几帳面な日本のエンジニアはもしかしたら無意識のうちにこう考えているかもしれません:「自転車インフラは道の左右で対称でなければならない」。でもそれって本当に合理的?
交差点の北東の自転車道だけ双方向通行になっている例
道路の周囲にどんな施設が有るかという文脈や、実際の利用者がどのように動いているかという流れを考慮すれば、場合によっては部分的に対称性を崩すのが最適かもしれません。
上の例(オランダ、アセン)では、交差点の北東に学校が立地しており、あらゆる方向から多くの学生が自転車で来るという利用実態、つまり需要が有ります。この需要に対して、自転車道が学校の敷地横(駐輪場の出入り口まで)だけ双方向通行になっている事で、学生たちが無駄な遠回りをしなくて済むようになっています。
双方向通行では交差点、特に細街路との小交差点で車との事故が起こりやすいという欠点が有りますが、ここでは敷地の広い学校がでーんと一つ立地している事で細街路が一切無いので、車が自転車道を横切るのは学校の駐車場の出入り口部分だけです。
駐車場の出入り口
この場所は危険でしょうか。オランダ全土の交通事故発生地点を地図上で閲覧できるOngelukken op de kaartで見る限り、事故は1件も起こっていません。(データが提供されている2007〜2013年の範囲)
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その他にはどんな非対称道路が有るでしょうか。
アームスフォートのゾーン30内の商店街通りです。狭い車道は一方通行で、車と逆方向の自転車にだけ簡易的な自転車レーンが用意されています。車と同方向の自転車にはレーンが無く、車との混在通行になります。限られた空間の中で工夫していますね。
車での来店客にも対応できるように(片側だけですが)駐車枠も用意していて、自転車レーンが路上駐車に塞がれる事が無いという点にも注目です。
片側だけ自転車道が有る道路
同じくアームスフォートから。線路と並行する幹線道路で、道の片側に双方向の自転車道が有るだけで、反対側(線路側)には歩道しか有りません。これも利用者の移動需要に応じた結果の非対称性です。元々は車道の両側にそれぞれ一方通行の自転車道が配置されていた左右対称構造でした。詳しい経緯については過去の記事で紹介しています。
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