「ロード」プライシング
と言われると、ついつい車道上にセンサーとかゲートを設置して
走行車両に課金する図を思い描いてしまいがちですが、
別に、走っている所を捕まえて料金を取る必然性は有りません。
クルマ利用のいずれかの段階で金銭負担が発生すれば良いわけです。
それなら、
- 駐車場を保有している事業者
- 車庫付き物件の家の住人
- 駐車場を利用する買い物客やマイカー通勤者
費用負担を嫌ってドライバーが車の利用や保有を控えたり、
事業者が駐車場を廃止したりすれば成功です。
(東京は富裕層が多いらしいので、
単に駐車料金が上がるだけでは不充分かもしれません。
街として、車の受け入れ可能台数そのものを減らす必要が有るでしょう。
椅子取りゲームの椅子を減らすイメージ。)
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従来の発想のゲート方式は、東京という巨大で過密な都市では
うまく機能しないのではないかと思います。
例えば環七通りから内側を課金エリアにするとします。
この場合、郊外から都心部に入ってくる車は減らせますが、
環七の内側にもマイカーを持っている世帯は大量に存在します。
(少なくとも数十万世帯は有りそうですね。)
東京都区部の自動車保有動向
http://www.jterc.or.jp/kenkyusyo/product/tpsr/bn/pdf/no11-14.pdf
都道府県データランキング——自家用車普及台数
http://uub.jp/pdr/t/cr.html
彼らがちょっとした移動でも徒歩や自転車や鉄道を使わず
車を出しているとすれば、環七に防衛線を築くだけでは不充分です。
敵は壁の内側にもいるんだから。
それなら、ありとあらゆる発着点を一網打尽に押さえた方が
遥かに大きな効果が期待できるでしょう。
実際、原付は駐車規制の強化で減りましたし。
2014年8月30日追記
{
ん? 違うな。駐車規制だけだと都心を通過する車両が
課金の網に引っ掛からない。両方の対策の組み合わせが必要ですね。
}
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駐車場に課税する方式にも幾つか穴が有ると考えられます。
例えば都心部から商業施設が逃げて
郊外で巨大なショッピングモールが繁盛する可能性。
幾ら都心の空気が綺麗になっても地球規模で見れば
温暖化ガスの排出が続いている事に変わりはないので、
出店規制が必要ですね。
(アウトレットを積極展開している三井不動産は、
地球環境や人間社会の持続性という観点からは
社会的に無責任な企業と言えます。)
それから路上駐車が激増して道路の機能が麻痺する可能性。
現状でも駐車違反の取り締まりは為されていますが、
それが追い付かなくなるかもしれません。
ただ、この問題の根源は、路上駐車に対して
曖昧な態度を取っている既存の道路構造に有ります。
例
- 両方向合計で二車線なのに車道の幅員が 10 m も有る道路
- 車両“通行”帯なのに実質的に停車帯に成り下がっている左端の車線
対策として、道路空間を
- 走行空間
- 駐車空間
路上駐車が物理的に出来ない構造に改めるべきです。
駐車空間と走行空間の区別を構造で明示した例
駐車空間は舗装の材質からして違う。左右の赤い帯は自転車道。
オランダ・セルトーフンボス (Bosscheweg, 's-Hertogenbosch, Nederlands)
駐車空間は舗装の材質からして違う。左右の赤い帯は自転車道。
オランダ・セルトーフンボス (Bosscheweg, 's-Hertogenbosch, Nederlands)
さらに言えば、交通流を最優先すべき幹線道路沿いに、
乗降や荷捌きなどの駐停車需要を発生させる施設が
立地しているのも問題です。
要するに、街の構造自体が間違ってます。
現代の東京の道路と街のシステムは、街道沿いに街が発展する
江戸時代のモデルをそのままダラダラと引き摺ってますが、
これは幹線道路に
- 走行需要
- 停車需要
一方、ヨーロッパ型の城壁都市では、
買い物などの日々の営みは城壁の内側にまとめ、
幹線道路はそれを取り囲むだけで内部には通していません。
この方がクルマ依存からの脱却には好都合です。
そう考えると、単なる駐車場課税だけでは芸が無いですね。
幹線道路沿いに立地して駐停車需要を発生させようとする
事業者や住民に対しては特に重い税を課して、
税の力で街の構造そのものを変容させられれば尚良いでしょう。
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ロードプライシング政策について、東京都から文書が出ています。
http://www.kankyo.metro.tokyo.jp/vehicle/attachement/road-pricing-brief.pdf
マイカー抑制を謳うのは良いんですが、
自転車利用の推進には一言も触れてないですね。
クルマを減らした分、車道空間の一部を
自転車道に転換する余裕が生まれるのに、
その可能性には全く目もくれず
鉄道やバス……の混雑が増す可能性がある(pdf p.6)
とか暢気な事を言ってやがる。
誰もが日常生活の中で習慣的に運動する機会を持てるように、
社会インフラの側から自転車通勤とかを推進していかないと、
いずれ医療財政が崩壊するよ?
ジムに通い続けられる、
意志力の強い人間ばかりじゃないんだから。