2013年3月8日金曜日

道路空間の私物化の伝統

下町の住宅街では民家の前の道路に
植木鉢が並んでいる光景が見られます。

また、下町に限らず、通り沿いの小さな商店は
店先に路上駐車して荷捌きをする場合が多く見られます。

バイク販売店では商品のバイクを
店先の歩道上や車道上に陳列する例が見られます。

公共の道路であっても私的空間のように使う
この種の価値観は、平安時代まで遡れるかもしれません。




『ものと人間の文化史160 牛車』 櫻井良昭 2012 法政大学出版局
p.132
高貴な人の居所や邸宅の近辺を通過するときの儀礼について、
平安時代に話題になったことがある。邸宅の門前は公道の一部ではあっても、
居住者の支配がおよぶ領域だと考えられていた。だから、大臣の地位にあっても、
他の大臣の門前を牛車に乗ったまま通ることは無礼であるとされた。

どうしても通らねばならないときは、下りて行ったり、裏築地の外を
迂回して通ることが慣例になっていた。これに反した場合には、
制裁が加えられたり、騒動に発展することもあった。

心理的な縄張りが公共空間に滲出しているようですね。

現代に翻ると、横断歩道直近での違法駐車の中には、
「そこが自分の店の正面だから」という例も有ります。
自分の縄張りの中だからという驕りが有るのかもしれません。


また、車道に自転車レーンを設置する機運が高まると、
「荷捌きが大変になるから」
と反対する商店主が決まって出てきますが、
これも公共の道路での荷捌きに対して
心理的な抵抗が薄いからかもしれません。

安全上望ましいのは、各商店が自前の土地に
荷捌き用の駐車スペースを用意して、
車道は常にクリアしておく事だと思うのですが、

車の利便性の対価として、
そうした負担を引き受けるつもりは無いようです。