実施していた自転車と歩行者の通行区分実験が終わっていました。
広報によると、実験は10月31日までだったようです。
実験期間中に自転車同士の正面衝突事故も出した
忌まわしい路面ペイントが墨塗りされています。
今後は、実験期間中の投書や実態調査を踏まえて
2013年の3月に安全策を提案する予定だそうです。
ただ、実験開始前と同じく、その協議過程に
河川敷を利用する市民は入れてもらえないようですね。
Sherry Arnsteinの梯子で言う4段目辺り。まだまだ先は長い。
---
ちなみに、私はこの河川敷道路の問題をこう捉えています。
現状
- 歩行者と自転車が同一空間に混在している
- 自転車の速度が高過ぎる(と歩行者から思われている)
- たびたび接触・衝突事故が起こっており、死亡事故も発生した
(多分、日常的にニアミスが起こっている)
これまでの対策
- 自転車に20km/h以下で走るように指示
→ 守らない人がいる - 通行区分を実施
→ 狭過ぎて追い越せない・すれ違えない・正面衝突する(*)
→ 自転車がレーンの外へはみ出る
→ 逆に歩行者がレーンの中に入る事も - 路面に凹凸を設ける(多摩川の事例)
→ 乗り心地が悪化
→ スピードを出す人は気にしない - 幅員を狭くする(荒川上流や多摩川は元から狭い)
→ 事故リスクが増加
→ スピードを出す人は気にしない
* 正面衝突は、対向自転車が近付いている時に
自分の前の自転車を追い越そうとすると高確率で起こります。
これはヒトの認知・判断の特性と関係が有りそうです(下記参照)。
『歩行者 人動車 道 路上の運転と行動の科学』
牛生扇(平尾収) 1995 三栄書房 p.163, p.405
サイクリストが(ヒトの本能的な反応として)スピードを出す要因
(いずれも荒川下流の河川敷道路の特徴に合致する)
- 信号が無い
- 急カーブが無い
- 死角が無い
- 風景の情報量が少ない
- 幅員が広い
- 舗装の平滑度が高い
以上から、ヒトの本能に反する事をしても利用者の協力は得られず、
事故対策にヒトの本能を織り込まない限り
問題は解決しない事が予想できます。
ではヒトとは何でしょうか。
ヒトは、
交通安全教育を受けていない、受けても忘れる、無視するという点で動物と同じであり、
危険に対する感覚が鈍い、無謀な運転を好むという点で動物以下であり、
自転車という便利な道具が使えるという点で動物以上です。
実に厄介ですね。
もちろん全員が全員こうだというわけではなく、
集団の中には必ずこういう個体が含まれるという事ですが、
事故ゼロを目指すなら、そういう個体の存在を織り込む必要が有ります。
つまり、規則や強制、障害などを設けなくても
誰もが無意識的に安全な動きをする様に仕組むという事です。
---
これを前提にすると、歩行者・ランナーと自転車の通行空間を
物理的に分離してしまうのが、現状の対策よりは
ましな解決策と言えそうです。
(歩行者が自転車空間を横断する際や、
自転車が歩行者空間を横断する際の危険は残る。)
荒川下流の河川敷道路は、
災害時には緊急輸送道路として車が通行するので、
上下合わせて二車線分の幅員が確保されています。
差し当たってはこの上下二車線を分離して、
片方を歩行者・ランナー、片方を自転車に、といった所でしょうか。
もちろん、路面に線を引くだけでは駄目です。
道路の危険をまだ知らない小さな子供や、
自分は事故に遭わないと思っている馬鹿な大人が
自転車の目の前に飛び出す恐れが有るからです。
理想的には単に柵やポールで区切るだけでなく、
上下線を数メートル以上離して設置するのが良いのかもしれません。
空港の滑走路と平行誘導路のような形で。
そうしないと折角の区分がヒトの愚鈍な認知を素通りしてしまい、
自転車レーンに歩行者が迷い込んでくる、
或いはその逆という事態が起こり得ます。
(これは山手通りなど、歩道上に自転車レーンが
設けられた場所で日常的に観察される事象です。)
---
荒川は堤防の強化工事やら何やらでしょちゅう
舗装を引っぺがしたり敷きなおしたりしてますから、
予算が無いなんて事はないでしょう。
冒頭のような馬鹿げた実験を繰り返さない為に、
今後はきちんと交通工学、安全工学の専門家
(特に歩行者と自転車の関係に詳しい専門家)に
助言を仰いで、まともなインフラを造って欲しいものです。
もしかしたら河川事務所の人たちは
道路は飽く迄緊急輸送用で、ランニングやサイクリング利用にはなどと思っているかもしれませんが、
ついでで開放しているだけだから、そんな事わざわざ考慮する必要は無い。
いざとなったら自転車を締め出せば良い。
河川敷は防災インフラである以前に、平常時は
市民にとって都市の貴重なレクリエーション空間なんです。
一般道の自転車通行空間が貧弱なだけに。
市民の健康な生活を支えてるんだという
誇りと責任感を持って行動して欲しいですね。