2010年2月25日木曜日

なう (8) 誤用の原因

前回の続き。

 最後に「何々なう」に関する誤用について検討する。
誤用については既に意味と使い方に指摘されており、

  ・食事中なう
  ・いま、東京なう
  ・これから、東京なう
  ・そりゃ、笑っちゃうなう~

などが例として挙がっている。また、その記事へのコメントで

  ・ラーメン食ってるなう

も、「食ってる」と「なう」が共に「いま」の意味なので、
重複であると指摘されている。

 このブログでは以上の5分類の内、
「食事中なう」と「ラーメン食ってるなう」は
必ずしも誤用とは言えないと判断したが、
何故これらも「間違い」だと感じられるのか。
また、何故こうした「間違い」が生じるのか。



「なう」と「いま」の平行性

 誤用の原因としてまず考えられるのは、
書き手の頭の中では

  「なう」 = 「いま」

となっており、つぶやく際に変換している
というパターンである。「いま」は

  「いま食事中」

と、違和感無く言えるので、

  「食事中なう」

も迷い無く使うのだと考えられる。

(何故「いま食事中」が自然なのかは置いといて)

語順

 次に語順が指摘できる。もし「なう」が脳内で「いま」の意味だった
としても、文中の位置は「いま」とは全く異なり、終助詞的である。
故に文末で「なう」と言っても「いま」と言った気がしない。

そこで、「いま」である事を明示する為に、

  「ラーメン食ってるなう」

など、時制を示す要素を付加しているのだと考えられる。
これはまた、「なう」が用意にキャラ語尾化してしまう事も説明する。
今回の調査範囲外には、明らかにキャラ語尾として使っている
例も有る。

  「気にしないでほしいなう。なうはたまたま知ってただけなう。」
  (Amebaなう

この例は意図的にだろうが…。

述語の省略

 最も典型的な「なう」文は「名詞+なう」だが、
「名詞」が直接目的語や補語の場合は動詞が示されない。

  「ラーメン(食ってる)なう」

普通、「なう」文で省略される動詞は

  「居る」「乗る」「見る」「食べる」

など、基本的なものに限られるが、それでも
使い慣れない内は動詞を略す事に心理的抵抗が
有ると考えられ、

  「ラーメン食ってるなう」

の形式を選んでしまうのではないだろうか。

抽象的な意味

 「なう」を単純に「いま」の置き換え語ではなく、

  「なう」 = 「(今の私の状況を言いますと…)」

という、話の導入部として捉えている場合も考えられる。

  「これから、東京なう」
  (いま、これから、東京です???)

は、「なう」 = 「いま」を否定する例だが、
「なう」を もう少し抽象的な意味で捉えれば

  「(こっちの今の状況を報告しますと)これから、東京です」

となり、不自然さは薄らぐ。

つぶやくタイミング

 このブログでは「食事中なう」と「ラーメン食ってるなう」を
誤用ではない、少なくとも「食事中なう」と「食事なう」、
「ラーメン食ってるなう」と「ラーメンなう」は同じ意味ではないと
判断したが、その根拠は各ユーザーがつぶやく
厳密なタイミングが分からないからである。

例えばユーザーAは、カップにお湯を注いで待っている間に

  「ラーメンなう」

とつぶやいているかもしれないし(近接未来)、
ユーザーBは食べている最中に箸を置いて

  「ラーメンなう」

とつぶやいているのかもしれない(現在)。
しかし「ラーメン食ってるなう」では
<現在>の解釈しか取り得ない。

一方、

  「ラーメン食ってるなう」 = 「ラーメンなう」

と捉えて、「食ってる」は余計だと感じるユーザーは、
食べている最中にしか「なう」を使わないというルールを
持っているのだと考えられる。

(「食事なう」に対する否定も同様。)

これが「なう」の正誤基準となっているのではないか。

因みに「ラーメンなう」は2通りの解釈ができたが、
例えば「到着」は更に多くの意味を持てる。

  「横浜到着なう」

1. 横浜駅が近付いて減速する電車の中からつぶやく。
2. 電車が停車した瞬間につぶやきを送信する。
3. 停車した電車から降りて、ホームの上でつぶやく。