都道437号・不忍通り(目白台二丁目〜護国寺西)
第1通行帯がガラ空き
この道路はデッドスペースが多すぎやしませんかね?
まずはパーキングメーター周りの利用実態を見ていきます。
はみ出し駐車
反対車線にも駐車枠の外に停められた車が何台か見られます。
料金徴収機(60分300円)
駐車に金が掛かる仕組みは
外部不経済をドライバーに戻す良い仕組みですが、
駐車枠以外の場所にも物理的には駐車可能で、
ドライバーの善意頼みになってしまっています。
客の乗降とは関係無く高速バスが停まっている光景も良く見掛けます。
回送中に休憩しているようです。
回送中に休憩しているようです。
日が傾くと駐車枠の空きは一気に増える。
どうやらこの区間のパーキングメーターは
車に乗ったまま昼休みをとるドライバーの利用が多いようです。
運転席を覗き込むと、
- カップ麺を啜る人あり
- シートを倒して熟睡する人あり
- マンガを読む人あり
- スマートフォンをチェックする人あり
本当にここにパーキングメーターが必要なのかどうか疑問です。
2014年11月2日追記
{
ドライバーの昼休み用の駐車空間が、
どこでも良いが、どこかには無ければならないと仮定します。この場合は道路の片側にだけ
(そして、沿道の駐車場だけではその需要に応えきれず、
道路空間の一部を駐車用に割く必要が有る)
パーキングメーターを設けるという選択肢も有り得ます。
実際、明治通りの神宮前一丁目〜千駄ヶ谷三丁目の区間は
西側車線にだけパーキングメーターが設けられています。
不忍通りのこの区間の場合、走行空間を片側1車線ずつに減らし、
片側のパーキングメーターも廃止すれば、道路の両側に
4 m 強(緩衝帯込み)の自転車道を整備する余裕が生まれます。
}
一方、
歩道は非常に狭い。
車が怖いからといって自転車が歩道を走れば、
沿道の建物から人が出てきた時に簡単に出会い頭衝突してしまいます。
上から見た歩道。植栽を除いた幅はやっと2m有るかどうか。
歩道橋の横は歩行者でも一人通るのがやっと。
雨の日は傘が塀に引っ掛かりそうな狭さですね。
雨の日は傘が塀に引っ掛かりそうな狭さですね。
横断歩道の前後でも車道幅(約 17 m)はそのまま
横断歩道の周辺で車道の幅員を絞り込めば、
- 死角を生む危険な路上駐車が物理的に不可能になる
- 歩行者の横断距離が短くなる
- 横断歩道の青時間を短縮でき、車の赤信号を短くできる
そういった設計上の配慮は全く見られません。
細街路との接続点の周辺も同様で、
脇道から出て来たドライバーの視界を遮る位置に
路上駐車が発生するかどうかは
完全にドライバーのモラル任せになっています。
2本の通行帯にバラけて走る車
路上駐車が大量に発生している道路では、
普通、車の流れは第2通行帯に集中します。
第1通行帯は車の陰から人が飛び出すかもしれず、危険だからです。
しかし、写真の区間の護国寺方面行き車線では
車の流れが2本の通行帯に分散しています。
通行量は決して多くなく、1本の通行帯に収まりそうなものですが、
なぜこうなるのでしょうか?
車の流れを追って護国寺西交差点まで来ると、それぞれの通行帯は
千駄木・池袋方面行き車線と首都高・護国寺(江戸川橋)方面行き車線になります。
どちらに向かう車も多い。
つまり、単路区間で車の流れが2本の通行帯に分散してしまうのは、
ドライバーがこの交差点の方面別レーンに合わせて、
その遥か手前から予めその通行帯に入っておこうとするからです。
不忍通りの起点である目白台二丁目交差点
画面の右半分が護国寺方面に向かう車線です。
交差点の直後で車線が増え、
車の流れがそれぞれの車線に分かれていきます。
そして、ドライバーはひとたび目的の通行帯に入ると、
以後は基本的に車線変更をしません。
しかし、ドライバーのこの行動パターンは
サイクリストにとって非常に大きなリスクを生んでいます。
歩道が狭すぎるため、自転車は現実的には車道を走らざるを得ない。
パーキングメーターの駐車枠に停まった車のドアが突然開く可能性も考慮すれば、
自転車は第1通行帯の走行空間の中央付近を走らざるを得ません。
工事現場も路上駐車と同じく自転車の通行障害になっている。
コミュニティーバスも車道の端を塞ぐ。
ところが、ドライバーは自分が走っている通行帯に固執する傾向が有り、
前方に自転車が走っていても車線変更する手間を極端に嫌います(*)。
* これは道路交通法の20条3項違反ですが、
取り締まりが難しいので形骸化してしまっていますね。
かといって、制限40km/h、実勢速度では60km/hにも達しようかという道路で
(長い下り坂なのでスピードが上がりがちです)、
わざわざ自転車の速度に合わせて20〜30km/hに減速し、
車間時間を2秒以上確保して追走できるほど忍耐強いドライバーはいません。
結果、第1通行帯の後続車は車線変更しないまま
自転車の横スレスレを高速で追い越してしまいます。
つまり、都道437号のこの区間(目白台二丁目 → 護国寺西)では、
- 区間始点からずっと片側2車線が続く道路構造
- ひとたび目的の車線に入ったらそこに固執するドライバーの習性
(偶発的にではなく)構造的に起こりやくなっているんです。
反対車線は登り坂なので車と自転車の速度差は更に広がる。
反対側の車線も護国寺西からずっと2本の通行帯が続いています。
しかも護国寺から目白台へは登り坂なので、車と自転車の速度差は大きくなります。
一見すると非常に条件が悪い通行環境のように思えますが、
目白台方面へ向かう車は第1通行帯をほとんど使わない。
第1通行帯は車の通行が非常に少ないので、
実質的には3m幅の自転車/原付レーンのように機能しています。
第1通行帯を走る原付とタクシー
もちろん車の通行がゼロというわけではありません。
ガラ空きの通行帯が有れば、そちらに車線変更して
一気に前に出ようとするドライバーはどこでも一定数は居ます。
しかし大部分の車は第2通行帯におとなしく収まっていますね。
殆どの車が右折する。
その理由は、第2通行帯がその先で
目白台二丁目交差点の右折レーンになっており、
殆どの車がこの交差点で右折するからです。
目的の通行帯に予め入っておくというドライバーの行動原理は同じですが、
こちら側の車線ではそれがサイクリストに有利に働いています。
そして注目すべきは、ほぼ全ての車が第2通行帯に集中しているのに、
(少なくとも私が見た曜日・時間帯では)
渋滞する事なく円滑に流れているという事です。
交差点の直近だけでなく単路区間も片側2車線で続いているが、
本当に必要な走行空間はこれだけなのでは?
現状の車線の模式図(駐車枠は省略)
単路区間もずっと片側2車線が続いている【寸胴型】の車道空間。
メリハリの無い肥満体の構造で、機能的に無駄が多いです。
この皺寄せが、
- 狭すぎる歩道
- 自転車の事故リスク
このブクブクに太った車道をシェイプアップしてみましょう。
ロード・ダイエットで絞り込んだ例
このように単路区間を片側1車線に絞り込み、交差点の手前だけ
車線を増やした【砂時計型】の構造にすれば無駄がなくなります。
歩道を拡幅したり、自転車の通行空間を捻出する余裕も生まれます。
お箸を並べたような構造
日本ではこのように道路用地を終始一定幅で確保し、
単路区間で空間を無駄にしてしまう例が多いですね。
これに対して、オランダでは
アムステルダムの幹線道路
(Google Maps の画像を加工)
(Google Maps の画像を加工)
幹線道路であっても交差点の手前以外では
大胆に片側1車線に絞り込む例も有ります。
フォークを並べたような構造
では、都道437号の目白台二丁目〜護国寺西の区間で、
どれだけの空間が浪費されているのでしょうか?
同区間(約 650 m)のうち、交差点の手前で
複数の通行帯が必要な区間を除くと、
- 護国寺方面行き車線は約 560 m
- 目白台方面行き車線は約 570 m
通行帯の幅員を 3 m とすると、
3 * (560 + 570) = 3390で、約 3400 平方メートルの土地を浪費している事になります。
(路駐空間も無駄と考えるなら 2260 m^2、合計で 5650 m^2です。)
一方、交差点の前後では複数の車線を設置する必要性から
自転車道の設置余裕が無くなってしまっています。
(全国各地の道路で自転車レーンや自転車道が
交差点の手前で消失してしまうのはこれが原因です。)
土地の使い方下手すぎ。
ところが、この空間浪費癖はまだまだ止まりそうにありません。
道路用地の取得を知らせる看板
現在、不忍通りは目白台二丁目で終わっていますが、
東京都はこれを南に延伸し、西早稲田に繋げようとしています。
(第2次大戦直後に計画された環状4号線の一部として。)
環状路線を建設して今以上に車の利便性を高める事が
妥当かどうかはさておき(自転車の優位性が相対的に下がる)、
その計画幅員には疑問を感じます。
建設予定図(東京都第六建設事務所のページより)
駐停車需要が存在しないトンネルや掘割部も含め、
新たに整備する区間は片側2車線が確保されています。
しかし、果たしてそれを有効に使えるのでしょうか。
というのも、この新設区間が繋ごうとしている
不忍通りや早稲田大学横の道路、外苑西通りは、
片側2車線ではあるものの、
自転車道が全く整備されていないからです。
不忍通り・千石一丁目交差点
自転車の動線を示したナビライン(矢羽根)が
縁石にぶち当たって終わっている
交差点内だけ処理して後はほったらかし。
自転車の動線を示したナビライン(矢羽根)が
縁石にぶち当たって終わっている
交差点内だけ処理して後はほったらかし。
今後、それらの区間で自転車の走行空間を捻出する為に車道を縮減すれば、
片側2車線などという贅沢をしている余裕は無くなります。
そうなれば目白台のトンネル区間だけ片側2車線あっても無駄です。
既に収用された土地
東京都は道路用地を拡幅しなければ地上とトンネルの分岐部を
建設できないと考えているようですが、掘割を片側1車線として計 7 m、
地上の側道を駐停車禁止にして 3.5 m ずつにすれば 14 m に収まります。
現在の車道幅員は約 17 m なので、既存の空間のやり繰りで充分でした。
(尤も、自転車道も一緒に整備しようとするなら話は別ですが。)
2014年11月2日追記
{
仮にこの区間が開通すると、早稲田方面から来る車と
目白方面から来る車が合流するので、目白台〜護国寺が
片側1車線だと車道の通行容量が不足するように思えます。
しかし、一般道の車の流れは信号機によって脈動が付けられ、
流れに疎密が生まれるので、目白台〜護国寺区間に流入する
2本の流れの脈動が重ならないようにうまく信号を調整すれば、
片側1車線の道路を仮想的に2車線として使えるかもしれません。
四畳半の部屋に卓袱台を出したり布団を敷いたり、みたいなイメージ。
}
シリーズ一覧
- パーキングメーター (1) 代々木公園
- パーキングメーター (2) 上井草
- パーキングメーター (3) 高円寺南
- パーキングメーター (4) 目白台