2015年6月28日日曜日

自転車活用推進法案の感想 (2) 路上から路外駐車への転換のデメリット

2015年6月25日に開催されたシンポジウム「自転車活用推進法を徹底解剖する」に行ってきました。(前回の記事

法案の内容でもう一つ気になった点が有ったので追記します。基本方針の中の、
(2) 路外駐車場の整備、時間制限駐車区間の指定見直し
です。

実現可能性どうこうの話ではなく、これは自転車利用者にとってデメリットになる可能性が有ります。「ドライバーにとって」ではなく「自転車利用者にとって」です。



仮に車道の端に何らかの自転車通行空間を配置するとします。自転車道、自転車レーン、いろいろ考えられますね。

その場所は、現状では多くの幹線道路で駐停車空間として機能しています。特に荷卸し目的での駐停車は街の機能を維持するのに必須の要素で、単純にその空間を無くすわけにはいきません。

車の駐停車空間を自転車の走行空間で置き換えるのであれば、どこか別の場所に車の駐停車空間を用意する必要が有ります。ではそれはどこが良いのか。

路外(沿道)の駐車場を代替空間にした場合、ドライバーにとって配送時間のロスに繋がるなどの欠点が考えられますが、自転車利用者にとっても、車が自転車通行空間を横切る場所と回数、つまり事故リスクリスク暴露量(2016年12月9日修正)が増えるという致命的なデメリットが有ります。

路外駐車場は車と自転車のコンフリクト・ポイントを増加させる。

これが現実にどういう光景になるのかは、ひたちなか市の自転車道が既に示しています。



沿道の駐車場に出入りする車が頻繁に自転車道を横切っており、思いのほか危険である事が分かります。

それなら自転車通行空間と車道の走行空間の間に駐車枠を設置した方がよほど良い。

現にオランダでも(そして2007年以降はアメリカでも)幹線道路で駐停車需要の有る区間ではこのレイアウトが好まれており、うまく機能しています。

うす赤いアスファルト舗装部分が自転車道
写真の出典:As Easy As Riding A Bike
(オリジナル画像に tone curve と resize 処理を加えています。)

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自転車道は荷卸しの障害にならないし車椅子にも優しい


ペイントによってオランダの自転車道と
ほぼ同じ機能を実現したニューヨークの自転車レーン
写真の出典:The Chicago Architecture Blog(2011年7月26日)

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路上駐車に塞がれないアメリカの自転車レーン


こうした海外の事例を出すと、「日本は海外と違って道路が狭いからできない」との反論が必ず挙がりますが、実際には全ての道路が狭い訳ではなく、路線によってはかなり余裕が有ります。

過去の関連記事
"Our roads are too narrow for cycle paths" claim in Tokyo


一例として国道15号の札の辻付近を見ると、

東京都港区・札の辻交差点付近の国道15号

国道15号・札の辻付近の現状
第1通行帯は空いている事が多い。

改良案

このように、実質的な交通容量にはあまり影響を与えずに各利用者の要求に応えられる事が分かります。(国道15号沿いに荷捌き機能を求める施設が果たしてどれほど立地しているかは分かりませんが。)


以上をまとめると、
  • 現状で路上駐車が目障りだからといって、それを路外に排除すれば良いなどと短絡的に考えるべきではない
  • さまざまなレイアウトの可能性を考慮に入れて、文脈に合った最適解を模索すべき
という事です。