車道でクルマに混ざって通行するより危険である
などという主張が有ります。
しかし、そうした主張の根拠になっている論文の中には、
統計を巧妙に歪めて不適切な結論を導き出しているものが有ります。
また、論文を読む研究者が論文の前提を正確に理解せず、
過度で不適切な一般化をしている場合も有り得ます。
日本は自転車インフラについてはまだまだヒヨッコの国なので、
専門家が言う事であっても鵜呑みにしてはいけません。
今回は一本の論文を例に、リテラシーの大切さを考えてみます。
今から20年前にアメリカで書かれた論文で、
自転車とクルマの衝突事故のリスクを高める因子が何なのかを
明らかにしようとした研究です。
Wachtel, Alan; Lewiston, Diana (1994).
Risk factors for bicycle-motor vehicle collisions at intersections,
Journal of the Institute of Transportation Engineers, vol.64, pp 30–35.
交通工学会の学会員の人はこちらでオリジナルが入手できます。
非会員の人はこちらで抜き刷りをダウンロードできます。
さて、では問題の部分を和訳付きでどうぞ。
(訳文中、/* から */ までは補注です。)
Accident Records
事故記録
From 1981 to 1990, one of the authors, Diana Lewiston,
analyzed all police reports of bicycle accidents in Palo Alto.
This study considers only the period from July 1985 through June 1989. (Earlier data were entered in an incompatible computer format and are no longer available.) During this period, bicycle-motor vehicle collisions accounted for 314 of 371 bicycle accidents for which a substantially complete police report was available (85 percent). The remaining accidents involved single bicycles, or collisions with another bicycle, a pedestrian, or, in one case, a train, which resulted in the only fatality during the study period. Since they constitute the majority of all reported bicycle accidents, this study considers only the incidence of bicycle-motor vehicle collisions.
1981年から1990年の期間、著者の一人、ダイアナ・ルーストンは、
パロ・アルトで発生した自転車事故についての警察の事故報告を
全て分析した。本研究ではこの内、1985年7月から1989年6月までの
期間を対象とした(初期のデータは互換性の無い形式で入力されており、
現在は利用できない)。この期間、自転車とクルマの衝突件数は
自転車事故全体の371件に対して314件を占めた。この総件数は
警察の報告書で記入に不備が無かったもの(85%)のみを数えている。
その他の事故は、自転車の単独事故、自転車同士の衝突、
歩行者との衝突などであり、一例だけ列車との衝突が有った。
列車との衝突は対象期間中、唯一の死亡事故だった。
自転車とクルマの衝突事故は、報告された全ての自転車事故の大半を
占めている事から、本研究ではこの組み合わせの衝突のみを対象とする。
不味い設計の道路では〈自転車同士〉や〈自転車と歩行者〉の
事故リスクも上がる恐れが有りますが、この研究は何故か、
〈自転車とクルマ〉以外の組み合わせを排除しています。
Bicycle accidents at intersections accounted for 237 of 371 total bicycle accidents (64 percent), and 233 of 314 bicycle-motor vehicle collisions (74 percent). We define an intersection broadly as any point where turning or crossing movements are possible for the bicyclist or the motorist. The definition therefore includes not only the junction of two roadways, but also points where driveways, sidewalks, or paths meet a roadway, or where sidewalks or paths meet a driveway.
交差点での自転車事故は、全ての自転車事故371件の内、
237件(64%)を占めた。また、自転車とクルマの衝突事故に限ると、
全体の314件の内、233件(74%)を占めた。我々はここで
〈交差点〉を次のように広く定義している:サイクリストまたは
ドライバーが転回または交差する事ができる全ての地点。
この定義により、2本の道路の交差点だけでなく、
/* 住宅や商店の駐車場から公道までの */ ドライヴウェイ、歩道、遊歩道などが
車道に接続する箇所や、歩道や遊歩道がドライヴウェイに接続する箇所も
含まれる事になる。
警察が把握した自転車事故の内、
6〜7割が交差点で起こっているという調査結果は、
日本の直近の事故統計とも近い(*1)ですが、
これは実際に衝突に至り、且つ報告された事故に限られます。
私が個人的に作成している自転車乗車中のニアミス記録(*2)では、
単路でのニアミスが全体の64%を占めており、比率が正反対です。
*1 警視庁の2012年の「自転車事故分析資料」では、
交差点が59.7%、交差点付近が12.4%、単路が26.4%です。
*2 2013年の「私的」事故統計
「自転車の事故対策は交差点に注力すれば良く、
単路は特に対策を打つ必要は無い」というのは大きな誤解です。
特に、自転車インフラの安心感、subjective safety
という観点からは、この誤解は非常に有害です。
なぜなら、自転車インフラを作る究極の目的は、
自転車の安全性を高める事ではなく、自転車の利用を増やす事だからです。
利用者に体感的な不安を抱かせるようなインフラでは利用が伸びず、
環境負荷低減や健康増進といった目標が達成できません。
安全はもちろん重要ですが、利用者は統計の数字を見て
自転車に乗るか乗らないかを決めているわけではありません。
また、見た目にも「ああ、これなら安全だね」と
誰もが納得するようなインフラでないと、自転車通勤の申請に
難色を示しがちな総務部も説得しにくいでしょう。
The large fraction of accidents that occurred at intersections indicates that these are the major points of conflict between bicyclists and motorists. Overtaking accidents, in which a bicyclist in the roadway was struck from behind by a motorist traveling in the same direction, accounted for only 5 of 314 bicycle-motor vehicle collisions, and sideswipes for 8. The remaining non-intersection collisions included those in which a bicyclist overtook a parked or parking motor vehicle, a motorist opened the door of a parked car into the bicyclist's path, or a motorist or bicyclist changed lanes improperly.
交差点で発生する事故が高い割合を占めている事から、
これらが自転車とクルマの主な衝突地点であると分かる。
/* 交差点以外で発生する */ 追い越し時の事故は、
車道の自転車が、同方向に進行するクルマに
が有るが、自転車とクルマの314件の衝突事故の内、
- 背後から撥ねられる〈追突〉と、
- 追い越されている時に側面で引っ掛けられる〈追い越し時〉
〈追突〉は僅か5件、〈追い越し時〉も8件に過ぎない。
交差点以外での事故はこの他に、
などが含まれる。
- 自転車が路上駐車を追い越す際の衝突、
- 駐車車両のドライバーがドアを開いて自転車の進路を塞いだ際の衝突、
- クルマまたは自転車が不適切な車線変更をした際の衝突
追い越し時の引っ掛け事故は「サイドスワイプ」って言うんですね。
それはさておき、事故件数を単なる数字として捉えてはいけません。
日本の交通事故総合分析センターの調査(*3)によれば、
追突事故は件数こそ少ないものの、
致死率は出会い頭事故の約10倍と非常に高くなっています
*3 「特集 走行中自転車への追突事故」
『Itarda Information』2011, no.88, p.3, 図1
また、自転車がクルマに撥ね殺された事故を事故形態別に分類すると、
死者数が最も多いのは〈出会い頭〉の46%ですが、
2番目に多いのは〈追突〉の12%です(*4)。
*4 猿渡 英敏(2011)「走行中自転車への追突事故の分析」
『第13回 交通事故調査・分析研究発表会 論文集』
交通事故総合分析センター, pdf p.2, 表3
「追突なんか滅多に起こらないんだから自転車レーンで充分」
などと暴論を吐く人は、こうした事実を直視しているのでしょうか。
さて、論文に戻って続きを読んでいきます。
Accident Records の節の後半は飛ばして、
Exposure Counts の節に行きます。
Exposure Counts
曝露量の計測
In order to study the distribution of these four characteristics in the population of bicyclists that is exposed to accidents, the City of Palo Alto’s Transportation Division arranged to conduct bicyclist counts in May 1987, including counts at intersections along three major arterial streets, Middlefield Road, Embarcadero Road, and El Camino Real, on which many bicycle accidents had occurred (92 of 233 bicycle-motor vehicle intersection accidents).
事故 /*のリスク*/ に曝されているサイクリストの母集団を
これら4つの特性 /* 年代、性別、通行方向、通行位置 */ で
分類した場合にどのような分布が見られるのかを調べるため、
パロ・アルト市の交通課が1987年5月に自転車の通行量調査を企画した。
計測地点の中には、3本の幹線道路、
の交差点も含まれている。これらの道路は以前から
- ミドルフィールド・ロード
- エンバルカデロ・ロード /* スペイン語で「波止場」という意味 */
- エル・カミーノ・レアル /* スペイン語で「王の道路」という意味 */
多くの自転車事故が発生している道路でもある
(交差点での自転車とクルマの衝突事故 233件の内、
92件がこれらの道路で発生した)。
この論文の肝は、自転車の通行台数をちゃんと実測している事です。
逆走が危ないとか、歩道走行が危ないといった結論は、
この通行量調査の結果を分母にして計算する事で得られているからです。
ただ、通行量調査はこの年の5月の一回限りなのに、
分析対象の事故記録の範囲は4年間に及んでるんですよね。
Middlefield Road is a residential street, except for one neighborhood shopping center and a two-block business district. It varies from two to four lanes in width, carries about 16,000 motor vehicles per day, and has on-street bicycle lanes for a portion of its length. The posted speed limit is 25 mi/h. Embarcadero Road is a four-lane residential street carrying about 22,000 motor vehicles per day; the posted speed limit is 25 mi/h, but the measured 85th percentile speed is 37 mi/h. It includes a small neighborhood shopping center at one end and a moderate-sized shopping center at the other and, opposite it, a high school.
ミドルフィールド・ロードは住宅街の通りだが、
近隣にはショッピングセンターが1箇所、ビジネス地区が2ブロック有る。
車線数は2から4で、クルマの通行量は1万6000台/日、
一部区間には車道上に自転車レーンが引かれている。
制限速度は 25 マイル/h /* 40.23 km/h */ である。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
舗装が酷いですね。継ぎ接ぎだらけで自転車の乗り心地は悪そうです。
車道の脇の草地には細い歩道が引かれています。そこを、
沿道の駐車場からのドライヴウェイが横切る構造ですね。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
土地が有り余っているのに路上駐車が発生しています。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
中央線が無い代わりに鋲が打たれていますね。
論文の発表当時と同じとは限りませんが。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
沿道の小学校の駐車場入口です。
縁石の段差が限りなく小さく抑えられており、
クルマが速度を落とさないまま出入りできてしまう構造である事が窺えます。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
小学校の駐車場です。クルマでの送迎が当たり前なんでしょうか。
(Google Maps の空撮画像)
和訳の続き。
エンバルカデロ・ロードは4車線の住宅街の通りで、
クルマの通行量は2万2000台/日、
制限速度は 25 マイル/h /* 40.2 km/h */ だが、
実勢速度の85パーセンタイル値は 37 マイル/h /* 59.5 km/h*/ である。
通りの終端部には小規模なショッピングセンターが1箇所、
反対側の終端部には中規模のショッピングセンターが1箇所、
その向かいには高校が1校有る。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
はあ?! これが「住宅街」の道路かよ。
日本なら産業道路と言っても通用するくらいの幅員じゃないですか。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
ここも細い歩道にドライヴウェイが交差する構造ですね。
生け垣や街路樹、街灯の柱など、死角を作る要素が多いです。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
こんな道路にも路上駐車が。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
脇道との接続部です。縁石の曲線半径が非常に大きく、
クルマが高速で右左折できてしまう事が分かります。
一時停止線は有りますが、現実に守られているかどうかは分かりません。
歩道は生け垣の死角になってますね。
出会い頭事故の防止ノウハウが欠落しています。
(Google Maps の空撮写真)
論文とは関係有りませんが、パロ・アルトと言えば
スティーヴ・ジョブズやビル・ゲイツゆかりの地ですね。
Mac も Win も、GUI OS はこの地から始まりました。
Portions of Middlefield and most of Embarcadero are too narrow to accommodate bicycle lanes; accordingly, the city has designated sidewalks in these places as bicycle paths. (Bicycle lanes are portions of the roadway designated for the use of bicycles. Bicycle paths are physically separated rights of way for the exclusive use of bicycles and pedestrians.) The paths are signed “Bicycles May Use Sidewalk,” and their use is optional. In accordance with a local ordinance these sidewalks are further signed for one-way bicycle travel, although this prohibition is often ignored and rarely enforced.
ミドルフィールドの一部区間とエンバルカデロの殆どの区間は
自転車レーンを整備するには狭すぎるため、
市は歩道を自転車の通路として指定している。
(〈自転車レーン〉とは、車道の一部分で、
自転車の通行のために指定されている部分を指す。
一方、〈自転車パス〉とは、物理的に区分された通行路で、
専ら自転車と歩行者の通行のために用意されたものを指す。)
この道路の〈自転車パス〉には「自転車は歩道通行可」
という標識が設置されており、歩道通行は任意とされている。
これらの歩道は市条例に基づいて「自転車は一方通行」という
標識も設置されているが、この規制はしばしば無視されており、
滅多に強制されない。
自転車は車道を走っても歩道を走っても良いという状況です。
制度的には日本と同じですね。道路の実態は随分と違いますが。
El Camino Real is a six-lane divided state highway (Route 82) located primarily in a business district, with parking permitted and many commercial driveways. It carries about 46,000 vehicles per day at a posted speed limit of 35 to 40 mi/h and has no bicycle facilities.
エル・カミーノ・レアルは6車線の州道路(82号線)で、
主にビジネス街を通っている。路上駐車が認められており、
沿道の店舗に出入りするドライヴウェイが多数有る。
通行量は4万6000台/日で、制限速度は35から40マイル/h
/* 56.3〜64.4 km/h */、自転車インフラは一切無い。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
6車線と言いますが、路上駐車が有っても両端の車線が塞がれないので、
日本基準で言えば8車線と言っても良いくらいの幅員ですね。
空撮画像で簡易測定すると、縁石から縁石まで、中央分離帯を入れて30m強でした。
(2011年3月に撮影された Google Streetview 画像)
うわ、自転車が真ん中の車線を走ってる!
(2011年4月に撮影された Google Streetview 画像)
前方の交差点の左折レーンに入る為のようですね。
実はアメリカの多くの州では、交差点で左折(日本で言う右折)する際、
クルマの左折レーンに移り、そこから直接左折しても良い事になっています。
これはカリフォルニア州でも同じで、カリフォルニア州自動車省
(California Department of Motor Vehicles)の
公式サイトにも明記されています。(2014年1月19日現在)
にしてもクレイジーだ。
(2011年4月に撮影された Google Streetview 画像)
信号機は停止線の直近ではなく、交差点の向こう側に設置されています。
この方式はドライバーの停止線超過やフライングスタートの誘因になるため、
ヨーロッパ諸国では採用されていません。
日本はアメリカ式に倣ったため、アメリカと同じ事故リスクを
抱え込む事になりました。
(Google Maps の空撮画像)
道路沿いのショッピングセンター。
駐車場にクルマがみっちりと並んでいます。
論文の続き。
Middlefield and Embarcadero have continuous sidewalks on both sides, and El Camino Real has them for most of its length in the city.
ミドルフィールドとエンバルカデロは両側に歩道が連続している。
エル・カミーノ・レアルも市内の大部分の区間は歩道が有る。
Bicyclists were counted at four intersections along Middlefield Road, at two intersections along Embarcadero Road, and at three intersections along El Camino Real. The intersections chosen offered a representative mixture of arterials, collectors, and neighborhood streets; adult commuters, college students, and school-children; and on-road bicycle lanes, sidewalk bicycle paths, and roadways without special bicycle facilities. All but two intersections were signalized; these two had stop signs on the minor street.
自転車の通行量調査が行われた地点は、
である。調査地点は様々な道路形態、利用者属性が含まれるように選ばれた:
- ミドルフィールド・ロードの4箇所の交差点、
- エンバルカデロ・ロードの2箇所の交差点、
- エル・カミーノ・レアルの3箇所の交差点
が含まれている。調査地点の交差点は2箇所を除き、信号機が有る。
- 幹線道路、中規模道路、生活道路
- 通勤する大人、通学する学生・生徒、
- 車道の自転車レーン、自歩道、自転車通行空間が特に無い車道
信号機が無い2箇所の交差点は、非優先道路側に一時停止標識が有る。
Nearly 3000 cyclists were observed during a one-day count of 8 hours at each intersection. For each cyclist entering any leg of the intersection, observers trained by the Transportation Division collected data on approximate age (estimated as either 17 years of age and under or 18 and older), sex (male or female), direction of travel (with or against the direction of traffic on the roadway), and position (either in the roadway, including bicycle lanes, or on the sidewalk, including bicycle paths and crosswalks).
1日間の調査で、計測は8時間、それぞれの交差点で行なわれ、
合計で3000人近いサイクリストが観察された。
交差点に進入する全てのサイクリストについて、
交通課の訓練を受けた観察係が次のデータを記録した。
- 大まかな推定年齢(17歳以下か18歳以上か)、
- 性別(男性か女性か)、
- 進行方向(車道のクルマの流れと同じか逆か)、
- 通行空間(車道・自転車レーンか、歩道・自歩道・横断歩道か)
さて、これを受けてのデータ分析です。
Data Analysis
データ分析
Data analysis is based on figures for the May 1987 bicyclist counts and for July 1985–June 1989 police-reported accidents, extending approximately two years before and two years after the exposure counts. To eliminate as many extraneous influences as possible, the accidents analyzed were restricted to those that took place at intersections along the three arterial streets where the counts were made.
データ分析は、1987年5月の自転車通行量調査と、
1985年から1989年の警察による事故報告の数字に基づいて行なわれた。
事故報告は、通行量調査の前後それぞれ2年に亘っている事になる。
無関係な影響をできるだけ排除するため、分析対象の事故は
通行量調査が行なわれたこれら3本の幹線道路の
交差点で起こったものに限定した。
先にも指摘しましたが、この論文は
単路区間での追突事故という致死率の高い事故形態を無視して、
「歩道は危険、車道が安全」と主張しています。
しかも結論では、交差点だけでなく道路システム全体で
「自転車の通行空間は車道と統合すべきだ」と
過剰な一般化をするという誤謬を犯しています。
(これは次回以降に見ていきます。)
さらに、読者として気を付けなければならないのは、
この論文がカリフォルニア州の一地区の道路のみを対象としている
という事実です。
論文では、事故地点の詳細な道路構造や事故状況が
一切明かされていません。参考写真すら一葉も有りません。
そんな限定的な情報を元に、どうしてパロ・アルトの道路と
日本やオランダの道路が同じだと言えるでしょうか。
「自転車レーン」や「自転車道」など、同じ名詞を使っているからといって、
その指示対象までが寸分違わず同じだと考えてはいけません。
自転車の安全性を露ほども考えず、
専らクルマで生活が完結するように発展してきたアメリカの都市と、
70年代の交通戦争を切っ掛けに自転車推進に舵を切ったオランダの都市では、
道路構造の細部はまるで違うでしょう。もちろん日本とも。
そういう可能性を無視して、
アメリカでこういう研究が有ったからと一般化するのは、二重の誤謬を犯す事になります。
日本でも自転車は車道を走るべきなんだ
(つづく)