オランダ、ユトレヒトの Amsterdamsestraatweg の車載動画
横道との交差部分では、自転車道の路面が段差無く同一平面で連続しています。
また、自転車側に明確な優先通行権が与えられています。
「じてんしゃとまれ」などというクルマ中心の標示は有りません。
歩道はブロック敷ですが、自転車道は滑らかなアスファルト舗装ですね。
乗り心地が良くなるだけでなく、駆動ロスが減って楽に漕げます。
車道との間の緩衝帯には、
- 路上駐車枠
- 駐輪ラック
- 車道を横断する自転車の為の滞留スペース
- バス停
これらの障害物に邪魔されないようになっています。
自転車道は道の両側に有り、それぞれ一方通行ですが、
時々逆走自転車が見られますね。これもオランダの現実です。
自転車道の幅は 2 m くらいです。
他の自転車を追い越す場面ではちょっと狭く見えます。
CROW の Design manual for bicycle traffic が示す基準(p.175)に拠れば、
これは一方通行の自転車道としては最低水準(*)です。
* 2.00 m という幅は、ラッシュ時1時間当たりに一方向に通る
自転車の台数が 0〜150 台の場合に適用される値です。
日本のガイドラインや道路構造令が示す「双方向通行で 2.00 m」
は明らかに狭過ぎで、オランダの基準では認められません。
車道に目を向けると、路駐枠が別に確保してある事で、
走行空間が走行空間としてフルに機能していますね。
これと比べると日本の道路構造は空間を無駄にし過ぎです。
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上の映像を見て、どう思いましたか?
今の日本にはとても手が届かない、
果てしなく遠い目標に見えますか?
意外と浅草通りの現状と近いですよね。
これならちょっとの改良でサクッと追い付けそうです。
日本でこれが作れないのは単に、
「適切なインフラとはどういうものか」という知識が無いからではないでしょうか?
過去の関連記事
浅草通りの自転車歩行者道 (1)
車載動画には続きが有ります。
こちらは自転車道までブロック敷でカメラにガタガタ振動が来てますね。
横道との交差部分でも自転車道の舗装が連続していません。
また、最初に映っている大きな交差点は事故多発地点で、
このビデオの撮影後に最新の知見を反映した構造に改修されています。
後編は全体的に、真似してはいけない見本が多いです。
ただ、そんな中にも 5分30秒付近で映る作業中の工事車両が
自転車道ではなく車道を塞いでいる光景は見事ですね。
オランダでは道路工事などの場合でも自転車の移動性を
損なわないように最大限の配慮が為されます。
これは現場の判断で気まぐれに為されるものではありません。
工事の際の迂回路をどう確保するかなどについて
事細かな基準が有り、それに従って行なわれるものです。
CROW の Design manual for bicycle traffic も、
工事や積雪時の対策についてわざわざ節を設けて
解説しています(pp.373-378)。
これは同じ道路を冬に撮影したものですね。
歩道には雪が積もっていますが、自転車道は綺麗に除雪されています。
CROW の上記マニュアル(p.377)に拠れば、
夜のうちに凍結防止剤(塩)を撒いておくようです。
動画の自転車道はユトレヒトの自転車ネットワークの中でも
主要路線なので、優先的に雪対策が為されているのでしょう。
同じ道路を逆方向から走った動画も有りました。
投稿者による解説にもあるように、やはり自転車道は 2 m 幅のようです。
並走自転車(オランダでは合法)を追い越す場面では
かなり難儀していますね。
浅草通りは Amsterdamsestraatweg よりずっと道路空間が広いので、
これよりもっと恵まれた自転車走行環境が実現できるはずです。
ロードプライシング+ロードダイエットの合わせ技で
道路の両側にそれぞれ 4 m 幅の自転車道を作れるかもしれません。