2013年6月22日土曜日

総統閣下は自転車にお怒りのようです

昨年6月、東京都の自転車対策懇談会で、
東京バス協会の市橋千秋氏が
自転車にもナンバープレートを付けろ
と発言してから、議論の嵐が吹き荒れていましたね。


ナンバー制導入を狙う勢力は今でもしぶとく生き残っているようですし、
一部の政治家は、議会にナンバー制導入を提言した事を
誇らしげに語っています。


某氏(*1)の活動報告
自転車についてもナンバープレートを表示させることは、
危険な運転や犯罪の抑止に有効と思われます。

(中略)

この防犯登録番号を周囲から見やすく表示する、
いわばナンバープレートとすることで、
自転車利用の安全性が高まるのではないか、
そして、利便性が高まるのではないか、
導入を検討するべきではないかと考えます。

ナンバープレートを付けただけで安全性と利便性が高まる?
どんな論理だよ。

*1 2013年6月25日追記
もう選挙も終わったので、伏せる必要も無いでしょう。
民主党、都議会議員の吉田康一郎氏です。

まあ、それはさておき、

この件でちょっと海外の事例を調べていたのですが、
第二次大戦下、ナチス・ドイツがこの政策を本当に実行していたようですよ。
ナチス占領下のフランスで自転車へのナンバープレート装着を命じていたようです。

そういう歴史も有ってか、こんなパロディー映像が作られています。


Hitler bicycle rant from www.theweeklycycle.com on Vimeo.


総統閣下シリーズじゃないですか! これは不覚にも笑った。
政治家の風刺もそうですが、意外とサイクリストの
あるあるネタが満載でツボります。



さて、自転車にナンバープレートを付けさせようという発想は、
何も日本やナチスに限った話ではなく、昔から世界各地で
現われては消え、現われては消えしているようで、
最近ではイギリス海峡のジャージー島がその動きを見せているようです。

しかし案の定、
「制度導入による損失が利益を上回ってしまう」
とか、
「ナンバー装着が義務化されている車のドライバーも
平然と違反を繰り返している」
などの突っ込みがジャージーの運輸大臣から直々に入っています。



スイスも2012年まではvelovignette(ヴェロ・ヴィニェット)
という、損害賠償保険付きのナンバーステッカーを
法律で自転車に義務付けていましたが、
制度の維持費用が収入を上回っていたため、
去年の5月末日を最後に廃止しています。



ナンバーついでに言いますと、かつてカナダのトロントでは
自転車にも運転免許の取得を法律で義務付けていましたが、
法律は1957年に廃止されました。

幼い子供たちが法律を知らずに交通違反をしてしまう事が多く、
子供と警官の関係が悪化していたからです。

その後も自転車の免許制度の法案は、
「自転車盗難」や「歩道上での事故」など、その大義名分を様々に変えながら、
たびたび議論の俎上に載せられてきましたが、いずれも頓挫しています。

理由は、
  • 免許データベースを常に完全で最新の状態に保つのが難しい
  • 子供も自転車に乗るが、免許を与えるのが難しい
  • 交通規則を守らないサイクリストに対しては免許も無力である
などです。