2013年12月10日火曜日

自転車事故スタント実演の感想 (1) 40km/hでの衝突

スケアード・ストレート式の交通安全講習に参加しました。


前回の記事では、スケアード・ストレートの有効性を
実証した資料が見当たらないという事を書きましたが、
まずは自分の目で実際に見てみない事には
話にならないだろうと思い、講習会に参加してみました。

以下、実演項目を順に見ていきながら、
その内容を批判的に考察してみます。

なお、会場で実演された事故は全て、
スタント会社のホームページに映像が公開されていたので、
参考の為に埋め込みリンクを貼りました。


1. 時速40kmでの衝突


停止している自転車と、時速40km/hで走って来た車の衝突


感想

まず何と言っても、40km/hは意外に速い。
この印象が大きかったです。

自分も自転車で40km/h以上出す事は結構有りますが、
(ロードバイクは平坦路でもそれくらいの速度を出せる)
自分の姿は横から見られないので、
歩行者からはこんなに速く感じられるのかと驚きました。

ただ、ここで「だから車には気をつけよう」
と短絡的に結論を出してしまって良いんでしょうか。
私は寧ろ、子供の通学路に含まれる道路では
車の制限速度を30km/hとか20km/hに抑えるべきだと感じました。

近所の小学校の通学路になっている或る道路は
制限40km/hですが、ほとんどの車は
実勢速度が30km/hとか25km/hくらいのようです。
たまに暴走車がいるなと思ったら、それが40km/hくらい。

講習会で「40km/hは危ないぞ」と見せ付けておきながら、
現実の道路を40km/h制限にする警察の姿勢は意味不明です。
一般人ドライバーの感覚の方が正常ですね。

それからもう一つ。

事故の実演の後、こんなナレーションが有りました。
(読点は文の係り受け構造とは無関係に、発話のポーズ位置に打った。)

さあ、今の速度、思っていたより、
速かったんじゃないかなあと思います。
では皆さん、ここで、想像してみてください。

今、自転車に乗っていたのが、自分だったら、
自分の、お父さん、お母さんだったら、
一体何が起こっていたでしょうか。

交通事故というのは、一瞬で起こります。
さっき笑顔で別れた友だちと、明日、
もう会えなくなってしまうかもしれません。

今日は、皆さんがそういった悲しい目に遭わない為に、
しっかり、自分自身と置き換えて、想像しながら、
交通事故をご覧下さい

スケアード体験の効果を高める工夫と読めますが、同時に、
参加者がスタントマンと視点を共有していないという
根本的な問題点を認める言明でもありますね。

現実の道路では、自分の視点から相手が見えない為に
出会い頭衝突などが起きるわけですが、
スタント実演を見る参加者は全体の構図を俯瞰できてしまう。

この認識のズレを参加者が自覚できていないと、
現実の交通場面への応用が難しくなるかもしれません。

これは2番目以降の実演項目についても
クリティカルに効いてくるでしょう。


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シリーズ一覧

スケアード・ストレートは有効?
自転車事故スタント実演の感想 (1) 40km/hでの衝突
自転車事故スタント実演の感想 (2) マナー違反
自転車事故スタント実演の感想 (3) 出会い頭