2013年12月18日水曜日

バス会社の自転車対応策

自転車がバスに危険な追い越しをされる理由の一端が分かりました。



「第2回 東京都自転車安全利用推進計画協議会 議事録」
から、東京バス協会の市橋氏の発言部分を見てみます。
(第2回会議は2013年9月20日に行なわれたものです。)

pp.11-12
○市橋委員

// 中略

次のページに移りまして、(3)と(4)は、どちらかというと、バス乗務員に向けた取組です。「自転車5か条」というもので、

1が追い越し・追い抜き時は、自転車との間隔を 1.5 m以上とること。
2がバス停の手前 50m以内になったら自転車を追い抜かないこと。
3が不用意に近づかないこと。
4が下り坂は自転車を追い越さないこと。
5が見通しがきかないカーブでも、思いがけず膨らんでくるということがありますので追い越さないこと。

こうした5カ条を遵守させています。現在は全部がワンマン運転ですが、指導員を添乗させて、自転車の側方の安全通過の確認指導を実施したり、毎月、日を決めて、交差点に管理者を立たせて、左折時の一旦停止と横断歩道上の安全確認を確認している京王電鉄バスグループ各社。

バス会社が自社の運転手に「自転車5か条」を周知徹底している
というアピールですが、この策を実施しているのは京王グループだけのようです。
私が見た所、都営バスや関東バスは依然として、
  • 下り坂で自転車を追い越したり、
  • 十分な側方間隔を取らずに自転車を追い越したり、
  • バス停や赤信号に接近している時、前の自転車との車間距離を詰める
  • 対向車線に直進自転車がいるのに、強引に先に右折しようとする
などの危険な運転をしています。

また、その5か条を見ても、指導内容が抽象的で、
それを守れば必ず安全を確保できるという性質では無い事が分かります。

例えば、追い越し時の側方間隔1.5mですが、これだけでは、
バス車体の前端が自転車に追い付いた時点で
1.5mの側方間隔が確保されていればそれで良い
と誤解されかねません。

しかし実際には、自転車とバスが横並びになった段階で
バスが早々にハンドルを左に切り返してしまえば、
1.5mの安全マージンなど内輪差であっという間に帳消しになります。

速い自転車とバスでは速度差が 5 km/h 程度しか無く、
追い越しに掛かる時間が思いのほか長くなる場合も有りますから、
バス運転手は自転車を追い越すのに掛かる時間を計算する必要が有ります。

例えば、バスのフロントガラスの視界の左端に自転車の後端が接してから
自転車の前端が消えるまでに 1.4 秒掛かったとします。
バスの全長を11.3m、自転車の全長を1.7mとすると、
追い越し所要時間は9.3秒です。

この場合、最低でも9.3秒間はハンドルを切ってはならず、
まっすぐ走り続けなければならないわけですが、
乗務員はそうした訓練を受けているのでしょうか。

私には、大型車の運転に求められる技能水準が
随分と低いように感じられます。


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市橋氏の発言にはもう一つ気になる点が有りますので、
ついでに指摘しておきます。

「第2回 東京都自転車安全利用推進計画協議会 議事録」p.12
既に警視庁でも取り組んでおられますが、悪質で危険な自転車利用者、指導しても言うことをきかない利用者については、一時的にせよ、道路交通の場から退場していただく方向で厳正な対応をお願いしたいと思います。

同様の発言は第3回の会議でも見られます。

「第3回 東京都自転車安全利用推進計画協議会 議事録」p.5

○五十嵐会長 バス協会の市橋委員、前回の協議会では一罰百戒等のお話をいただきましたが、何か御意見がございますでしょうか。

○市橋委員 信号無視や一時不停止の自転車との重大な事故を間一髪のところで免れたとしても、自転車はそのまま走り去ってしまいます。バス乗務員にしてみれば、これほど悔しいことはありません。記載内容について異論はありませんが、取締りは、権限を持っているところしかできませんので、それを自覚してしっかりとやっていただきたいと思います。

しかしながら、警察の取り締まり姿勢について、
警視庁交通部交通総務課交通安全担当管理官の吉田氏は、

「第1回 東京都自転車安全利用推進計画協議会 議事録」pp.9-10

○吉田委員 基本的な考え方として、自転車のルールやマナーをご理解いただけていない状態において、警察は片っ端から取り締まろうということでは全くありません。現場において、ルールを知らない方がルール違反をした場合は、基本的に、現場において、ここはこう走行しなければいけないということをしっかり教えて、理解していただくことが何よりも優先であるという考えに立っております。

ただ、前後のブレーキがない自転車は、おのずと大きな事故を誘因しますし、酒酔い運転も同様ですので、こうした悪質・危険な違反は、取締りを実施しています。また、悪質な違反を繰り返す人については、道交法上、講習が義務化されます。2年後までに施行されるので、それまでにしっかりと講習制度を確立していく形になろうかと思います。

いずれにしても、違反をしっかりと取り締まっていくのは当然ですが、片端から全ての違反を取り締まるという方針ではありません。現場では、まずはルールを理解させて、守っていただく。これが非常に大切なことであると考えております。

と発言しています。

現状ではルール違反をする自転車利用者があまりにも多く、
大多数が「悪質で危険な自転車利用者」なのですが、
市橋氏の期待に反して、警視庁は「取り締まらないよ」と公言しています。

これは協議会で議論している「自転車安全利用推進計画案」にも
そのまま反映されていて、

「指導警告カードの活用」p.16

などという及び腰の姿勢が取られています。

市橋氏やバス業界が望んでるのはこんな甘い対策じゃないでしょ?
「記載内容」をちゃんと読んでるなら異論を出さないのはおかしいよ。