2013年11月13日水曜日

Park Tool TM-1 の精度

ホイールを手組みする時に使うスポーク張力計で
比較的手頃な値段の Park Tool TM-1。

ネット上のレビューでは
摺動部に注油すると指示値が変化する
との指摘が有りました。


2013年11月13日 全面的に加筆訂正

Amazon.co.jp で安くなっていた物を入手したので確かめてみました。

条件
  • ホイール 前後とも700c, 28H, 3 cross, italian
  • スポーク steel, round, 2.0 mm, black-anodized
  • 室  温 13℃ 
  • 読み取り ポインタの指示値は 0.25 単位で読み取る 

まず気になったのがポインタと本体の摩擦抵抗です。
グリップをゆっくり静かに離すと、強い摩擦抵抗が掛かり、
ポインタが途中で引っ掛かって動かなくなります。

これがそのまま Park Tool の意図した動作なら良いのですが、
摩擦箇所を浮かせるように上下から挟むと指示値が大きく低下します。
純粋にバネの力とスポークの力の釣り合いを見るなら、
この状態でなければ正しい値が分からない事になります。

そこで、
  1. グリップをゆっくり静かに離した場合
  2. そこから更に本体とレバーを指先で上下から10回ニギニギした場合
の2種類の測定法を試して指示値を比較しました。

(1の条件では、グリップを離し切ってから1秒くらい経って
ポインタがズルッと動いてしまう事が有ったので、
その場合は計測し直しています。)

結果、後者が平均で 2.51(最大で 3.5、最小で 1.5)目盛り低下しました。

ちなみに、グリップを静かに離すのではなく一気にパッと離した場合も、
ニギニギした場合とほぼ同一の値を指示しました。
(スポークには負担が掛かりそうですが……。)


表1 摩擦で止まった時の指示値
spoke # Rear L Rear R Front L Front R
1 19.50 24.25 18.50 18.25
2 18.00 25.50 19.75 20.50
3 18.50 25.75 18.00 18.50
4 18.50 25.50 18.75 21.50
5 18.75 24.75 19.50 17.75
6 18.25 24.75 19.00 18.50
7 18.75 25.00 17.75 20.50
8 18.50 26.00 20.00 20.25
9 19.50 24.50 19.00 17.75
10 18.50 24.75 18.00 18.50
11 17.25 25.75 18.50 19.75
12 19.50 24.75 17.75 19.00
13 17.75 25.00 21.25 19.50
14 19.25 25.75 18.50 18.25

表2 ニギニギして摩擦の影響を除いた時の指示値
spoke # Rear L Rear R Front L Front R
1 17.00 22.25 15.75 15.25
2 15.25 24.00 17.00 17.50
3 15.75 23.00 15.00 15.25
4 15.50 23.50 16.25 18.25
5 16.50 22.75 17.25 14.25
6 15.50 22.50 17.00 15.50
7 16.75 22.75 15.00 17.75
8 15.50 24.25 18.00 17.50
9 17.75 22.25 16.25 15.00
10 16.0022.50 15.50 16.00
11 15.00 24.00 15.75 17.50
12 17.50 22.75 14.75 16.50
13 15.50 23.25 18.25 16.75
14 16.50 23.50 15.5 15.25

注意
この実験ではどちらの測定条件でもポインタの摺動部と
測定子のバネに KURE 5-56 を吹いた状態で測定しています。
ただ、実際の動きを見る限り、ポインタの摺動部への注油は
摩擦低減にあまり効果が無いような印象を受けました。


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次に、TM-1 の本体裏側に有るバネの影響を調べてみました。
購入時の状態ではグリップを握るたびにギシギシ音が鳴り、
あまりスムーズに動いていないのが気になったからです。

1回目と2回目の測定の間にバネに KURE 5-56 を吹いて
ティッシュで拭いたところ、茶色い汚れが取れたので、
購入時は僅かに錆が浮いていたと考えられます。

これが工場出荷時そのままの状態なのか、
それとも倉庫での保管中に変質した結果なのか。
またしても Park Tool が意図した精度が出ているのかどうか不明です。

実験は、
  1. バネに注油せずにグリップを静かに離した後、10回ニギニギする
  2. バネに注油した状態でグリップを静かに離した後、10回ニギニギする
の2条件で行ないました。

指示値は注油後に平均で 3.45(最大で 4.75、最小で 2.75)目盛り低下しました。
バネ部の摩擦抵抗はポインタ部より影響が大きいようです。


表3 バネに注油していない状態
spoke # Front L Front R
1 19 19
2 21 21
3 18 19
4 20 21
5 20 19
6 20 19
7 18 21
8 21 21
9 19 18
10 20 19
11 19 21
12 18 21
13 21 21
14 19 19


表4 バネに注油した状態
spoke # Front L Front R
1 15.75 15.25
2 17.00 17.50
3 15.00 15.25
4 16.25 18.25
5 17.25 14.25
6 17.00 15.50
7 15.00 17.75
8 18.00 17.50
9 16.25 15.50
10 15.50 16.00
11 15.75 17.50
12 14.75 16.50
13 18.25 16.75
14 15.50 15.25


注意
2回の測定の間に後輪をスポークレンチで弄ってしまったので、
サンプルは前輪の 28 本だけです。また、1回目の測定では
指示値の小数点以下を四捨五入し、整数で記録しています。
また、どちらの測定条件でもポインタの摺動部には注油してあります。


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それにしても実験条件がバラバラになってしまいました。
新しい道具が手に入った嬉しさで、実験計画を立てるより前に
ついあれこれ試してしまうんですよね。

とりあえず今後は前輪のスポーク状態を死守。
TM-1 の注油した箇所はパーツクリーナーで
購入時の状態に復元できないか試してみようと思います。