2013年8月1日木曜日

交差点の設計ミス(11)

今回は丸の内周辺の危険な交差点を取り上げます。

さすが日本の中心だけあって、車道から自転車を
排除しようという設計思想が色濃く現われています。




一つ目は丸の内一丁目交差点と、その一つ東の名無し交差点。


View Larger Map

車道の左端を通行する自転車が永代通り(国道1号)を東進して
この2つの交差点を直進する場合、JRのガード下に大きな罠が隠れています。


2009年11月に撮影された丸の内一丁目交差点 (C) Google


架道橋の手前の交差点はごく普通の構造なので、
そのまま第1通行帯を進んで線路の下に潜ります。

すると、そこで初めて
第1通行帯が左折専用レーンである事が分かります。

ガードの下は薄暗く、路面の矢印標示は手前からは見えません。
また、ガードの入口上(制限高さが書かれている位置)にも
矢印の標識は有りません。


第1の罠です。


JRの線路を潜り抜けた直後に二つ目の交差点が有ります。
自転車で永代通りを走ってきた場合、
大抵ここで赤信号に引っ掛かります。

第1通行帯の停止線手前でそのまま信号待ちをしていると、
左折レーンのみが先行して青に変わります。
すると、後続のダンプカーなどが自転車のすぐ横を
追い越して左折していきます。内輪差がヤバいです。

車道は幅員がかなり狭く、退避できるスペースは有りません。
この状況を避けるには、自転車も車と一緒に発進して左折し、
横断歩道の辺りで歩道に緊急避難する他ありません。


第2の罠です。


では、この二つの罠を回避するにはどうすれば良いのでしょうか。

一つは、ガードの手前で左の歩道に上がってしまう方法です。
これなら、車と動線が交差する事なく、
二つの交差点を安全に通過できます。

しかし、ガード下の歩道は狭くて暗く、
周囲には居酒屋も密集しているので、
時間帯によっては酔客も多く、
歩行者との事故リスクが有ります。

サイクリストが自己判断で通行するならともかく、
警察や道路管理者が推奨するのは不適切な方法でしょう。


もう一つは、ガードの手前で直進レーンの第2通行帯に
車線変更しておくという方法ですが、
これは非常に危険なので、お勧めできません。

理由は3つ有ります。

1. まず、自転車がガード手前に差し掛かるタイミングでは、
大抵は車の流れが途切れていません。このため、
サイクリストは注意力のリソースを後方に割かざるを得ず、
前方不注意になりがちです。

2. 次に、丸の内周辺はドライバーが非常に殺気立っているので、
自転車が車線変更しようとしても、協力的な態度が得られない
という問題が有ります。

アイコンタクトや手信号を出しても、後続車がブレーキを掛けて
車間距離を取ってくれる事は期待できません。これは
ガードを潜り抜けたすぐ先の交差点が赤信号の場合でも同様です。

3. 辛うじて車線変更に成功し、第2レーンに入れたとしましょう。
その場合も、ガード下での信号待ちから発進した直後に、
後続車が危険なタイミングで強引に自転車を追い越す事が有ります。

交差点を通過してしまえば、自転車は第2通行帯を
走り続ける意味が有りませんから、当然、第1通行帯に戻りますが、
それすら待てずに早々に追い越しを始めてしまうドライバーが
いる事を覚悟しておく必要が有ります。

(この通行方法の適法性については過去記事を参照してください。
ただ、日本の車社会は「俺らのルール」が道交法をオーバーライド
しているのが現状なので、法律面での議論はあまり意味が有りません。
自転車は自分の身を守る事を最優先に考えるべきです。)



二つ目は大手門交差点と、その一つ北の名無し交差点です。


View Larger Map


View Larger Map

内堀通り(都道301号)を時計回り(南下)する場合、
どちらの交差点も第1通行帯は左折専用レーンです。

左折レーンだけが先行して青になるわけではないので、
交差点を直進しようとする自転車は定石どおり、
左折する車の流れに乗り、前の車が左折して目の前が空いたら
直進すれば良いはずですが、ここではそうは行きません。

どちらの交差点も、第2通行帯が左折・直進兼用レーンで、
時間帯によっては第2通行帯から左折する車も多く、
交差点を直進しようとする自転車の右側面に
それらの車が突っ込んでくるからです。

自転車にとっては斜め後ろは死角であり、
第2通行帯の左折車にとっては、第1通行帯の左折車列から突然、
直進自転車が飛び出してくる形になります。

また、第2通行帯から大回りで左折する車にとっては、
停止線から左折後の横断歩道までかなり距離が有るので、
ドライバーが油断してアクセルを踏み込み、
ブレーキが遅れる恐れも有ります。

非常に悪質な設計の交差点と言えます。



なお、大手門交差点から南側は
例によって歩道上に自転車通行帯が設けられています。

自転車通行帯(灰色部分)は交差点手前や、
沿道のビルの車用出入り口付近で途切れています。

また、沿道のパレスビルやパレスホテルに出入りする車が
時々横切りますが、植樹帯で死角が作られています。


日本の中心の、しかも完成したばかりの再開発地区でも、
自転車の走行空間は安定の低クオリティーですね。

国の方針とは裏腹に、ますます自転車の歩道走行が
強化されている例でもあります。