前回の続きで、今回は出会い頭衝突の実演について考察します。
私が見た講習会と衝突のタイミング、位置が完璧に一致している。
さすがプロ、凄いです。
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非優先道路側の自転車が交差点に差し掛かる前に
道路のど真ん中を走っていた点も良いですね。
道交法の原則通り左端に寄って通行していると、
交差点で死角が大きくなり、出会い頭衝突のリスクが上がります。
ただ、司会者はこの事は説明しませんでした。
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実演を見ていて気になったのは、非優先道路から出てきた自転車が
比較的低速だったのに対して、優先道路側の自転車が
無茶な暴走運転をしているように見えた点です。
優先道路の法的な地位についての説明も無かったので、
子供の目には優先道路側の自転車が悪者に映ったかもしれません。
非優先道路の出口に「とまれ」の標識は置かれていましたが、
舞台演劇のお約束で、文字の面がこちら側を向いていて、
やや混乱を誘います。
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結局、出会い頭事故を防ぐためのマナー説明は、
非優先道路から出てくる自転車についての
こういった交差点では、必ず、だけで、優先道路側の自転車に向けた助言は有りませんでした。
を行なうようにしてください。
- 徐行
- 一時停止
- 左右の確認
しかし現実には、速度を落として再加速する労を厭って
細街路から優先道路へ、あるいは歩道から車道へ
飛び出してくる自転車があまりにも多いです。
(子供を同乗させた自転車でそれをやる親さえいます。)
ですから、優先道路側の自転車としても
事故予防の方法を知っておくべきで、例えば
- 道路の左端から充分離れて走る
- 車用のカーブミラーを活用する
講習会に同席している警察の手前、言いにくいでしょうが、
時には道交法の原則を破るのも、身を守る為には必要です。
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そしてもう一つ私が指摘したいのは、
事故の原因を利用者のマナーの悪さにばかり押し付ける一方、
事故リスクの高い環境を所与のものとして疑わない態度です。
見通しの悪い交差点が有るなら、
土地所有者に協力を求めて
交差点の隅切りをすべきです。
2014年3月11日追記
隅切りと言っても、土地の一部を明け渡せという意味ではありません。
説明不足だったので補足します。
最近のビル工事の遮音壁に見られる透明パネルのように、
出会い頭のリスクが有る角の部分だけ、見通しが確保できるように
ブロック塀を柵などに作り替えてもらうという意味です。
もし物理的に壁自体を隅切りしてしまえば、
交差点を曲がる自転車の通過速度が上がってしまうので、
却って事故リスクが上がる恐れも有ります。
講習会でも、「そういう選択肢が有るのだ」と、
参加した住民や子供たちにメッセージを送るべきでした。
能動的に行動を起こす大切さを伝えるべきでした。
そのようなアドバイスを欠いたこの講習会は、
与えられた環境に受動的に対応し、
高い事故リスクをひたすら耐え忍ぶという
不健全な姿勢を助長するものと言えます。
たとえ参加者が学校の生徒だけだったとしても、
将来大人になって社会を担う事になる彼らに対して、
今の道路環境はもっと良くできるんだ
という信念の種を蒔いておくのは
決して無駄ではないと思います。
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2014年3月13日追記
スタント実演では、自転車同士に続き、
自転車と車の出会い頭衝突が再現されました。
細街路から自転車が飛び出し、
優先道路の車に撥ねられるという内容です。
衝突の直後に車が急ブレーキを掛けず、緩やかに減速したのは、
ボンネット上に撥ね上げられたスタントマンが
地面に放り落とされないようにする工夫でしょうか。
それはさておき、この実演例でも
インフラの不備を疑う事の大切さは言及されませんでした。
細街路から自転車が飛び出してくる可能性の有る道路で、
なぜドライバーは急ブレーキが間に合わないようなスピードを出すのか。
理由の一つには、道路の外観が
「スピードを出しても大丈夫そうな見た目をしているから」
という事が有るでしょう。
抜け道利用の悪質ドライバーなどを除けば、
良識有る大部分のドライバーは、
その道路の雰囲気に相応しい速度で通行しています。
ですから、本当に必要な事故対策は、
「どの程度スピードを出しても大丈夫そうか」という外観の印象を、
その道路の実際の事故リスクと釣り合わせる事です。
必要であれば、優先道路の指定を解除する手も有りでしょう。
そういう事をせずに「マナーを守りましょう」と連呼するだけ
というのは、あまり賢いやり方ではありませんし、
子供にそういう価値観を刷り込むのは将来の為になりません。
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シリーズ一覧
スケアード・ストレートは有効?
自転車事故スタント実演の感想 (1) 40km/hでの衝突
自転車事故スタント実演の感想 (2) マナー違反
自転車事故スタント実演の感想 (3) 出会い頭