投稿者が1年間に亘って撮り溜めた自転車の車載動画から、
パリの自転車環境の酷さが垣間見えます。(投稿は2009年)
1分40秒からは、いま日本で導入が期待されているバス自転車共用レーン
(couloir de bus autorisés aux cyclistes)の利用実態が映し出されます。
- 多数のモーターバイクが走っている
- 路上駐車や荷捌きの車で塞がっている
- 交差点の手前で右折車がどんどん入ってくる
- 車同士の追い越しでバスレーンにはみ出す車がいる
2分35秒からは、自転車レーン(les pistes cyclables,
構造的分離と視覚的分離の両方)の映像が集められています。
- 構造的に分離されているのに路駐車両が乗り上げて塞いでいる
- 視覚的な分離では完全に路駐スペースと化している
3分36秒からは、交差点での自転車用の信号待ち空間
(les sas-vélos, 英語では advanced stop line, 通称 bike box)
が、車に無視されている様子が捉えられています。
4分1秒からは、自転車を除く一方通行規制の道路で、
自転車の安全や通行空間が碌に確保されていない事が分かります。
4分25秒からは、車のドライバーや同乗者たちが
自転車に全く気付かずにドアを突然開けている事例が
次々に提示されます。
4分39秒からは、自転車を追い越す際の側方間隔が、
法律では「最低でも1.0 m(市街地の場合。郊外では 1.5 m)」
と定められているのに、現実には守られていないと糾弾しています。
5分56秒の写真は衝撃的ですね。制限 70 km/h の道路で
PARTAGEONS LA ROUTE首都高に自転車を走らせるようなもんですね。
(Share the road, 道路を分かち合いましょう)
しかも路面を見ても自転車レーンの類いは皆無。
インフラもここまで来ると「非人道的」と言っても良いです。
6分5秒にフランス内務省のウェブページの文言
Ne vous faites pas déséquilibrer par l'appel d'airが出ますが、だったら 70 km/h の道路で空間を共有させんなや!
provoqué par le passage d'un camion.
(トラックの通過によって発生する気圧低下で
バランスを崩さないようにしましょう。)
6分9秒からは、交差点で右折する車や単路で自転車を追い越す車が
自転車を見落とし、衝突リスクが生じている事が説明されています。
自転車が如何に車の死角に入ってしまっているか、
3D CG による図解が逸品ですね。
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日本では欧州各国がどこも自転車先進国であるかのように
漠然と思われがちですが、上の動画を見る限りそんな事は無い。
少なくとも2009年の時点では、日本以下の劣悪な状況も見られます。
これは安易に真似るべきではないでしょう。
特に、国道246号の三軒茶屋〜駒沢間に
バス自転車共用レーンを導入しようとしている人たちには、
パリの現実を冷静に観察して欲しいですね。
観念的な理想だけ追い求めて導入しても失敗するよ?
道路工学は動物行動学。ヒトという動物がさまざまな環境下でどう振る舞うのか、
先行する成功事例/失敗事例から学び取るべきです。