2013年9月4日水曜日

紛らわしい名前

ソニーのデジタルカメラには
  • 「おまかせオート」
  • 「プレミアムおまかせオート」
という二つの撮影モードが有ります。


これだと「結局どっちが良いの?」って事になってしまいます。

ユーザーを迷わせる名前は駄目です。

「プレミアムおまかせオート」というのは、
通常の「おまかせオート」の機能に加えて、
逆光や暗い場所では自動的に「連写+合成」するというものですが、
それが「プレミアム」ということばと直感的に結び付くでしょうか。

しかも、実際に使っている人のレビューを読むと、
「プレミアム」で撮影した写真は必ずしも常に良い画質にはならず、
日中や動きの有る場面では「おまかせオート」の方が良いそうです。

であれば、この二つの撮影モードは

  • 「オート」
  • 「夜間・逆光オート」

と名付けるべきです。

このように、「名前」というものは対象の本質を
ズバリ捉えていないと混乱や誤解を招きます。

(政治家はこれを逆に利用するわけですが。)

ただ、もっと言えば、
この二つの撮影モードは「オート」に一本化してしまい、
プレミアムの追加機能を「夜間・逆光スイッチ」として
切り出してしまった方がスッキリするでしょう。

どうもソニー製品のユーザーインターフェイスは、
異なる階層、異なる範疇のものがごちゃ混ぜですね。


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カメラ以外にも紛らわしい例が有ります。


「自転車道」と「自転車専用道路」


「どっちも自転車が走るための道路でしょ? 何が違うの?」
と思ってしまいますが、実物を見れば違いが一目瞭然です。


自転車道

自転車専用道路
(厳密には「自転車歩行者専用道路」)


これも名前の付け方に問題が有ります。
実態が全然違うのに、名前が似ているから紛らわしいんです。

同じく、「自転車道」と「自転車レーン」の違いも
分かりにくいですね。これも実物で見てみましょう。


自転車道

自転車レーン(青い部分)


「道」と「レーン」では、どちらがどちらを指すのか
いまいち分かりにくいです。

理由として考えられるのは語種の違いです。

「道」は漢語、「レーン」は英語で、
それぞれが所属する語彙の系統が違うので、
一つの用語体系の中に置いたとき、
両者が互いにどういう位置関係になるのかが曖昧になるからです。

これは上の場合とは逆に、
実態が似ているのに名前が似ていなくて混乱が生じているケースですね。


では、

  • 「自転車レーン」
  • 「自転車道」
  • 「自転車専用道路」

は、どう名付ければ良かったのか。
私なら、うーん……

  • 自転車レーン(視覚分離型)
  • 自転車レーン(構造分離型)
  • サイクリングロード

こうかな。推敲の余地は多々有りそうですが。


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最後にもう一つ、法律用語から。


「その他」と「その他の」


この二つは法律の世界では全く別の意味を持っており、
厳密に使い分けられています。
「その他」は並列、「その他の」は例示だそうです。


一字違いのことばで意味を区別するなよ!


この用語も、誤解や書き間違いが起こらないように
直す事ができます。


「その他」
行政庁が指名する職員その他政令で定める者



行政庁が指名する職員 か 政令で定める者


「その他の」
陸海空軍その他の戦力



戦力(例えば陸海空軍)



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以上見てきたように、
ものや概念に分かりやすい名前を付けるのは
意外と難しい作業です。

その分野に精通しているはずの人たちが
不適切な名前を付けてしまう事からも
それが分かるでしょう。