日本には全国に98カ所(pdf)も自転車インフラ整備のモデル地区が有るんですね。
Street View @ 36.327139,138.902518
これだけ有れば、もしかしたら中には
良い線行ってる事例も有るのかもしれませんが、
ノウハウ共有の基盤が……無い? えっ、本当に無い?
一応、各モデル地区で判明した問題点は
その後公表されたガイドラインに反映された事になっています。
参考
本田 肇、高宮 進、小林 寛、山本 彰、上坂 克己(2012)
「自転車通行環境整備モデル地区の評価と今後の展開」
ただ、国交省による調査報告、
国土交通省(2011)を見ると、問題点の拾い方が大雑把だったり、
自転車通行環境整備モデル地区の調査結果について
自治体の見当違いな対策を鵜呑みにしていたりで、
かなり勿体ない事してるなーという印象です。
例えば、インフラ整備の目的の一つに
クリーンかつエネルギー効率の高い都市内交通体系を実現するために、乗用車から自転車への転換を促進することが必要……という事を掲げている(国土交通省、2011)のに、
整備前後の交通分担率の変化には全く言及してません。
(もしかしたら、意識の高い一部のモデル地区の自治体が
自主的に調べてるかもしれないけど。)
また、整備前後での事故率の変化が書かれています(国土交通省、2011)が、
対照都市群が用意されていないので統計学的には無意味ですね。
この調査だけでは「安全になった」とも「危険になった」とも言えない。
それから、モデル地区の各自治体に整備・運用上の課題を聞き、
どのように対応したかをまとめています(国土交通省、2011)が、その中には、
問題の本質を捉えずに枝葉末節だけ見て場当たり的な対策をした例や、
インフラの問題点を棚に上げて利用者のマナーを責める例も見られます。
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じゃあオランダはどうしてるのかというと
(このブログ、最近オランダばっかりだな)、
知識や事例を共有するためにデータバンクを持っています。
例えば施工事例なら、日本でいま話題のラウンダバウトに関するものだけで
- サイクリストに優先通行権があるセミ・ターボ・ラウンダバウト
- ドラフテ(ン)の混在型ラウンダバウト
- 自転車道を備え、サイクリストに優先通行権を与えた初めてのラウンダバウト
- 双方向通行の自転車道を備えたターボ・ラウンダバウト
- 中央を路面電車が貫くラウンダバウト
- 見落としを防ぐ配置の自転車レーンを備えたラウンダバウト
- 自転車道に四角く囲まれたラウンダバウト
- 自転車用のトンネルを備えた郊外のラウンダバウト
- スパイラル型区分線とバイパスを備えた多車線ラウンダバウト
- 双方向通行の自転車道を備えた2車線ラウンダバウト
と、10事例も集められています。
注意
これらの事例は実験的なものが多く、
利便性や安全面の評価が定まっていない場合が有ります。
謂わば上級者向け。安易にコピーすべきではありません。
オランダでは各地の道路管理者が既存の構造基準に満足せず、
次々と新しいアイディアを生み出しては試行錯誤しています。
このサイトは、専門家たちがそうしたアイディアを持ち寄って
互いに刺激し合う事を趣旨としているようです。
それぞれの解説ページでは周辺地域の交通実態から
縁石・区分線などのディテール(*)まで広範に記述しています。
* 道路は人間が相手なので、ほんの些細な違いで
利用者の振る舞いが大きく変わるという難しさが有ります。
だからこそ、細部は大事、とても大事です。
そういう神が宿りそうな部分への目配りが国交省の仕事には欠けています。
日本はせっかく全国規模で展開してるのに、
問題点の洗い出しやノウハウの共有で手を抜いてて
ほんともったいない。あーもったいない。