2012年12月15日土曜日

荒川の通行区分実験が終了

先日久し振りに荒川を通ったら、国交省の荒川下流河川事務所が
実施していた自転車と歩行者の通行区分実験が終わっていました。
広報によると、実験は10月31日までだったようです。





実験期間中に自転車同士の正面衝突事故も出した
忌まわしい路面ペイントが墨塗りされています。


今後は、実験期間中の投書や実態調査を踏まえて
2013年の3月に安全策を提案する予定だそうです。

ただ、実験開始前と同じく、その協議過程に
河川敷を利用する市民は入れてもらえないようですね。
Sherry Arnsteinの梯子で言う4段目辺り。まだまだ先は長い。


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ちなみに、私はこの河川敷道路の問題をこう捉えています。


現状
  • 歩行者と自転車が同一空間に混在している
  • 自転車の速度が高過ぎる(と歩行者から思われている)
  • たびたび接触・衝突事故が起こっており、死亡事故も発生した
    (多分、日常的にニアミスが起こっている)

これまでの対策
  • 自転車に20km/h以下で走るように指示
    → 守らない人がいる
  • 通行区分を実施
    → 狭過ぎて追い越せない・すれ違えない・正面衝突する(*)
    → 自転車がレーンの外へはみ出る
    → 逆に歩行者がレーンの中に入る事も
  • 路面に凹凸を設ける(多摩川の事例)
    → 乗り心地が悪化
    → スピードを出す人は気にしない
  • 幅員を狭くする(荒川上流や多摩川は元から狭い)
    → 事故リスクが増加
    → スピードを出す人は気にしない

* 正面衝突は、対向自転車が近付いている時に
自分の前の自転車を追い越そうとすると高確率で起こります。
これはヒトの認知・判断の特性と関係が有りそうです(下記参照)。
『歩行者 人動車 道 路上の運転と行動の科学』
牛生扇(平尾収) 1995 三栄書房 p.163, p.405

サイクリストが(ヒトの本能的な反応として)スピードを出す要因
(いずれも荒川下流の河川敷道路の特徴に合致する)
  • 信号が無い
  • 急カーブが無い
  • 死角が無い
  • 風景の情報量が少ない
  • 幅員が広い
  • 舗装の平滑度が高い

以上から、ヒトの本能に反する事をしても利用者の協力は得られず、
事故対策にヒトの本能を織り込まない限り
問題は解決しない事が予想できます。


ではヒトとは何でしょうか。


ヒトは、
交通安全教育を受けていない、受けても忘れる、無視する
という点で動物と同じであり、
危険に対する感覚が鈍い、無謀な運転を好む
という点で動物以下であり、
自転車という便利な道具が使える
という点で動物以上です。


実に厄介ですね。

もちろん全員が全員こうだというわけではなく、
集団の中には必ずこういう個体が含まれるという事ですが、
事故ゼロを目指すなら、そういう個体の存在を織り込む必要が有ります。

つまり、規則や強制、障害などを設けなくても
誰もが無意識的に安全な動きをする様に仕組むという事です。


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これを前提にすると、歩行者・ランナーと自転車の通行空間を
物理的に分離してしまうのが、現状の対策よりは
ましな解決策と言えそうです。

(歩行者が自転車空間を横断する際や、
自転車が歩行者空間を横断する際の危険は残る。)


荒川下流の河川敷道路は、
災害時には緊急輸送道路として車が通行するので、
上下合わせて二車線分の幅員が確保されています。

差し当たってはこの上下二車線を分離して、
片方を歩行者・ランナー、片方を自転車に、
といった所でしょうか。


もちろん、路面に線を引くだけでは駄目です。
道路の危険をまだ知らない小さな子供や、
自分は事故に遭わないと思っている馬鹿な大人が
自転車の目の前に飛び出す恐れが有るからです。


理想的には単に柵やポールで区切るだけでなく、
上下線を数メートル以上離して設置するのが良いのかもしれません。
空港の滑走路と平行誘導路のような形で。

そうしないと折角の区分がヒトの愚鈍な認知を素通りしてしまい、
自転車レーンに歩行者が迷い込んでくる、
或いはその逆という事態が起こり得ます。

(これは山手通りなど、歩道上に自転車レーンが
設けられた場所で日常的に観察される事象です。)


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荒川は堤防の強化工事やら何やらでしょちゅう
舗装を引っぺがしたり敷きなおしたりしてますから、
予算が無いなんて事はないでしょう。

冒頭のような馬鹿げた実験を繰り返さない為に、
今後はきちんと交通工学、安全工学の専門家
(特に歩行者と自転車の関係に詳しい専門家)に
助言を仰いで、まともなインフラを造って欲しいものです。

もしかしたら河川事務所の人たちは
道路は飽く迄緊急輸送用で、ランニングやサイクリング利用には
ついでで開放しているだけだから、そんな事わざわざ考慮する必要は無い。
いざとなったら自転車を締め出せば良い。
などと思っているかもしれませんが、
河川敷は防災インフラである以前に、平常時は
市民にとって都市の貴重なレクリエーション空間なんです。
一般道の自転車通行空間が貧弱なだけに。

市民の健康な生活を支えてるんだという
誇りと責任感を持って行動して欲しいですね。