前回の続き。
最後に「何々なう」に関する誤用について検討する。
誤用については既に意味と使い方に指摘されており、
・食事中なう
・いま、東京なう
・これから、東京なう
・そりゃ、笑っちゃうなう~
などが例として挙がっている。また、その記事へのコメントで
・ラーメン食ってるなう
も、「食ってる」と「なう」が共に「いま」の意味なので、
重複であると指摘されている。
このブログでは以上の5分類の内、
「食事中なう」と「ラーメン食ってるなう」は
必ずしも誤用とは言えないと判断したが、
何故これらも「間違い」だと感じられるのか。
また、何故こうした「間違い」が生じるのか。
「なう」と「いま」の平行性
誤用の原因としてまず考えられるのは、
書き手の頭の中では
「なう」 = 「いま」
となっており、つぶやく際に変換している
というパターンである。「いま」は
「いま食事中」
と、違和感無く言えるので、
「食事中なう」
も迷い無く使うのだと考えられる。
(何故「いま食事中」が自然なのかは置いといて)
語順
次に語順が指摘できる。もし「なう」が脳内で「いま」の意味だった
としても、文中の位置は「いま」とは全く異なり、終助詞的である。
故に文末で「なう」と言っても「いま」と言った気がしない。
そこで、「いま」である事を明示する為に、
「ラーメン食ってるなう」
など、時制を示す要素を付加しているのだと考えられる。
これはまた、「なう」が用意にキャラ語尾化してしまう事も説明する。
今回の調査範囲外には、明らかにキャラ語尾として使っている
例も有る。
「気にしないでほしいなう。なうはたまたま知ってただけなう。」
(Amebaなう)
この例は意図的にだろうが…。
述語の省略
最も典型的な「なう」文は「名詞+なう」だが、
「名詞」が直接目的語や補語の場合は動詞が示されない。
「ラーメン(食ってる)なう」
普通、「なう」文で省略される動詞は
「居る」「乗る」「見る」「食べる」
など、基本的なものに限られるが、それでも
使い慣れない内は動詞を略す事に心理的抵抗が
有ると考えられ、
「ラーメン食ってるなう」
の形式を選んでしまうのではないだろうか。
抽象的な意味
「なう」を単純に「いま」の置き換え語ではなく、
「なう」 = 「(今の私の状況を言いますと…)」
という、話の導入部として捉えている場合も考えられる。
「これから、東京なう」
(いま、これから、東京です???)
は、「なう」 = 「いま」を否定する例だが、
「なう」を もう少し抽象的な意味で捉えれば
「(こっちの今の状況を報告しますと)これから、東京です」
となり、不自然さは薄らぐ。
つぶやくタイミング
このブログでは「食事中なう」と「ラーメン食ってるなう」を
誤用ではない、少なくとも「食事中なう」と「食事なう」、
「ラーメン食ってるなう」と「ラーメンなう」は同じ意味ではないと
判断したが、その根拠は各ユーザーがつぶやく
厳密なタイミングが分からないからである。
例えばユーザーAは、カップにお湯を注いで待っている間に
「ラーメンなう」
とつぶやいているかもしれないし(近接未来)、
ユーザーBは食べている最中に箸を置いて
「ラーメンなう」
とつぶやいているのかもしれない(現在)。
しかし「ラーメン食ってるなう」では
<現在>の解釈しか取り得ない。
一方、
「ラーメン食ってるなう」 = 「ラーメンなう」
と捉えて、「食ってる」は余計だと感じるユーザーは、
食べている最中にしか「なう」を使わないというルールを
持っているのだと考えられる。
(「食事中なう」に対する否定も同様。)
これが「なう」の正誤基準となっているのではないか。
因みに「ラーメンなう」は2通りの解釈ができたが、
例えば「到着」は更に多くの意味を持てる。
「横浜到着なう」
1. 横浜駅が近付いて減速する電車の中からつぶやく。
2. 電車が停車した瞬間につぶやきを送信する。
3. 停車した電車から降りて、ホームの上でつぶやく。