2014年8月28日木曜日

自転車用の立体交差は橋よりトンネルが断然良い

車の交通量が多い道路や鉄道の線路は
自転車の自由で迅速な移動を妨げるので、
信号による平面交差ではなく立体交差で処理するのが理想です。

その場合、橋とトンネルではどちらが良いでしょうか?

断然トンネルです。

理由は3つ有ります。



1 登り坂をクリアしやすい 

トンネルの場合は入り口の下り坂で付いたスピードで
そのまま出口の登り坂を乗り越えられます。
逆に、登り坂から始まる橋の場合はかなり緩い勾配で建設しないと、
脚力の弱い人に押し歩きを強いる事になります。
(掘割構造の道路や鉄道に橋を架ける場合は別ですが。)

但し、幾らトンネルが良いと言っても、その利点を活かすには
自転車が安全にスピードを出せる道路構造にしておく事が必要です。
日本で良く見られる、
  • アンダーパス内の狭い通路で自転車と歩行者を混在させる
  • スロープの途中に柵を設置して強制的にスピードを落とさせる
  • 下り坂を下り切った所で通路を直角に折る
などの処置は御法度です。

建設コストをケチる事ばかり優先して利用者に不便を強いるインフラは、
結局あまり使われなくなるか、事故が多発するかのどちらかです。
"You get what you pay for" って事です。



2 高低差が小さくて済む

道路にも線路にも、
それより内側には一切構造物を設けてはならない
という構造基準が有ります。これを建築限界と言います。

車道や線路は走行する車両が大型で、高さ方向にも建築限界が大きいので、
その上に自転車道の橋を架ける場合は大きな高低差を付けなければいけません。
一方、自転車道は自転車に乗った人の高さだけ考慮すれば良いので、
建築限界の高さは(日本の現行の道路構造令の場合)僅か 2.5 m です。

参考
http://www.mlit.go.jp/road/sign/pdf/kouzourei_2-3.pdf
p.46 (pdf p.6)

車道や線路の上空に自転車道を渡すより
下を潜らせた方が遥かに小さな高低差で交差させられるので、
  • 坂を短く/緩くできるのでサイクリストの負担が軽い
  • スロープが短くて済むので省スペースで建設できる
という利点が有ります。

尤も、自転車にとってはそもそも坂など一切無い方が良いので、
交通量の多い道路や運行本数の多い鉄道は高架や地下、掘割にして、
自転車が平面で移動できるようにするのが理想ですが。



3 風を防げる

上り勾配に向かい風が加わるとペダルはかなり重くなります。
坂で速度が落ちている時に受ける横風も厄介ですね。
つまり、強い風を受ける地点では自転車道の坂は
普通より緩い勾配で造らなければならないという事です。

オランダの専門機関、CROW が発行している
Design manual for bicycle traffic でも、
登り坂の勾配率を決定する上で
  • 坂の高低差(坂の長さ)
  • サイクリストの体力
  • 風の条件
の3要因を考慮するよう勧めています(p.52)。

トンネル内は風の影響を受けないので、
設計者視点でも利用者視点でも橋より有利です。


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外部ブログの関連記事
Why tunnels are better than bridges for cycling
Cyclists in the Netherlands use tunnels and underpasses far more often than bridges. There are very good reasons for this ...

オランダのサイクリストは橋よりもトンネルやアンダーパスを遥かに頻繁に通る。それには大きく頷ける理由が幾つか有る……
単にサイクリストがトンネルを選んでいるという話ではありません。
オランダでは橋よりもトンネルの方がずっと数が多い、
という書き出しから始まる記事です。


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今回の記事で紹介した視点はどれも
CROW の Design manual に教えられたものです。
私はこの本を読むまで、例えば

トンネルの方が登り坂をクリアしやすい

という、考えてみれば当たり前の事にさえ全く気付いていませんでした。
初めてその小さなコラムを読んだ時はまさに目が覚めるような思い。

それもこれも、私が今まで日本の道路インフラに
どっぷり浸かって生きてきたからでしょう。
この国は自転車には平然と不便を強いますからね。
いやー、単一文化に染まった認識ってのは怖い。

つまりだ、

もう一回、蘭学やろーぜ!

って事です。200年ぶりにね!