2014年8月3日日曜日

2009年のパリの自転車環境



投稿者が1年間に亘って撮り溜めた自転車の車載動画から、
パリの自転車環境の酷さが垣間見えます。(投稿は2009年)



1分40秒からは、いま日本で導入が期待されているバス自転車共用レーン
(couloir de bus autorisés aux cyclistes)の利用実態が映し出されます。
  • 多数のモーターバイクが走っている
  • 路上駐車や荷捌きの車で塞がっている
  • 交差点の手前で右折車がどんどん入ってくる
  • 車同士の追い越しでバスレーンにはみ出す車がいる


2分35秒からは、自転車レーン(les pistes cyclables,
構造的分離と視覚的分離の両方)の映像が集められています。
  • 構造的に分離されているのに路駐車両が乗り上げて塞いでいる
  • 視覚的な分離では完全に路駐スペースと化している


3分36秒からは、交差点での自転車用の信号待ち空間
(les sas-vélos, 英語では advanced stop line, 通称 bike box)
が、車に無視されている様子が捉えられています。

 
4分1秒からは、自転車を除く一方通行規制の道路で、
自転車の安全や通行空間が碌に確保されていない事が分かります。


4分25秒からは、車のドライバーや同乗者たちが
自転車に全く気付かずにドアを突然開けている事例が
次々に提示されます。


4分39秒からは、自転車を追い越す際の側方間隔が、
法律では「最低でも1.0 m(市街地の場合。郊外では 1.5 m)」
と定められているのに、現実には守られていないと糾弾しています。


5分56秒の写真は衝撃的ですね。制限 70 km/h の道路で
PARTAGEONS LA ROUTE
(Share the road, 道路を分かち合いましょう)
首都高に自転車を走らせるようなもんですね。
しかも路面を見ても自転車レーンの類いは皆無。
インフラもここまで来ると「非人道的」と言っても良いです。
6分5秒にフランス内務省のウェブページの文言
Ne vous faites pas déséquilibrer par l'appel d'air
provoqué par le passage d'un camion.
(トラックの通過によって発生する気圧低下で
バランスを崩さないようにしましょう。)
が出ますが、だったら 70 km/h の道路で空間を共有させんなや!


6分9秒からは、交差点で右折する車や単路で自転車を追い越す車が
自転車を見落とし、衝突リスクが生じている事が説明されています。
自転車が如何に車の死角に入ってしまっているか、
3D CG による図解が逸品ですね。


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日本では欧州各国がどこも自転車先進国であるかのように
漠然と思われがちですが、上の動画を見る限りそんな事は無い。
少なくとも2009年の時点では、日本以下の劣悪な状況も見られます。

これは安易に真似るべきではないでしょう。

特に、国道246号の三軒茶屋〜駒沢間に
バス自転車共用レーンを導入しようとしている人たちには、
パリの現実を冷静に観察して欲しいですね。
観念的な理想だけ追い求めて導入しても失敗するよ?
道路工学は動物行動学。
ヒトという動物がさまざまな環境下でどう振る舞うのか、
先行する成功事例/失敗事例から学び取るべきです。