2014年10月28日火曜日

パーキングメーター (3) 高円寺南

今度は前回と同じく杉並区から、都道318号
(高円寺駅から南に延びる幹線道路)のパーキングメーターを見ていきます。

路駐車両がいなければ難なく走れるが、

やはり自転車の走行空間とは言えない。

この路線は少し特殊な事情が有るので、
単純にパーキングメーターを自転車道に転換、
というわけには行きません。その辺の事情は記事の最後で触れます。



商店や事務所が立ち並ぶ区間。駐停車需要は多い。

全ての車がこの沿道に用事が有って駐車しているのかは分かりません。
また、全てのドライバーが、その移動を(自転車ではなく)
車で行なわなければ目的を達成し得ないのかどうかも分かりません。


車道の幅員は約11m


ドアゾーンも考慮すれば、自転車は車の走行空間に入らなければならない。

ちなみに私は、ちょうど写真の自転車が走っている地点で
後続車に危険な追い越しをされた事が有ります。
 
自転車がドアゾーンを避けているのだと理解できなかったドライバーが、
進路妨害されていると誤解してブチ切れたのかもしれません。


駐車枠外に停まった車

同じ道路の五日市街道入り口交差点手前です。
信号待機車列が形成されるスペースですが、
路上駐車が発生しています。

車道の中で駐停車用のスペースと走行用のスペースを
明確に区別してこなかった日本の道路構造が招いた問題ですね。


ドアゾーンの実演をしてくれました(笑)

車体幅の半分くらいを見積もっておけば
ドアにぶつからずに横を通過できそうです。


歩道は狭く、これ以上縮小できない。

植栽を撤去すれば、人が使える空間が1mくらい広がりますが、
この道路はちょっと特殊な事情が有るので、
歩道をこれ以上狭めるのは得策ではありません。

自転車の通行空間は現状の車道空間をやり繰りして捻出すべきです。
(2014年の夏に改修工事が終わったばかりで当分は予算も出ないでしょうし。)


現状、自転車には走る場所も停める場所も与えられていません。
道路全体をパッケージとして見ると、自転車抑圧・クルマ推進の姿勢が鮮明です。


ちなみに脇道に入ると tokyobike shop 高円寺が有り、

街中でもおしゃれな自転車をよく見掛けます。


さて、高円寺南の問題点をまとめると、
若者文化の街であり、潜在的な自転車利用者は多いと考えられるが、
幹線道路である都道318号では車と自転車が空間を共有できない
(サイクリストの恐怖とドライバーのストレスを生む)のに、
自転車専用の通行空間が確保されていない。
しかし一方で車の駐車空間は豊富に提供されている。
という事ですね。
設計上の優先順位が倒錯しています。


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では、どんな空間配分にすれば良いのか。
自転車の安心・安全な通行空間の確保を最優先に考えてみます。

最初に整備形態ですが、駐停車需要が有る区間なので、
ペイントしただけの自転車レーンは却下です。
路駐に塞がれないように、何らかの構造的分離が必要です。

次に幅員ですが、この近辺ではママチャリだけでなくクロスバイクも
よく見掛けるので、自転車同士での追い越しが度々発生すると考えられます。
この時、自転車道の幅員が狭すぎると、追い越しできない不満から、
速いクロスバイクは車道を走ってしまう可能性が高いです。
(この行動は山手通りや三鷹市のかえで通りで観察できます。)

自転車道には、不安を感じずに他の自転車を追い越せる幅員が必要でしょう。
となると一方通行でも 2.5 mくらいが最低水準ですね。

分離工作物の幅も考えると、残る車道空間は 5〜6 m なので、
考えられる選択肢は、
  1. 駐車空間 + 走行空間(一方向のみ)
  2. 走行空間(両方向)
このどちらかです。
ドライバーにとって安全でストレスが少ないのは前者でしょう。


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以上の条件で車道空間を再配分すると、例えばこうなります。

自転車道 + ボラード + 駐車帯 + 走行車線 + ボラード + 自転車道
2.4 + 0.3 + 2.5 + 3.1 + 0.3 + 2.4 m
Streetmix で作図)

車道はもはや幹線道路とは言えない規模に縮小されました。
これが、「道路を人の手に取り戻す」という言葉の意味です。

車は一方向にしか走れなくなりますが、
この道路から 470 m ほど東を環七が並行して走っているので、
車での南北方向の移動が不可能になるわけではありません。
但し、遠回りは余儀無くされます。

しかし、それによって自転車の移動手段としての
優位性(所要時間の短さ)が相対的に高まるので、
モーダルシフト促進策としては効果的です。


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最後にこの道路の特殊事情を説明します。

この道路は年に一度封鎖されて、

車の通行を遮断し、

阿波踊り大会が開催されます!

歩道は見物客で大混雑し、通行が困難になる箇所も。

車道の両端の駐車枠部分も観覧スペースになります。

特別観覧席が設営される場所も有ります。

各地から「連」が集まって、

複雑なステップを踏んだり、

足元が見えないほど大きな太鼓を抱えて行進したりするので、

祭りの時は、自転車道も含めた車道の路面全体から
凹凸を無くす必要が有ります。

従って、車道と自転車道の分離構造物は地面に固定される物は不可で、
祭りの時だけ取り外して沿道に一時保管できる事が必須条件です。

ちなみにロンドンの新しい構造分離型の自転車道も、
大規模な行事の時の為に、一部区間では
分離構造物を取り外せる仕様で計画されています。

Transport for London
Have your say on a new segregated East-West Cycle Superhighway through central London

Overview of proposed road layout changes
// 中略
The segregation would be removable in certain areas for ceremonial and state occasions and other major events

ロンドンと高円寺が繋がった!



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