2014年5月10日土曜日

ゾーン30の効果を実証できない警察

日経新聞(2014年5月8日)に
全国各地でゾーン30の導入が進んでいる
という記事が載っていました。

 ゾーン30の入口標識(東京都八王子市)



記事の見出しは
「ゾーン30」、全国に拡大中 事故減少の効果
となっていますが、本文をよく読むと、

……昨年4~9月、埼玉県警が12年度に整備した21カ所で効果を検証したところ、直前の半年間と比べ、人身事故が44件から29.5%減の31件に、物損事故が149件から13.4%減の129件となった。平均速度は35.6キロから32.6キロとなり、交通量も約2%少なくなった。……

え? 時系列で比べちゃったの?
2014年5月21日追記 「導入地区だけの時系列」というのが問題。)
これではゾーン30に因る効果かどうか分かりません。

(埼玉と言えばゾーン30政策をまとめた
久保田尚教授のお膝元なのに……。)

導入した地区だけでなく、
導入しなかった地区も加えて対照群にし、


対象地区対象外の地区
ゾーン30導入前 A C
ゾーン30導入後 B D

4つのパターン、A, B, C, D を比較しないと
(そしてそれを統計的に検定しないと)、
ゾーン30が有効だったかどうかは分かりません。

自転車ナビラインの実証実験の時もそうでしたが、
警察は「実験が実験として成立する要件」が何なのか
依然として理解していないようです。(日経記者も)


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それと、記事には

ゾーン30では、路側帯を拡張して車道の幅を狭くするほか、道路上にこぶ(ハンプ)を設けるなどして、ドライバーが視覚的、物理的に速度を出しにくい工夫がされている。

とも書いてありますが、
ここまで手間と費用を掛ける所ばかりではありません。
実際には、単に規制標識を何本か立てるだけの例も有ります。

(それが有効かどうかは、個別の地区ごとに
長期的に検証していかないと分かりません。)

規制標識以外は何の対策もしていないゾーン30の例
(東京都杉並区)

今回の報道では「計画の何パーセントまで導入できたか」が中心主題でしたが、
効果が実証できていない以上、そんな数字に大して意味は有りません。

私が気になるのは寧ろ、
各地の警察署の交通担当者がゾーン30の意図や
その背景にある思想を本当に理解しているのか、また、
ハンプや通行規制などの対策が適切に機能しているのか、
といった事です。