2014年11月21日金曜日

CROWと国交省のガイドライン比較——通行空間の構造分類と通行ルール

自転車レーンの幅員についての指針を
オランダと日本それぞれのガイドラインで比較してみました。



CROW (2007) Design manual for bicycle traffic, p. 166

種類
連続線で区切られた自転車レーン 2.00 から 2.50 m
破線で区切られた自転車レーン 1.50 から 2.00 m
区分線の幅(自転車レーンとは別に) 0.10 から 0.15 m
自転車レーンと隣接する駐車枠の間隔 *1 0.50 から 0.75 m

* 1 歩道と自転車レーンの間に駐車枠を挟む構造は「勧められない」と注記が有ります。



国交省(2012)安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン, pdf p. 43, 46, 59

種類
自転車レーン(安全上、望ましい幅) 1.5 m 以上
自転車レーン(やむを得ない場合) 1.0 m 以上、1.5 m 未満
(側溝部分を除く*2)
法定外の路面標示(路肩のカラー化など) 1.0 m 以上 (側溝部分を除く*2)
自転車レーンと隣接する駐車枠の間隔 「余裕幅を確保することが望ましい」

*2 側溝は一般的に 0.5 m 幅なので、実質的にはどのパターンでも 1.5 m 以上になるように思われるかも知れませんが、近年、省スペース型の製品が登場しているので、これは必ずしも真ではありません。

省スペース型の街渠ブロック(アスザック株式会社の製品紹介ページより



差異1
日本のガイドラインはオランダのガイドラインに比べて幅員の最低基準が 0.5 m ずつ狭く設定されています。

差異2
日本のガイドラインは自転車レーンの最大幅を示していません。
(最低基準が実質的な標準幅員として使われる前提なのかな?)

差異3
日本のガイドラインは通行帯区分線の幅を考慮していません。日本では区分線(15 cm 幅)の中心が車道と自転車レーンの境界線上に来るように引くのが一般的なので、自転車レーンの実質的な幅員は、書類上同じ値でも、オランダより 7.5 cm 狭くなります。

差異4
日本のガイドラインは、なぜ 1.5 m が安全上望ましい値なのか、科学的な根拠を示していませんが、オランダのガイドラインは根拠となる論文を引用しています

差異5
オランダのガイドラインは、自転車レーンにクルマの駐車枠を隣接させる構造はできるだけ避け、他の可能性が無いか検討すべきだと強調していますが(CROW 2007, p. 118)、日本のガイドラインはこの構造の危険性について特に言及せず、また、自転車レーンと駐車枠の間に挟む余裕幅についても数値を明示していません。



参考情報1
日本とオランダの自転車レーンの種類は次のように対応します。

2014年12月11日 追記と訂正{

オランダ 日本
fietsstroken met doorgetrokken streep
(連続線で区分、ピクトグラム有り
普通自転車専用通行帯
fietsstroken met onderbroken streep
(破線で区分、ピクトグラム有り
対応分類なし
fietssuggestiestrook
(破線で区分、ピクトグラム無し)
法定外の路面標示(路肩のカラー化、
自転車ナビマークなど)

修正部分の出典

自転車レーンの3分類について
Fietsersbond - Wat is een fietspad en wat is een fietsstrook?

ピクトグラムの有無について
交通規則・道路標識法 第1条 "fietsstrook"の項



参考情報2
自転車レーンに関する交通規則は、日本とオランダでは少し異なります。

2014年12月11日 通行義務の列を追加{

自転車レーンの種類 自転車の通行義務車の進入 路上での駐停車
蘭・連続線区分の自転車レーン 不明禁止 禁止 *4
蘭・破線区分の自転車レーン 不明容認 *3 禁止 *4 *5
蘭・目安としての自転車レーンなし 容認 容認
日・普通自転車専用通行帯 車道を走る場合は義務禁止 容認
日・法定外の路面標示なし 容認 容認
出典: オランダはCROW (2007) p. 166、日本は道路交通法20条2項と47条1、2項。



*3 自転車の通行を妨害しない事が条件です。
*4 自転車レーン上だけでなく隣接する車道上も(荷卸し含め)駐停車禁止です。まあ、実際に守られてるかどうかは別だけどね。

2014年11月23日追記

*5 一律に駐停車禁止というわけではなく、
駐車禁止を併せて実施するのが望ましいが、荷卸しの為の停車は容認する
(CROW 2007, p. 119)
の間違いでした。


2014年12月11日追記{
自転車レーンへの車の進入禁止に関しては、次の法規定が有ります。

Reglement verkeersregels en verkeerstekens 1990 (RVV 1990) - Artikel 10
(交通規則・道路標識法 第10条)
2. Andere bestuurders dan fietsers en bestuurders van een gehandicaptenvoertuig mogen fietsstroken met doorgetrokken strepen niet gebruiken.
(自転車の運転者と身体障害者用車両の運転者を除き、連続線で区分された自転車レーンを通行してはならない)
なお、ここで言う身体障害者用車両(gehandicaptenvoertuig)とは、同法第1条の定義に拠れば、
  • 車体幅が1.1m以下で
  • モーターを備えていないか
  • モーターを備えている場合は最高設計速度が45km/hを超えないもので
  • モペッドではないもの
です。車椅子やハンドバイク、シニアカー、超小型車などが含まれると考えられます。


自転車レーン上の駐車禁止に関しては、次の法規定が有ります。

Reglement verkeersregels en verkeerstekens 1990 (RVV 1990) - Artikel 23
(交通規則・道路標識法 第23条)
  1. De bestuurder mag zijn voertuig niet laten stilstaan:
    (運転者は以下の場所で自分の車両を離れてはならない)
    1. //略
    2. op een fietsstrook of op de rijbaan langs een fietsstrook;
      (自転車レーンの上、または自転車レーンに隣接する車道上)