2014年9月13日土曜日

新宿と外苑の路上駐車行動


東京都では交差点の周辺の路面を赤く塗って
駐停車しないように促す政策が実施されています。
ただ、現実には必ずしも有効に機能していません。
何が問題なのか、新宿と外苑の実態を観察してみました。



都道430号・新宿通りの新宿二丁目交差点から見た世界堂方面

これは交差点の出口側の赤ペイントです。
片側二車線が確保されていますが、実際の所、
出口側は一車線でも車の流れを充分捌けるので、
写真の車は(自転車以外には)迷惑を掛けていません。

「他の車の迷惑にならないのに何で駐停車禁止なんだ」

とドライバーが反発するのは当然です。

(規制を気にして赤いペイントを通り過ぎた所に停める
ドライバーもいるにはいます。)



新宿二丁目交差点から北方向

これも交差点の出口側の赤ペイントです。
第1通行帯は非常に広く、“準”幹線道路なら
これだけで2車線として運用するくらいの幅です。
幾らなんでもこれでは規制に説得力が有りません。



新宿二丁目交差点と新宿御苑の中間の単路区間

この区間は現状では交通量が非常に少ないので、
そもそも走行用に片側2車線も必要有りません。
写真のように1車線が路上駐車で潰れている方が寧ろ自然に見えます。

ただ、2020年の東京オリンピックまでには
新宿高校と新宿御苑の間に地下トンネルを通して
明治通りのバイパスとして機能させる計画なので、
そうなれば状況は変わってくるでしょう。

外部サイトの関連記事
ケンプラッツ(2014年7月2日)
新宿御苑かわしバイパス開通へ、計画から半世紀

とはいえ、開通後もこの場所の路上駐車需要が無くなる訳ではないので、
赤いペイントは相変わらず機能しないだろうと予想できます。



新宿三丁目西交差点(伊勢丹側)

新宿三丁目西交差点(マルイ側) 

ここは赤いペイントは有りませんが、
パーキングメーター枠の外に路上駐車が発生しています。
横断歩道の直近なので、路上駐車しても問題無いとは言い切れません。

単に駐車枠の線を引いただけでは、
実際のドライバーの行動を制御できない事が分かります。

駐車枠とそこに車が出入りするのに必要な空間を残して
縁石やボラードで車道空間を絞り込み、
路上駐車する余裕を削る必要が有りますね。


香港の裏道の例(StreetView@22.305123, 114.1706

この裏道では路上駐車自体は認められていますが、
横断歩道の手前で縁石によって車道幅が絞り込まれ、
物理的にも心理的にも停めにくいようになっています。

一人ひとりのドライバーにモラルを期待するより、
このように物理的な制約で誘導した方が確実です。

また別の見方をするなら、新宿のような過密都市で
マイカーで来る買い物客を受け入れるのが妥当か
と疑う事もできます。

その場合、通りの入り口にID認証の電動ボラードを設置して、
配送トラックと路線バス、緊急車両以外が進入できないように
するという、全く別の手も考えられます。


神宮前一丁目交差点から東の脇道に少し入った所
(Google Maps では35.67208,139.709106

車道幅は約 9.5 m で、両端に路上駐車が連なっています。
写真には写っていませんが、奥の方には路上パーキング枠が有ります。
画面奥の右カーブ部分の沿道には駐車場も有りますが、
この地区に来る車を全て受け入れるだけの収容台数は備えていません。

ここも新宿通りと同じく、
赤いペイントの上や路上パーキング枠の外に駐停車しても
車の流れを塞き止めてしまうほどには狭くありません。

(ただし、両側に車が止まっていると走行空間の幅は
ギリギリになるので走行速度はそれなりに落ちます。
また、この区間は歩行者の横断がかなり多いので、車が死角になり、
ドライバーが歩行者を発見しにくくなるという問題も有ります。)

この道路は元々駐停車を受け入れる横断面構成だった所へ
後付けで赤いペイントをしたという構図ですね。
規制をどこに導入するかという基準が単純すぎるのかもしれません。
現場ごとの細かな事情に配慮していないように見えます。



神宮前三丁目交差点から南方向

外苑西通りからの車が交差点に流入する部分です。
赤いペイントが始まる直前にはハチ公バス(神宮の杜ルート)のバス停が有り、
一般車にとっては駐停車禁止の範囲が延長されている形です。

この交差点では南(外苑西通り)から西へ左折する車が多いので、
上の写真の場所が塞がると左折車が後続の直進車を塞き止めてしまい、
確かに渋滞が発生します。赤ペイントの意義が分かりやすい例ですね。

(外苑西通りから交差点に流入する側の車線は
  • 左折・直進レーン(実質的には左折専用レーン)
  • 直進レーン
  • 右折レーン
から構成されています。)

尤も、左折車と直進車を分離しないと流れが詰まってしまうのは、
車と同じタイミングで同方向の横断歩道も青信号になるからで、
歩車分離信号を導入すれば、少ない車線数でも捌けるかもしれません。

それなら、現状の第1通行帯は駐停車専用の空間に指定し、
残りの2車線で交通流を処理する方が合理的です。
ここでも赤ペイントは合理的とは言いがたい面が有ります。


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まとめ

東京都の道路の赤いペイントには
  • 合理性に乏しい例が有る
  • 合理性は有っても駐停車を確実に防ぐ事はできない
といった問題が有るようです。


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ただ、それよりも私が気になるのは、
道路空間で使える色には限りが有る(*)のに、
こんな半端な効果しか期待できない用途に
1色消費してしまっている点です。

* 視認性が高く、景観を害さず、他の色と混同しにくい
という条件を設定すると、路面ペイントに使える色は
赤と緑と青の3色くらいじゃないかな。

道路空間のカラー・スキームは(少なくとも一つの国の中では)
統一しておくのが望ましいですが、
東京だけが自分勝手に「赤は駐停車禁止」と決めると、
他の地域と食い違って混乱が生じかねないからです。

プログラミング用語でいう「名前の衝突」みたいなものですね。