2014年2月26日水曜日

情報の無断利用と劣化コピーの増殖

ニュージーランド、クライストチャーチの交通運営局が
個人のブログから写真を盗用し、公的なガイドライン文書に掲載しました。
情報の劣化コピーの例としても注目すべき事件です。

Christchurch Cycle Design Guidelines (2014年2月26日 閲覧)



盗用されたのは、David Hembrow 氏が
2011年5月2日に公開したブログ記事に掲載した写真で、
自転車用の全方向同時青信号の交差点を撮影したものです。

クライストチャーチの交通運営局はこのオリジナルの写真を、
クレジットの文字列部分が入らないようにトリミングした上で、
局として公的に発行する自転車インフラ整備のガイドライン、
Christchurch Cycle Design Guidelines(p.34)に掲載しました。
pdf の作成日は2013年5月3日です。

写真のクレジットは p.2 と p.72 に纏められていますが、
Hembrow 氏の写真については出典を示していません。
また、Hembrow 氏によれば、使用許可の問い合わせも受けていないそうです。



これだけでも噴飯ものですが(間違えた。)憤慨に値しますが、もっと酷いのは、
NZの交通運営局が海外の様々な自転車インフラの事例を集めながらも、
一つ一つのインフラの設計意図を理解せずにごちゃ混ぜにして、
結果、ちっとも安全ではない形にしてしまっている点です。

Christchurch's design guide features a mish-mash of different ideas from all across the world with no apparent overall concept of which is the proper way to go.
——David Hembrow (16 Feb 2014)

写真を盗まれた Hembrow 氏は、オランダの優れた
自転車インフラの知識を世界に向けて英語で発信している
有名なブロガーですが、その志を折るかのように、
NZの当局は今回、その情報を無断で使い、歪んだ解釈をし、
さらにそれを「オランダ式交差点」と称してガイドラインに載せたわけです。

The Dutch intersection is a new approach to intersection design in Christchurch and potentially offers the highest level of protection to cyclists.

こうした盗用と誤解、偽物の横行は数年前から増え始めたそうで、
Hembrow 氏は抗議の意味も含め、2年前に一度ブログを閉鎖しています。

閉鎖当時の記事
http://www.aviewfromthecyclepath.com/2012/02/february-blog-closure.html



このような事例を見聞きすると、
日本は大丈夫なのかと気になってきます。

私が知る限りでは、幸いにして、
自転車インフラ系の論文やガイドラインでは
今のところ盗用は有りません。

(原典に辿り着けない不親切な引用は有りますが。)

しかし、海外事例についての研究では、
各国の交通政策の理念や本質、背景事情を理解せずに
猿真似している例が散見されます。

ここでも、劣化コピーの問題が生じています。

次回以降、その具体例として、
  • ゾーン30政策の理解におけるボタンの掛け違い
  • インフラ構造基準の土台にある基本理念の180度転回
  • 自転車と車の分離基準に関する数値主義と見落とし

を取り上げようと思います。