2014年3月3日月曜日

Park Tool TM-1 の精度(続き)

以前、Park Tool のスポークテンションメーター TM-1 について、
精度が出ているのかどうか疑わしいという記事を書きましたが、
その後、色々と検証できる機会に恵まれたので、
もう一度深く掘り下げてみようと思います。



最初に買ったTM-1

製品を箱から出した時点で既にバネが錆びており、
レバーを握るとギシギシ音が鳴る状態でした。
2014年3月3日、写真が入れ替わっていたのを修正

さらに、スポークを挟むとレバーが歪んで
ポインターが本体に擦れて引っ掛かるので、
測定する度に指示値が1〜2目盛くらい変わってしまい、
正確な値が分かりません。

レバーと本体を固定しているボルト
(写真右のナットからチラッと覗いている部分)は
ナットの天辺から 0.1 mm 飛び出しています。
後述するように、これは締め込み不足です。

ミネソタ州のパークツール本社から送ってもらった代品。
段ボールの緩衝材がギュウギュウに詰められて、
しかし製品の箱そのままで海を飛び越えて来ました。
(運送中の衝撃とか大丈夫かな……。)

パッケージデザインはロゴの配置や寸法、
フォントや文字列が微妙に違いますね。

代品のTM-1。アルマイトは明るく鮮やかな青で、上の個体とは色味が全然違います。
2014年3月3日、写真と記述が入れ替わっていたのを修正

バネに錆は無く、ポインターも引っ掛かること無く滑らかに動きます。
(しかし、到着から約2ヶ月でこの個体のバネも錆び始めました。)

固定ボルトの飛び出し量は 0.4 mm です。

ここの締め付け具合の僅かな違いが
レバーの可動部の剛性を大きく左右するのですが、
パークの工場では作業の質の管理が碌に為されていないようです。

TM-1についてのネット上のレビューを見ると、
「ポインターが擦れる」、「いや擦れない」
と意見が割れていますが、
これは製品自体の品質のバラツキに拠るものでしょう。


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さて、この二つのTM-1で同一のホイールの
スポーク・テンションを測定したところ、
両個体の指示値のズレは平均で 0.73 目盛り
と意外に小さなものでした。

(組み立て不良の個体は、ポインタが本体との摩擦で
引っ掛かって止まった点を測定値として読み取っています。
ただ、両個体の測定条件は完全には統制できていません。)

製品出荷後にボルトが緩んで
ポインタが擦れるようになったとは考えにくいので、
恐らく、

組み立て段階でボルトの締め付け不足が発生したが、
後工程で工員がその異常に気付かず(気にせず)、
ポインターが本体と擦れる状態のまま校正し、出荷した

という事なのでしょう。


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ところで、同一製品が手元に二つ有るという事は、
片方をリファレンス用として保管しておいて、
常用するもう一方の校正に使えるかもしれません。

組み立て不良の個体もボルトを適切に締め込めば
ポインターの擦れは解消されるでしょうから、
自分で直せばリファレンス用にできると考えて、
本体裏面の六角穴付きボルトにアーレンキーを当ててみたのですが、
このボルト、2.5mmではガバガバ、かと言って 3.0 mm では
ギリギリ嵌まらないという特殊なサイズで、
ユーザーが自分では弄れない仕様なのでした。

特殊なサイズの六角穴付きボルト

ネジザウルスでボルトのヘッドを摑んで
強引に回そうともしましたが、
本格的に壊してしまいそうな予感がしたので
止めておきました。


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TM-1 のもう一つの問題であるバネの錆びやすさですが、
パークの技術部門マスターである Calvin Jones 氏に直接訊いたところ、
このバネはドライワックスで表面が覆われているので、
海上輸送でもしない限り錆の心配は無いとの事でした。

(TM-1のバネは、製造時期が古い物は
ステンレスのような光沢の有る銀色ですが、
最近は艶の無い黒色の物に変更されています。

テンション換算表だけでなく、こうした細かい部品の変更や、
校正済みの検品シールの省略など、同じ品番のままでも
マイナーチェンジが繰り返されているようです。)

しかし、代品として送られてきた個体も
到着から約2ヶ月でギシギシ鳴り始めたので、
ドライワックスの防錆効果は万全とは言えないようです。

(公平のために言っておくと、代品到着後の一時期、
部屋で加湿器をガンガンに炊いていました。)

できる事なら代品が狂わない内に不良品を直して
防錆オイルを浸透させてから校正したかったのですが……。


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もしかしたら、パークツールの製品は
アメリカの気候しか想定していないんだろうか。
そう思って日米の主要都市の平均湿度を調べてみたのですが、
アメリカはアメリカでジメジメした気候の所も有るんですね。


特に湿度が高いのは、7月から9月では
フロリダ州のマイアミ、ジャクソンヴィル、オーランドーや、
カリフォルニア州のロサンジェルスなどの南部の都市で、
早朝(4〜6時)で90%以上、
午後(15〜17時)になっても70%近くに達します。

日本では沖縄県那覇市の5月の湿度が近いですね。
こちらは一日の最高値と最低値
それぞれの月間平均が81%と69%です。(2013年)


一方、11月から1月にかけては、
ニューヨーク州のバッファロー、オレゴン州のポートランド、
ワシントン州のシアトルなど、北部の都市で湿度が上がり、
早朝で80%強、午後になっても70%以上を維持しています。

日本では富山県富山市の1月の湿度が近いです。
(一日の最高値と最低値それぞれの月間平均が83%と61%)

参考URL
http://www.currentresults.com/Weather/US/humidity-city-annual.php
http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php


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ボルトの締め込み不足、錆と来て、TM-1にはもう一つ、
校正の誤りという問題も有るそうです。

校正自体が狂っていて異常に低い値を指示していたので、
TM-1 に従ってホイールを組んだらスポークを張り過ぎてしまった
という報告が bikeforums に載っています。

http://www.bikeforums.net/showthread.php/743983-Bad-Park-TM-1-Spoke-Tension-Gauge-out-of-the-box