2014年9月23日火曜日

脇道からの飛び出しを誘発する信号機

魔の青信号

佐藤宜秀さんのツイートでこんなニュースを知りました。

NHKニュース(2014年9月22日)「信号機見えなくして事故の防止を
車が細い脇道から大通りに出る際、大通りを渡る歩行者用の信号が青表示だと手前で一時停止をせずに進んでしまい、事故を起こすケースが相次いでいるとして、脇道のドライバーから歩行者用の信号機を見えなくして事故を防ごうという、全国で初めての試みが福岡市で始まりました。

あ、これと同じパターンの事故見た事あるわ。

しかも、目撃した時すぐに
「この事故の根本的な原因は人じゃなくて信号機だな」
と思って、国交省の「道の相談室」に
信号機を見えなくすべきだと提案してあったんでした。
(現在進行形で5ヶ月以上も返答無しだけど。)



私が目撃したのは山手通りの東中野二丁目交差点
自転車同士が出会い頭衝突した事故です。

山手通りの歩道から見た事故現場

こんな風に脇道から飛び出して来た自転車と衝突(イメージ)

山手通りの歩道をごく普通の速度で走って来たママチャリの目の前を、
脇道から高速で飛び出して来た自転車が横切り、
両者とも急ブレーキを掛けましたが衝突しました。

どちらも大した怪我はしていなかったようで、
そのまま現場を後にしてしまったので、
警察の事故統計にはカウントされていないはずです。


昼間撮影した同じ場所

実は以前記事にしたのと同じ場所です。


ではなぜ脇道からの自転車はあんな無謀な飛び出しをしたのか。
飛び出した自転車の視点から現場を見てみましょう。

脇道から見た衝突地点

昼間

脇道から幹線道路に飛び出す自転車の視点と動線

昼間

山手通りに出る少し手前から横断歩道の信号機が見えてしまっています。
脇道から飛び出した自転車は恐らく、青信号を見て焦り、
徐行も安全確認も省略したのでしょう。

何故そこまで慌てるのかというと、
ここの横断歩道は信号の待ち時間が長いからです。1分30秒くらい。
これは幹線道路同士の大型交差点と同じレベルの待ち時間です。

一回青信号を逃すと待ち時間MAXで待たされる。
急いでいる時にこれは痛い。

だから、ここでは横断歩道の青信号、殊に点滅している青は
強力な飛び出し誘発材料になるんです。
馬の鼻先に人参を吊るすようなものですね。

もしこの信号機の建植位置がもっと左で脇道から見えなかったら、
或いは、至近距離に来ないと見えない(*)ように遮蔽版が付いていたら、
私が目撃した衝突事故は起こらなかったでしょう。

* 例えば足立区の千住新橋北詰交差点の
歩行者用信号はルーバーが水平に並んでいるので、
信号の真正面に立っても遠くからでは見えず、
横断歩道の手前ギリギリまで来て初めて灯火が見えるようになっています。


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私が事故を目撃した時、即座に信号機を原因として疑ったのは、
細街路から見えてしまう信号機が引き起こした事故事例を、
日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会
(2009)『自転車事故過失相殺の分析』ぎょうせい pp. 401-403
で読んで知っていたからです。

日弁連(2009)p. 401 より

事故現場の Street View(2014年4月撮影)@ 35.6760711,139.5985013 より

場所は世田谷区北烏山の細い街路。
先行する72歳女性の自転車(A)が右折しようとした所へ、
後続の13歳男性の自転車(B)が
前方の青信号を見て加速してぶつかったという事故です(*)。

* 上の表現は判決に沿った言い方です。
しかし判決文に記載されている事実関係から推測すると、逆に
自転車(B)が青信号を見て加速し、
前方の自転車(A)を右側から追い越そうとした時、
自転車(A)が突然右折してきてぶつかった
とも表現できそうです。

事故現場を見たわけではないので確かな事は言えませんが、
判決が自転車(B)の行為を道交法18条1項(軽車両の左端寄り通行)
違反だと非難している点には、私は強い疑念を感じます。

なぜならこの事故状況の場合、道交法30条(追い越しを禁止する場所)
違反を指摘する方が自然に思えるからです。その場合、中学生には
30条が示す事故防止ノウハウを学ぶ機会が無いと考えられる(*)ので、
事故当事者を責めるのは不当です。

* 年齢別、交通安全教育の指導内容の例
http://www.jatras.or.jp/jitensya/jitensya.html

そうなると、18条1項違反を責めるのも不当になるはずです。

ちなみに北烏山も東中野も、事故原因と考えられる
信号機はそのまま放置されています。
フィードバック回路死んでんなー。


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東中野の事故についてはもう一つ論点が有ります。

そもそもなぜ信号の待ち時間が長いのか。

山手通りは近年の工事で地下にも車道ができました。
本来なら大容量のトラフィックは地下に移行させ、
地上の道路は低速・小容量の地区内道路に改めるのが理想です。

道路に分断されていた街が再び一体化し、騒音や排気ガスも減って
暮らしやすさが改善するからです。街を人の手に取り戻す好機でした。

だが、山手通りはそうしなかった。

地上の道路も相変わらず幹線道路として車の速度と交通容量を追求し、
歩行者や自転車の利便性は二の次にされています。

その歪みが噴出した一例が、
私の目撃した事故だったというわけです。