2014年7月6日日曜日

LIZを床の間バイクにしないために

弱虫ペダルブームで女性にもロードバイクの人気が広がっていると聞いて、
Y's Road 池袋店に行ってみました。

店頭に展示されていた RIDLEY のロードバイクと箱根学園のキャラクター



店内には特設コーナーが展開され、
各キャラクターが乗っているモデルが集められていましたが、
「ご成約」の札が付いた自転車は意外にも
作中に登場したのと全く同一の車種ではなく、
同じブランドの女性向けモデルでした。

せっかくロードバイクを始めるなら、
登場人物たちが感じた自転車の楽しさや爽快感も
体験してほしいという店員さんの良心が窺えます。
サイズの合わない自転車では快適に乗れませんからね。


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ただ、これでロードバイク人口の男女比の極端な偏りが
是正されていくかというと、かなり難しいと思います。
女性でも安心してスポーツ走行を楽しめる環境が無いからです。

幹線道路の車道は車がビュンビュン飛ばしていて危ないですし、
かといって車の少ない裏道は死角が多くて徐行が必要です。
歩道や歩道上の自転車レーン(もどき)は、
幅の狭さや段差の多さ、歩行者との混在といった悪条件から、
およそロードバイクが走るべき場所ではない事がすぐに実感できます。

ロードバイクが走れる場所が無いという事は、
普通の自転車が長距離を安全・快適に走れる場所も無いという事です。
この事が「自転車通勤は危ない」などの社会的認識に繋がり、
車から自転車へのモーダルシフトを妨げていると考えられます。
(私も上司に「危ないんじゃない?」と心配されました。)

この事から私は、スポーツ自転車に対応したインフラの整備は、
社会全体の持続可能性や環境問題にも関わってくる課題だと考えています。


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この問題意識に立って考えると、
幹線道路に本当に必要なインフラは、
歩道からも車道からも物理的に分離され、
充分な広さが確保された自転車専用の走行空間(=自転車道)
だと思うのですが、

オランダの自転車道
Google Street View より)
スポーツ目的だけでなく日常の移動でも自転車が広く利用されている。
 国民一人一日当たりの走行距離は日本の0.75km(*1)に対して
オランダでは3.5km(*2)と4.6倍も多い。
*1 http://www.mlit.go.jp/common/000990569.pdf
*2 http://www.ecf.com/news/bicycle-cultures-are-man-made/

日本ではこの種のインフラが殆ど普及していません。
現実に自転車走行インフラとして整備されているのは、
路上駐車に占拠されてしまう自転車レーンか、

路上駐車に塞がれた自転車レーン

歩道上の劣悪な自転車レーン(=自転車通行指定部分)に二極化しています。

スポーツ走行に適さない歩道上の自転車レーン
狭すぎる、段差が多い、舗装が滑らかではない、急角度で屈曲する、
交差点やバス停の周辺で頻繁に途切れる、歩行者が入ってくる、
死角が多く見通しが悪い、などと悪条件が揃っている。


前者の〈車道上の自転車レーン〉を推進しているのは、
「強さ、勇敢さ、男らしさ」といった価値観に心酔し、
女性や子供や高齢者の感じ方を無視する中年のオッサンどもであり、

後者の〈歩道上の自転車レーン〉を作り続けているのは、
「自転車なんて所詮歩行者に毛が生えたような物」という古い認識のまま、
環境問題や人間社会の持続可能性について真剣に考えないお役人どもです。


どちらも認識が不完全です。


自転車本来の性能を 利用者の安心感を
オッサンは よく知っている 軽視している
お役人は 全然分かってない それなりに考慮している


この状況を打破する鍵になるのが、他でもない、
ロードバイクを始めた女性の声だと思います。

せっかく買ったロードバイクが床の間に飾られたままになる
なんて勿体ない事にならないように、積極的に意見を発して欲しい。
オッサンどもも独善的な発想は止めて、女性の視点を取り入れて欲しい。

そうすれば日本の自転車利用環境はもっと良くなると思います。