2012年11月23日金曜日

交差点の設計ミス(4)

自転車で車道を通行している時、交差点を直進しようとして
対向車線の右折車と衝突しそうになる事が有ります。

この右直事故のリスクは、特定の交差点では
飛び抜けて高い様に感じられます。

どのような交差点が危険なのか、
実際に私が危険な目に遭った四つの交差点を題材に考えてみました。




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山手通り 長崎一丁目交差点

2011年に工事が完了したばかりの都道441号と山手通りが接続する交差点です。
Google Mapsの衛星写真ではまだ変化が反映されていないので
通常の地図画面を参照します。

右直事故が起こりやすいのは、交差点の左(西)から右(東)の441号に
直進する場合や、下から右へ二段階右折する場合です。
このリスクの原因は交差点の構造に有ります。

2012年12月22日 交差点の平面図(下図)を追加しました。


長崎一丁目交差点を二段階右折する際に生じる危険
(クリックで拡大)


まず第一に、交差点西の道路は車にとっては西行き一方通行で、
この道路から交差点に進入してくる車が皆無な為、
都道441号から交差点に進入するドライバーには、
「対向する直進車がいるかもしれない」という認知の枠組みが形成されません。

この為、右折した先の山手通りの横断歩道を注視していたドライバーの目には、
直進自転車は突然現れた様に映ると予想できます。
通常は急ブレーキで衝突を回避できますが、
動転したドライバーはブレーキとアクセルと踏み間違える事が有ります。


第二に、都道441号と接続する山手通りは幅員が非常に広く、
対岸に渡るまでにかなり距離が有る為、右折車のドライバーから見ると
自転車が遥か遠くに見えます。これは同時に、向かい合う二者の角度が
180度に近付くという事にも繋がります。

この二条件が重なると、ドライバーが対向車の速度を判断する際、
大きな誤差を伴う確率が上がります。

また、大抵の自転車は10~15km/hしか出ないという先入観も邪魔して、
「自分の車の方が先に行ける」という判断エラーを起こしがちです。

その結果、自転車がドライバーの想定以上に速かった場合、
両者が一点に吸い込まれる様に右直事故を起こす場合が有ります。


第三に、この交差点は道路の交差角度が直角では有りません。
都道441号から山手通りに右折進入する車は90度以上曲がる事になります。

この交差点に限らず、多くのドライバーは交差点を右折する時に
ステアリングをかなり早いタイミングで切り始め、
ショートカットする傾向が有ります。

これが鋭角な交差点の場合、対向直進車の動線と自車の動線の交点が
交差点の中央より自分側に近くなります。
これもまた、「自分の車の方が先に行ける」という
ドライバーの判断エラーを招きます。


第四に、都道441号の右折レーンは一車線ですが、
交差する山手通りは片側二車線で、都道441号からの右折車は
交差点内で二列に分かれて山手通りに進入して行きます。

この時、仮に一つの列の車が対向直進車の自転車に気付いて停止しても、
もう一つの列の車が気付かずに右折を続行する可能性が有ります。

特に、自転車が最初に停止した車の死角に入った場合は
衝突リスクが極めて高くなると予想できます。


自転車と車の右直事故を誘発する構造のまとめ
  • 変則的な車の流れ
  • 交差点が大型
  • 道路が鋭角に交差
  • 交差点内での変則的な車の動き



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八王子市川町の都道61号の交差点

ここも一例目と似て、交差点の左(西)から右(東)に
直進しようとする場合、対向右折車との衝突リスクが普通より高めです。


まず一例目と同じく、不均衡な交通実態が有ります。
交差点左(西)の道路は一方通行では有りませんが、
殆ど車の通行が有りません。従って、この交差点でも
右(東)から右折するドライバーの認知の枠組みが
不適切になる可能性が高いと言えます。


第二に、車道の幅員は然程広くなく、右折レーンが分かれている
都道61号(南北方向)も約9m程度ですが、道路の交差角度が鋭角である為、
車道の停止線は交差点よりかなり手前に引かれています。

この為、実質的な交差点の横断距離は一例目と同じく、
かなり長くなり、認知・判断エラーを起こりやすくしています。


第三の、鋭角な交差角度によるショートカット操作も、
一例目と同じで事故の原因になります。



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内堀通り 大手門交差点

この交差点は丁字路です。ここでは交差点の下(南)から右(東)に
二段階右折しようとする場合に対向右折車との衝突リスクが生じます。


第一に、交差点内で二段階右折する自転車が極めて少ないという実態から、
上の例同様、対向右折車のドライバーの認知エラーを誘発すると考えられます。


第二に、交差点が大型である事も上の例同様にリスクを高めます。
大型の交差点では右折車の加速距離が長く、
旋回半径も大きくなり、速度が上がりやすくなります。


第三に、この交差点は右折した先の内堀通りに横断歩道が無い為、
右折車は普通の交差点より更に高い速度を出すと予想できます。

自転車が二段階右折する場合、対向右折車と動線が交差する地点は
かなり自分寄りの場所になりますが、それでも信号が青になって
直ぐ加速しないと、もう対向車が目の前に迫る事になります。


第四に、この交差点は右折レーンも右折した先の車線も二車線有り、
右折車の二重の動線がリスクを高めると考えられます。

また、右折した先の二車線は130mほど先の交差点で
片方だけが右折レーンになるので、この大手町交差点を
右折する段階で車線変更をするドライバーの存在も予想できます。

これも一例目と同じく、変則的な車の動きを誘発する構造と言えます。



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中野区の新井一丁目交差点

この交差点の横断歩道はスクランブル型で、
自転車は歩行者用信号に従う限りは
車との事故はほぼ心配する必要が有りません。

(歩行者や他の自転車とは動線が複雑に交錯しますが。)

但し、歩行者用信号機には「歩行者・自転車用」とは書かれていないので、
原則に従えば自転車も車の信号機に従って通行する事になります。
そして右直事故のリスクが生じるのがまさにこの通行方法を取った時です。

この交差点は右下(南東)から右上(北東)に直角に折れる経路が
バス通りで、バス以外も多くの車がこの経路を辿ります。

従って、左上(北西)の道路から右下(南東)に直進しようとする場合、
対向右折車との衝突リスクが極めて大きくなります。




第一の理由がこの変則的な車の流れで、
右下(南東)から交差点に進入する大多数の車が右折する為、
対向直進車の優先通行権に対する配慮が甘くなります。




第二に、この交差点は良く見ると五差路で、
左上(北西)の道路が二股に分かれています。

交差点中心から見て左側(西側)の道路から交差点を直進しようとする場合、
対向車線のほぼ正面から交差点に進入する形になります。

この為、対向右折車の動線との交差点が対向車側に遠ざかり、
また直進車の動線も不規則に曲がる事になるので、
双方の認知・判断エラーを招く事になります。


実際私も、このケースで対向右折車の路線バスとニアミスを起こしています。

(このニアミス事例の原因には、「路線バスの運転手はリスク認識能力が高い」
という思い込みも含まれていました。一部ではありますが、
バス運転手の中にも荒くれドライバーは混じっています。)