「○○に清き一票を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます」
的な表現、今までは誤用だと思ってたんですが、そうとも限らないようですね。
「賜る」という動詞は受け手を主語にした謙譲語なので、上の例文の命題部分を丸裸にすると、
「(立候補者から)票を受け取るよう(皆様に)お願いする」
という謎の発言になるんですが、古語辞典(三省堂(2000)『全訳読解古語辞典 小型版』)を見ると、「たまは・る」の項目(p. 713)に、
中世になると、誤用から尊敬語としても用いられるようになった。
とあり、「お与えになる」という語義も示しています。これをそのまま継承しているのだとすれば、現代人が言う「賜りますようお願い……」は正しいという事になります。尤も、「賜る」という語自体は「たまふ」の受動形と分析できるので(意味は be given something)、これを与え手主語の尊敬語として使うのは違和感が有りますが……。