2013年11月4日月曜日

交差点の設計ミス(12)

自転車の車道走行を考慮していない
悪質な設計の交差点シリーズの12回目。
今回は板橋区から二つ紹介します。

熊野町交差点(東京都板橋区)


最初は、山手通り(都道317号)と川越街道(国道254号)が交差する
熊野町交差点です。


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まず指摘したいのは、山手通りの北行き車線の構造。
交差点を直進する車にはアンダーパスが用意されているので、
地上部分は
  • 左折・直進兼用レーン
  • 右折レーン
の二車線しか有りませんが、路線バス以外は
ほとんどの車が左折か右折をしているというのが実態です。
(バス停が地上区間に有るので路線バスはアンダーパスを通れません。)

交差点では同方向の横断歩道も同時に青になる

左折レーンの車は左折後の横断歩道の歩行者に塞き止められて動けず、
またレーンの幅員にも余裕が一切無いので、自転車が車道走行を
貫こうと思うと、車の渋滞にモロに嵌まってしまいます。
酷い時は2回以上も信号待ちをするはめに。

右折レーンから直進するという荒技も考えられますが、
これは明らかな通行帯違反ですし、第1レーンから直進車が
出てきた場合はかなり危険です。

結局、直進自転車は歩道に上がって交差点の直近まで進み、
交差方向の横断歩道上で信号待ちをするのが現実的
という事になります。

右直事故リスクを訴える看板

この位置から右折する車は、同じ山手通りを対向方向から
南下してくる直進自転車にとって脅威になります。

交差点内の緩い右折カーブ

山手通り(左右方向)では右直事故のリスクが高い。

交差点が大型なので、
  • 交差点内で右折車がスピードを出せてしまう
  • 右折車が対向直進車と交差するまでの距離が長い
という問題が有ります。

信号が青になってから少し遅れて交差点に進入した直進自転車は、
対向右折車に撥ねられてしまうリスクが非常に大きく、
実際に私も何度かニアミスを経験しています。

パターンとしては、信号待ちでロスした時間を取り戻そうと
安全確認を省略して猛スピードで突っ込んでくる車や、
自転車を視認しつつも「どうせ遅いだろう」と考えて
先に走り抜けようとするバイクとのニアミスが起こりやすいようです。

その他には、右折車同士で正面衝突を起こすリスクも有りそうですね。






黒いセダンが、なかなか動かない前方の右折車列にしびれを切らして
対向右折車の動線上に飛び出してしまった事例です。

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今度は、山手通りを南下する直進自転車の視点から
問題点を指摘します。

交差点の中で信号待ちする直進自転車

写真の自転車は二段階右折の途中ではなく、
交差点を直進しようとしている自転車です。

停止線を越えているので道路交通法には違反していますが、
この行動には充分な合理性が認められます。

左折が先行して青に変わる。

この交差点では、交差する川越街道の右折青時間を利用して、
山手通りの南行き車線のみ、左折レーンが先行で青になります。

左折青に続き、直進と右折も青に変わる。

直進自転車が法の想定通り、第1通行帯で信号待ちをしていると、
先に左折車が動き始めてしまい、いざ直進が青になっても
目の前には途切れる事の無い左折車の流れ。

車道の幅員には余裕が一切無い。

さらに、第1通行帯の左はすぐに縁石なので、大型車が来れば
自転車は最悪、内輪差で轢かれてしまいます。

第2通行帯の直進レーンに移っておけば、
左折車に轢かれたり進路を塞がれる事はありません。

ただ、この場合、停止線を守るべきかどうかは
微妙なところです。なぜなら、

首都高やビルに囲まれた空間

停止線の手前は上下左右を高架橋やビル、
信号待ちのアイドリング車に取り囲まれており、

ティラミスの如く黒い粉が積もった歩道橋の手すり

自動車の排気ガスが滞留しているからです。
私は自転車に乗る時は普段からマスクを着けていますが、
それでも猛烈な排気ガスの臭いが入って来ます。

はっきり言って、ここは生身の人間が立ち入るような場所ではありません。
高濃度汚染区域の名が相応しい環境です。

こんな所で信号待ちするくらいなら、停止線を越えて、
少しでも風が通る交差点の中に進んだ方がましです。

また、可能な限り前方で待機すれば、
対向右折車との事故リスクを下げる事にも繋がります。

私自身は停止線の手前で信号待ちする習慣が染み付いているので、
敢えて冒進するのは気分的に収まりが悪くてやりませんが、
ルールを破った方が安全というのは何だかなあと思います。

自転車は歩道通行が主流。

車道がこれだけ劣悪な走行環境ですから、
当然、大部分の自転車は写真のように歩道を通行していますが、
この自転車が山手通りを直進しようにも横断歩道が有りません。

歩道橋で車道を跨がせる構造ですが、
自転車を押して上がれるようなスロープは無いので、
実質的には歩行者専用です。

従って、自転車にはコの字型に「右、前、左」と
横断歩道を3回渡らせる仕様です。

交差する川越街道は物流の大動脈

まあ、これだけの幹線道路だから仕方が無いのかなとも思えますが、

トラック比率は結構低い

よく見たら物流を担う貨物車はそれほど多くなく、
マイカーが交通量を嵩上げしているようです。
これは大いに削減余地が有りそう。

参考に統計の数字もどうぞ。


環状七号線の直近内側の放射道路で測定した断面交通量(pdf p.35)


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続いては、同じく板橋区から大和町交差点です。
中山道(国道17号)と環七通り(都道318号)の交差点です。


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中山道の北行き車線から交差点を直進する場合の問題点を指摘します。

直進が先行して青になる(国道17号の北行き車線)

この交差点は直進レーンが先に青になります。
これ自体は、同方向の横断歩道で歩車分離するための妥当な措置ですが、
第1通行帯には幅員にあまり余裕が無く、動き出すタイミングも遅いので、
車道を通行する自転車は渋滞に嵌まってしまう事が有ります。

第1通行帯の車の左や右をすり抜けて行く自転車もいますが、
車のドアが突然開く可能性や、すり抜け中に信号が変わって
車が動き出してしまう可能性も有るので、避けるべきです。

交差点の手前から歩道に上がるという手も有りますが、

交差点の直近にある地下鉄の出口

この交差点の直近手前には板橋本町駅の出口が有り、
ラッシュ時は歩行者がかなり多いので、
自転車での歩道通行は避けたいところです。

交差点内部

さて、交差点に着きました。
横断歩道を通って交差点を直進する場合、
中央の高架下部分で直角に2回、左、右と折れます。

自転車がその先で車道に復帰しようとすると、
環七通りから中山道に左折車として合流する形になります。
この時、高架下の安全地帯に設置されている謎の防壁が死角になって、
中山道の直進車から見落とされるリスクが有ります。

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横断歩道を経由せずに、第1通行帯の延長線上を
直線的に通行した場合はどうでしょうか。

交差点の直近に発生している路上駐車

交差点を越えた直後の第1通行帯は大抵、
路上駐車で数十メートルに亘って塞がっています。
路駐車両の右側のドアが突然開く事も想定すれば、
最低1mの安全マージンは欲しいので、
自転車は第2通行帯に入る事になります。

ところが、日本の大多数のドライバーは
自転車が必要とする安全マージンの大きさを理解していないので、
それを織り込んだ運転ができず、
自転車に恐怖心を与えるような結果になりがちです。

良く有るパターンは、
路駐を避けようとする自転車を後ろから追い越そうと思ったら、
予想以上に自転車が右に膨らんできて追突しそうになった、
或いはサイドミラーなどで引っ掛けそうになった、
というものでしょう。

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では、交差点の手前から第2通行帯に移っておき、
車の流れに乗って交差点を通過するのはどうでしょうか。
理論的には好ましい行動のはずですが、
実際はかなり難しいと思います。

第一の理由はもちろん、中山道が速度の高い幹線道路であり、
後続車のプレッシャーが大きすぎるという事ですが、
理由はもう一つ有ります。

この交差点は直進車に対する交通容量が小さく、
信号待ちの直進車の列が数百メートルにも達する事が有ります。

中山道を北上する自転車から見れば、ガラ空きの第1レーンから
わざわざ第2レーンの待機車列の最後尾に着くのはナンセンスですし、
仮に待機車列に加わった場合、交差点までの数百メートルを
車の流れに乗って高速で漕ぎ続けなければなりません。

ならば交差点直近の車線変更禁止区間(45mくらい)
の手前で車線変更すれば良いかというと、そこでは
車の間をすり抜けてくるバイクに追突されるリスクが非常に大きい。

結局、自転車が安全に走れる場所はどこにも無い
というのが実情です。