけで
またしても自転車の通行空間が途切れています。
こんなグダグダ設計は……、
改善イメージ
こう直す!
カーブ区間は曲線半径を大きめに取り、直線区間との間には
クロソイド曲線や三次放物線などの緩和曲線を入れるのが理想です。
バキバキと屈曲させるなど、もってのほかです。
JR中央線の上に架かる橋
ここではもう完全に
自転車の通行空間の整備が放棄されています。
改善イメージを用意したいところですが……、
むむ、地下鉄の出口が邪魔だ。
Google Maps(2014)の地図画像を加工
都営大江戸線・東中野駅のA3出口ですね。
駅利用者の一部にとっては便利な出口なんでしょうが、
その代償として、出口横の狭窄部が歩行者で混雑し、
自転車の進行を妨げています。
道路空間を設計する上での優先順位で、
自転車が如何に低く位置付けられているかが良く分かりますね。
横断歩道、バス停、地下鉄出口……。
何か有ると直ぐに自転車に皺寄せが来ます。
こういう障害が有るから、
敢えて危険な車道を走る自転車がいるんです。
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さて、いろいろ問題点を見てきましたが、この山手通りの自転車インフラ、
信じ難い事にママチャリ利用者などからは歓迎されているようです。
下の動画でも、地元の区議会議員が「画期的」と称しています。
残念ながら、日本では質の高い自転車インフラがどういうものか、
自転車本来のポテンシャルがどれほどのものか、殆ど知られていないので、
こんな劣悪な通行環境でも喜ばれ、自慢の種になってしまうようです。
動画で喋っている日本共産党ですが、「原発即時停止」を訴えている割には、
自転車の中距離利用の促進(+マイカー抑制)にはあまり真剣ではありません。
地球温暖化防止という観点からは整合性の取れない、無責任な態度です。
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