2014年7月12日土曜日

都道462号の自転車歩行者道とスーパーの話

国際通りと呼ばれていた浅草の道路です。

寿四丁目交差点の南東角から南方向

一応自転車のピクトグラムが路面に描かれていますが、
歩道上に置かれた自転車や電話ボックス、植栽で実効幅員は狭いです。



ステルスレーン

自転車と歩行者の空間は舗装ブロックの色の違いで
区別されていますが、違いが微妙すぎて殆ど見分けが付きません。
尤も、視覚的な分離では何にせよ大した効果は期待できませんが。


同じ地点の車道

すぐ前方に横道との合流点が有りますが、
濃すぎる街路樹で全く見えませんね。
事故発生を狙っているとしか思えない。

車道部分の幅員は約22m、片側3〜4車線です。
左端のレーンは時折現れる路上駐車で、
走行空間としては機能的に死んでいます。

残る2本が走行車線という事になりますが、
この付近5km四方の道路網を広域的に見た場合、
千住方面と日本橋方面を南北に繋ぐ経路としては
既に国道4号という大動脈が有ります。

ピンク色に着色した路線が今回見ている都道462号

果たして都道462号にこれだけの交通容量を
持たせる必要が有るのか、そもそも疑問です。

南北方向の通過交通は国道4号に集約し、
都道462号は交通容量をグッと絞って、
沿道地域を発着する車だけを通す方が、
人間本位の街という点では望ましいですし、
自転車の通行空間も余裕を持って確保できます。


交差点の南西角から同じく南方向

道路の反対側もピクトグラムとステルスレーンによって
歩行者と自転車がぼんやりと区分されていますが、
交差点周辺ではその区分すら消失します。
非常に投げやりな、思考停止の設計ですね。
少しはオランダの設計ノウハウを学んでほしい所です。



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視覚的分離は空間の無駄遣い

この付近は歩行者があまり多くありません。
これだけの幅が確保されているなら、
もっとスマートに歩行者と自転車を分離できているはずです。
そうなっていないのは構造がマズいからです。


ライフ浅草店付近

同じ462号でも花やしき付近まで北上すると
歩行者はかなり多くなります。


買い物客が停めた自転車で狭くなっている歩道

ライフの駐輪場は建物の南側にも有りますが、
建物入り口から離れている上、収容台数も足りないようです。


このような環境では視覚的分離は完全に無意味

スーパーマーケットのような大型店舗は
往々にして自転車通行空間の阻害要因になりがちです。
山手通りで言えば、マルエツ池袋店やオリンピック中落合店、
スーパーみらべる中井店がまさにそれです。

スーパーみらべる中井店

店先は歩行者が多く、自転車を駐輪スペースに出し入れする買い物客もいるので、
およそ幹線通りに相応しくない、錯綜とした通行空間になっています。
と言うか、もはや「通行空間」ではありません。
すぐ横の車道空間のクリアっぷりとはエラい違いです。

駐輪禁止の張り紙

写真では買い物客の自転車は植樹帯の切れ目に収まっていますが、
混雑時は自転車通行指定部分を浸食する事も有ります。

また、植樹帯の切れ目というのも元々は
スーパーの荷卸しトラックの為に設けられたもので、
駐輪場として意図された空間ではありません。

道路設計者の頭から如何に自転車が抜け落ちているかを
如実に語る現実ですね。

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一方、店の入り口を敢えて裏道側に開け、
買い物客の自転車が幹線通りの歩道を塞がないようにしている
希有な事例が、ライフ東中野店です。

(本題とは関係ないですが、自転車の通行位置が、
車道、自転車通行指定部分、歩行者部分とバラバラですね。)

(なぜこれだけ幅を確保しておいて自転車道が作れないとか言うのか)

ライフ東中野店

このとおり、山手通り側の歩道は完全にクリアです。
スーパーの入り口が山手通り側ではなく、
裏道の東中野銀座通り側に開いているからです。

ライフ東中野店の設計者、超グッジョブ!

この事例から得られる教訓は、
  • 幹線道路は through traffic に特化すべし
  • 幹線道路に面して店を構える事を規制すべし
  • 商業活動は幹線道路に囲まれた内側のエリアで発展させるべし
といった辺りでしょうか。

これは、歴史的に城郭都市から発展した
ヨーロッパの中心市街では当たり前にできている事ですが、
アメリカ型の車中心主義に染まり切っている日本では
中々出てこない発想かもしれませんね。


オランダ、セルトーフンボスの中心市街
(Google Maps を加工)

川で三角形に囲まれた空間が
丸ごと30km/hゾーンに指定されており、
通過交通が排除されています。

この三角形が街の賑わいの中心で、
車の脅威を心配する事なく、
安心して買い物や街歩きを楽しめます。

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