2013年3月11日月曜日

国交省の自転車ガイドラインの感想 pp.61-62 交差点設計の指針

国土交通省が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)
を読みました。

問題点が無いか1ページずつ見ていきます。



以下、ページ番号はPDFファイル上の番号基準です。
紙面のノンブルとは一致していません。


p.61
交差点部において歩行者、自転車、自動車の適切な分離、
共存を図るため、交差点部の分離形態について、
前後の自転車通行空間と同様の形態をできる限り
連続的に確保すべきであり、安易に自転車通行空間を
自転車歩行者道へ接続しないことを基本とするものとする。

p.61
自転車の安全性、快適性を向上させるため、
自転車動線の直進性を重視し、一方通行の自転車道、
自転車専用通行帯のいずれの場合も、自動車と同じ方向に
通行する自転車の交差点部における自転車通行空間は、
直線的に接続することを基本とするものとする。

p.61
交差点における自転車の安全な通行を促すとともに、
自動車利用者等に自転車動線を知らせるため、
自転車の通行位置及び通行方向を明確化する
路面表示を設置するものとする。

p.61
自動車から自転車を確認しやすくし、左折巻き込み事故を
防止するため、交差点流入部において、自転車専用信号の
設置により自動車とは別の信号制御を行うことを検討するものとする。

なお、自転車専用通行帯の場合には、自動車の進路変更
禁止規制を実施して自転車と自動車を分離するものとする。
また、自転車の停止位置を自動車よりも前出しすることを
検討するものとする。

お前は本当に国交省か!?

このページは驚嘆すべき質の高さですね。唸りました。
さすが、事故件数の多い交差点だけあって
蓄積された知見が存分に活かされているようです。

ただ、進路変更禁止(黄色い区分線)だけでは、

現実にはこうなるという事をお忘れなく。


p.62
左折巻き込み事故の防止対策として、交差点流入部において、
自転車専用通行帯の交通規制を解除した車道左側部の車線内に
自転車の通行位置を明確化した路面表示等を設置した上で、
自転車と左折する自動車を混在させて一列で通行させることも
検討するものとする。

これは理論的には上手くいく筈で、私も実践していますが、
実際に応用するとなると幾つか問題点が出てくるかもしれません:

  • 左折専用レーンで左折のみ青信号が先に出る。
  • 第一、第二通行帯がともに左折専用レーン。
  • 第一通行帯が左折専用、第二通行帯が左折・直進兼用レーンだが、
    実質的な車の流れは両車線とも左折が多数(=隠れW左折レーン)。
  • 立体交差点で、地平部分は右折と左折しかできない。
  • 立体交差店で、直進車の為の青時間が極端に短い。

道路側の問題としてはこんなところですかね。
これに関しては個人的に多数の例を収集しています。

交差点の設計ミス(1)
交差点の設計ミス(2)
交差点の設計ミス(3)
交差点の設計ミス(4)
交差点の設計ミス(5)
交差点の設計ミス(6)
交差点の設計ミス(7)
交差点の設計ミス(8)


それから人的な面では、自転車に前方を塞がれる事に
我慢ができず、煽り運転をするドライバー。

特に自転車は後方から見ると視覚的に小さいので
錯覚によって遠く見え、後続車に車間距離を詰められてしまいがちです。

対策として考えられるのは、

  • 公道を走行する全車に車間距離センサーを標準装備させ、
    他の車両に一定距離以下には絶対に近づけないようにする。
  • 煽り特性を持つ人、ストレス耐性に劣る人には免許を与えない。

辺りでしょうか。


p.62
交差点内の通行方法の明確化のために設置した
路面表示と歩車道境界の縁石で囲まれた範囲は、
自転車が二段階右折する際の交差点内での滞留スペース
となることを周知するものとする。

また、必要に応じて、歩道を切り込むことにより、
交差点内に二段階右折時の自転車の滞留スペースを
確保するものとする。

滞留スペースは、ハッキリとそれと分かる形で設置しないと
簡単に車に侵入されてしまいます。
自転車レーン設置工事中の交差点でその好例が見られました。

交差点内の青い矢印(2013年3月6日)
千石一丁目交差点の続報(2013年3月7日)










p.62
右折レーン等により自転車道または自転車専用通行帯の
確保に困難が生じる場合は、下記の順序に従い、
空間確保することを検討するものとする。

(1) 交差点流入部の車線幅員及び中央帯幅員について
再検討を行い、各車線幅員や中央帯幅員の縮小もしくは
右折車線相当のふくらみを持たせた右折ポケットへの
変更等を行うことにより、自転車通行空間の幅員を確保する。

なお、右折ポケットへ変更する場合は、右折専用の信号現示を
用いることができなくなる可能性があることに留意が必要である。
また、右折レーン等の必要性を再検討し、地域や道路利用者の
合意が得られる場合は、右折禁止の規制を行い、右折レーンを廃止し、
自転車通行空間の幅員を確保することも考えられる。

(2) 歩道幅員を縮小しても歩行者の交通への影響が小さい場合には、
歩道幅員を縮減して自転車通行空間の幅員を確保する。

(3) 右折レーンや歩道の幅員を変更することができない場合は、
用地買収等により自転車通行空間の幅員を連続的に
確保することに努めるとともに、当面の措置として、
車道上に通行位置及び通行方向を明確化する路面表示を設置し、
車道上で自転車と自動車を混在させて一列で通行させることを検討する。

右折禁止はかなり画期的ですね。道路が碁盤の目のように
整備されている地区では充分現実的な案です。
香港ではこの規制が大量に見られました。

(引用中、丸付き数字は括弧と数字の組み合わせで置き換えました。)


p.62
左折可の交通規制や分離帯による左折導流路のある交差点では、
直進する自転車と左折する自動車の交錯を防ぐため、
道路や交通の状況に応じて、

  • 左折導流路や左折可の交通規制、信号制御の見直し、
  • 道路空間の再配分等による車道左側部への自転車通行空間の確保、
  • 交差点内における自転車通行位置の明示

等の安全対策を検討するものとする。
安全対策が困難な場合は、当該交差点の前後については
自転車ネットワーク路線とせず、代替路を検討するものとする。

これもまた大いに評価できます。
車の円滑な流れを最優先する思想からの転換ですね。
あとはY字分岐で自転車を直線的に通せるかどうか。

(引用中、対策の列挙部分は読みやすくする為に
箇条書き形式に変更しました。)

2013年3月12日修正
箇条書きの改行位置が誤っていたので直しました。