2013年6月1日土曜日

サイクリングショーツの改良

以前指摘した安価なサイクリングウェアの問題点を改善しました。

saitoimportの3Dパッドレーサーパンツ


オリジナルの状態で見られた問題点
  • パッドの取り付け位置が全体的に後ろ過ぎる
  • 生地の縫い代が反対側に倒れている
  • 内股が当たる部分のパッドの縁が分厚い 
  • 内股が当たる部分に縫い始め/縫い終わりが来ている
  • パッドの速乾性が低い
これらを可能な範囲で直していきます。


内股部分に股擦れの要因が集まっています。

同じ製品を2着持っているのですが、パッド縫い付け部分は
生地側の縫い代の処理や、縫い始め/縫い終わりの位置がバラバラです。
工場に縫製のマニュアルが無いか、マニュアルが守られていないのかもしれません。

また、パッドの取り付け位置は、少なくとも私には合いませんでした。
坐骨が当たる位置や内股のカーブへの沿い具合から判断して、
適正位置から約3cm後ろにずれています。

パッドは柔軟性、伸縮性が乏しいので、
僅かなずれでも股擦れの要因になります。


パッドを取り外しました。

パッドの縫い付け部分で縫い代が反対側に倒れていた事が分かります。
これが股擦れの原因になっていたと考えられます。

取り外したパッド。縁は前後が薄く、左右が分厚くなっています。

縁の厚みが切り替わる箇所。
内股が当たる部分の方が分厚くなっています。

普通に考えれば、脚の付け根に当たる左右の縁は
薄い方が生地との段差が少なくなるので好ましいのですが、
このパッドでは薄い部分は中身のスポンジがプレスされて固くなっています。
(縫い直す時も縫い針を通しにくかった。)

スポンジとしての柔らかさを確保するために
内股部分の縁は潰さず、分厚いままになっているようです。

そこで、厚い部分を切開し、

スポンジを除去しました。
原理的にはシマノの最上位パッドと同じ事をしています。

この処理で、左右の縁の厚みは1.8mmから0.9mmになりました。
数字ではパールイズミの最上位パッドに勝っています。

通気性を高めるためにパッドの前側に通気穴を開けました。
これも、穴の数だけで言えばパールイズミに勝っています。

パッドを生地に千鳥縫いで付け直しました。
縫い付け部分の平滑度で言えば、フラットシームに劣ります。

パッドの取り付け位置は一気に3cm前に移動しても良かったのですが、
そうすると今度は内股の後ろ側で新たに擦れが発生するかもしれないので、
間を取って15mmに留めました。

縫い代が反対側に倒れていた箇所は修正しました。

手縫いなので表側にはあまり糸が出ません。


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さて、改良後の印象ですが、

パッドの前後位置のズレに起因していた股擦れは大幅に改善しました。
坐骨もパッドの一番分厚い部分に正確に載るようになりました。


縫い代を正しい方向に直した事と、縁を薄くした事、
手縫いに変更した事からは
それほど大きな違いを感じませんでした。

股擦れは起こりにくくなったような気もしますが、
完全に解消したわけでもありません。

長距離を、高いケイデンス・運動強度で走れば
もっとはっきりと違いが分かるのかもしれません。

生地の縫い代が内股に来ている事は直しようがないので、
改善には限界が有ります。

(生地を裏返しにすれば縫い代が外に出るので
劇的な改善が見込めますが、さすがに見栄えが悪すぎます。)


パッドの通気穴の効果は良く分かりませんでした。
少なくとも走行中は全く違いが感じられません。

これもパッドの材質自体があまり高級なものではないので、
速乾性には限界が有ると考えられます。


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まとめ

手直しにはかなり時間が掛かります。
生地のカットパターンやパッドの材質という限界も有るので、
股擦れや蒸れが完全に解消するわけでもありません。

AmazonやCBNのレビューを見ると
全く問題なく使えている方もいるようですが、
私個人の感想としては、やはり不満が残る商品という事になります。