前回の続き。
「なう」の品詞
まだ生まれて間もない新語だから、
ユーザー間で意識のズレも有るだろう。
今回は取り敢えず、調査範囲で
多数派だった形式を基準に考察する。
・文中での位置
名詞・形容詞・動詞の後ろに置かれ、多くの場合は
それが文末になる。この点からは名詞か終助詞に近い。
名詞の場合は「なう」を後部要素とする複合語、
或いは句と解釈できる。この場合、「何々なう」全体が
名詞句に相当するので、体言止めの形式と言える。
e.g. 「起きたなう」 (私が起きた現在) 連体形で解釈
e.g. 「だるいなう」 (私がダルい現在) 連体形で解釈
e.g. 「もんはんなう」 (もんはんの現在??)
しかし、語の内部に動詞・形容詞の活用語尾が入り得る事、
e.g. 「起きたなう」 (複合語なら「起きなう」としなければならない)
また、前部要素の名詞に修飾句・節を含められる事から、
e.g. 「【どこの電源コンセントの前でも老若男女がたむろってい る、ロサンゼルス国際空港】なう。
」 (斜線部が修飾要素。「ロサンゼルス国際空港」を修飾している。)
複合語とは言い難い。
終助詞の場合はキャラ語尾と解釈できる。
(キャラ語尾は、例えば兎のキャラクターが
文末に付ける「ぼくはうさぎだぴょん」の様な表現。)
e.g. 「いちご大福なう かしょうさんぜんにかぎるなう」
しかし、もし「なう」がキャラ語尾であれば、一回のつぶやき中に
複数の文が有る場合、他の文でも一貫して文末を「なう」に
する事が期待されるが、実際は殆どの用例でそうなっていない:
「昼飯なう 体に野菜が染み渡る」
「朝飯なう 今から22:00まで仕事って何?」
「おはようございます。がっちりマンデーなう。」
「能楽堂なう!これから7時までの長丁場です。」
「鹿児島・国分駅なう。いまから生目の杜に向かいます。」
「JRでちんたら府中に向かってま〜す! 富士川上空なう」
「今朝もいい天気なう。全力サイクリング中!気持ち良い♪」
「高崎駅なう。これから上野公園に大道芸を見に行きます。」
「ワンピースなう。「奇跡なめんじゃないよー!」ちょう良かった。」
「ニューヨークバーガーなう。テキサスより旨し。パンチには欠けるが。」
「BSでショートトラックなう。審判がスーツにスケート靴なのがなんか笑える」
「日曜出社は、悲しーね。電車もバスも駅もカップルとファミリーだらけ、なう。」
「志賀高原一ノ瀬なう!今日は起きれた!朝一ゲレンデ最高!写真無しですが。。。」
「朝から鼻血なう。最近鼻を強くかいてしまうと必ずなので、しばらく気をつけないとな。」
「新幹線乗ったなう。今日も日帰り東京(品川)旅行。朝の新幹線の中は寝ておくかなー」
「うわぁんマトモに使えるのぶんまわし系だけだよーボウガンとか難しすぎる!@モンハンなう」
「品川なう。ジョージはお仕事がんばってるんだろなー。品川プリンス方面に愛をおくっといた(^^)」
「仮面ライダーWなう。今回のシリーズ、けっこう好きだが、「検索」ってやるのがいつも違和感バリバリ。」
「お風呂上がりなう。営業マンの荒栄さんとジュース飲んでます。やっぱ総湯は山代の財産ですわー。」
「結局聴きなれてる方向に戻っちゃってるなうです いかんいかん。 オムニバスでも借りてこようかしら」
「英語終了なう。死んだ……とか思ってたら、簡単過ぎたとかいう声が聞こえてきた。なんも言えねぇ……」
「サンジャポなう。言いたい放題で面白い。西川先生の結婚式ちょっと泣いてしまった。いいなぁ、結婚式。」
「地元の防災訓練に参加中なう。最新装備のレスキュー隊模擬訓練とかあって予想より遥かに面白いです!」
「米沢なう。昨年の大河の舞台です。「愛」の兜もみられます…ってか米沢に近づいたらいきなり天気悪くなった(Ⅲ ̄д ̄)」
「おぁようございまふ( ̄。 ̄) ブログデザインのカスタマイズ(許容範囲)やっと完了なう。マージンて、なんやねん…でも面白かったw」
「今日は4月から通う専門学校の学祭があることにさっき気づいた。行くべしなんだろーけど、、だるいなう。国立遠いんだもん。」
「いちご大福は菓匠三全に限るなう」(作例)では
「なう」がキャラ語尾の様に見えるが、多くの用例では
キャラ語尾として使っているわけではない様である。
・意味
一方、意味的には「なう」は動作・状態を修飾しており、
副詞に近い。これは、動詞や形容詞、動作性名詞を欠いた
「名詞+なう」型の文でも同じで、省略された述語を
修飾していると考えられる。(或いは文全体を修飾。)
e.g. 「コーヒーなう」 (いま{コーヒーを飲んでいる})
しかし、この場合は語順が不自然である。
意味的に最も近い副詞「いま」は普通 文頭に置き、
文末に置いた場合は倒置文の様に感じられる。
e.g. 「コーヒー飲んでる、いま。」(作例)
すると大多数の「何々なう」の用例は全て倒置文なのだろうか。
それならば少しは「なう何々」という正常な語順も見られる筈だが、
今回の調査範囲では1例しか無い。
e.g. 「なう。11時34分39秒です。」
しかも「なう」の直後に「。」である。こうした使用実態からは
寧ろ「何々なう」が「なう」の正常な語順と考えられる。
また、「名詞+なう」型の用例では「なう」によって述語が省略
されている事が示され、形式的には「なう」が述語の代役を
果たしていると言えなくもない。もし述語であれば、目的語や
補語の後に置くのは、SOV型の日本語には自然である。