2013年11月14日木曜日

白山下交差点の不思議な構造

車の通行しか考えずに設計された日本の道路では、
幹線道路のY字路というものは大抵自転車に厳しいものですが、
一つ、非常に奇妙な例を発見しました。



白山下交差点

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地図の下から右上の旧白山通りに進む場合を考えてみます。

白山下交差点の空撮写真(Google Maps より)

この交差点は幾つかの分岐や交差で構成される、言わば交差点群で、
自転車で二段階右折(?)する場合の順路も分かりにくいです。

自転車の動線(Google Maps の画像を加工)

車道の左端に沿って通行する場合はピンク色の線を辿ります。
水色の線は第1通行帯から外れて右折車の動線をなぞるものです。

ピンク色の線と水色の線が分かれる地点には“第1停止線”が有ります。
その数十メートル先の横断歩道手前に、改めて“第2停止線”が引かれています。

“第1停止線”に設置された信号機は、

青 → 黄色(数秒)→ 赤(数秒)→ 右折のみ青 → ……

の順に点灯します。
この「右折のみ青」のフェイズでは直進車は動かないので、
自転車は左端から車道を横切って安全に右折レーンに進めます。

(「進める」というのは法的な意味ではなく物理的な意味で、です。)

一方、あくまで車道の左端に貼り付いて進行しようとする場合は、
自転車は前方の十字路まで進んでから二段階右折し、
さらに第二のY字路で左折して旧白山通りに進入する経路を取ります。


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さて、後者のルート(ピンク色の線)を辿った場合、
この白山下交差点の通過に何秒掛かるでしょうか。

自転車で“第1停止線”に接近している時に信号が赤に変わると、
時間ロスが最大になります。この条件で現地で実測してみました。


計測方法

  1. “第1停止線”手前で信号が赤に変わるのを待つ。
  2. 信号が赤に変わった瞬間に計時スタート。
  3. 赤信号の間、その場で待機。
  4. 信号が青に変わったら、前方の十字路まで進み、交差点の角で待機。
  5. 交差方向の信号が青に変わったら、二段階右折を開始。
  6. 徐行で旧白山通りに左折合流する。
  7. 左折直後の自転車横断帯の手前側の白線に差し掛かった時点で計時ストップ。


実験の結果、所要時間は2分41秒でした。
二段階右折した場合の距離は約190mですから、
この間の旅行速度は約4.25km/hです。歩行者並みですね。

たかだか200m弱の区間の通過に
3分近くも掛かるというのは如何なものか。
35km/hで巡航していれば同じ秒数で1.5kmも走れるのに。

一方、右折車の動線をなぞる水色ルートの場合、
「右折のみ青」フェイズで進行できるので、
所要時間は大幅に短縮できます。

この場合の距離は約150m、平均速度を15km/hとすると
約36秒で交差点を通過できる計算です。ほとんど5倍速ですね。


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都内の他のY字路では自転車への不条理な仕打ちに
苦しめられる事が多いのですが、
この白山下交差点では二段構えの停止線と信号制御の妙により、
奇しくも後者のショートカットが安全にできてしまうという
希有な状況が実現しています。

この状況を活かせば、交差点を次のような構造に改良する事もできます。

まず、上記のショートカットの動線に自転車レーンを引く。
次に、“第1停止線”の所に歩行者用でも車用でもない
自転車専用の信号機(オランダなどで見られる物)を建植し、
右折車と同じタイミングで「右折青」を現示させる。

すると、自転車はスムーズかつ安全に、
最短距離かつ最小時間でY字路を右折できる。

これは良い。

もちろん、右折しようとする複数の自転車が待機できるだけの
スペースが必要なので、現状の第1通行帯は
まるごと自転車道に転用すべきでしょう。

白山通りは車の速度が高く、車線数も多いので、交差点だけでなく
単路部も合わせて(縁石分離の)自転車道を整備するのが妥当ですね。

そういった諸々を織り込んで道路を造り替えるなら、

これを、

こうだ!

せっかくなので十字路部分はオランダの改良型構造で描いてみました。


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