アームスフォート(Amersfoort)の自転車走行環境を
Google Street Viewで見学してみました。
※Street View のキャプチャ画像には
緯度・経度を表わす数字を付記しました。
この数字でググると Google Maps 上で撮影地点が特定できます。
交差点 (kruispunt)
信号機の無い十字路
52.146206, 5.368104
住宅街の中の単純な十字路です。写真の視点は
優先道路(黄色い菱形の標識で明示されている)に有りますが、
優先道路側にはハンプが有り、速度を抑制する構造です。
定規の目盛りのような路面標示がハンプを意味します。
信号機の無い十字路
52.147272, 5.368022
同じ交差点を非優先道路側から見ます。
小さな三角形が並んだ路面標示、通称「鮫の歯」は
「道を譲れ」を意味しています。
優先道路、非優先道路それぞれの車に注意を促す仕掛けが有るんですね。
ヒューマンエラーに対して2重の防護を張り巡らせています。
日本の道路では優先道路にはハンプも何も設けない事が多いですが、
こうすると優先道路のドライバーは大抵、事故リスクを無視して
高速で交差点を通過してしまうので、出会い頭衝突を防ぐ
最終ラインは非優先道路のドライバーが一人で担う事になります。
これはオランダ方式の方が優れているでしょう。
ただ、この交差点では自転車レーンのペイントが途切れていますね。
中心街に近い地区の十字路(航空写真)
52.152027, 5.382142
52.152027, 5.382142
こちらは信号機の有る中規模の十字路交差点です。
自転車道(赤色部分)は交差点の内部でも一方通行が貫かれており、
反時計回りのロータリーのように機能しています。
(角張っていますが。)
自転車道を直線的に通さず、動線を左右に膨らませるこの構造は、
オランダが試行錯誤を繰り返した結果たどり着いたもので、
- 車対自転車の右折時衝突の防止
- 自転車が信号待ちする間の滞留場所の確保
これに対して、日本が去年になってようやくまとめた
自転車インフラ整備のガイドラインでは、オランダが失敗と断じて
廃止した旧世代の交差点構造が推奨されています。
過去の参考記事
日本の自転車インフラは周回遅れ
中心市街を取り囲む環状道路の交差点(2010年に現地で撮影)
52.153796, 5.384348
52.153796, 5.384348
通行量の多い幹線道路の交差点です。
車道だけ見れば丁字路ですが、そこに商店街通りが接続しているので
歩行者と自転車にとっては十字路です。
画面手前を自転車道が横切っており、
その横に「鮫の歯」が並んでいますが、
これは歩行者に向けて「自転車に道を譲れ」という意味ではなく、
商店街通りとの接続部
52.153796, 5.384348
商店街通りから出てきた自転車に向けて、
「自転車道を通行する自転車に道を譲れ」という意味のものでしょう。
ちょうど、優先道路と脇道の関係ですね。
歩行者用には「鮫の歯」とは別に点字ブロックが設置されています。
商店街通りは歩行者が最優先されているので、
自転車レーンなどは無く、幹線道路の歩道と地続きになっています。
なので、商店街通りの出口では
自転車は一時的に歩道を横切る形になります。
駅前の丁字路(航空写真)
52.152699, 5.373458
52.152699, 5.373458
もう一ヶ所、駅前のやや複雑な丁字路を見てみます。
駅前の丁字路
52.152266, 5.373196
この交差点では、自転車レーン付きの道路(住宅街の道路)と
自転車道付きの道路(駅前の道路)が接続しています。
交差点の直近、僅か 60 m 程度の区間ですが、
自転車レーンが引かれています。
駅前の丁字路
52.152439, 5.373239
自転車のおばちゃんが手信号を出してますね。
オランダでは手信号を出す人をかなり見掛けました。
しかも、右左折を完了するまで出し続ける人も結構います。
幼い頃から練習を重ねているんでしょうか。
車線の停止線の先には横断歩道が有りますが、
細い点線で囲ってあるだけなので視認性は極めて低いですね。
そのさらに先に有る自転車道の横断帯の方がよほど目立っています。
駅前の丁字路
52.152739, 5.373222
自転車レーン(一方通行)と自転車道(双方向通行)の接続部です。
横断歩道の前後で自転車レーンが途切れているので
ちょっと分かりにくいですね。
小さい四角が並んだ路面標示、通称「象の足」は
交差点内の自転車道部分を意味します。
象の足の手前には「鮫の歯」が並んでいるので、
自転車道を通行する自転車が優先です。
自転車道を横切った先にも少し離れた位置に「鮫の歯」が
並んでいますが、これは駅前道路に合流しようとする車の待機位置です。
待機中に車が自転車道を塞がないように空間を空けてあるんですね。
駅前の丁字路
52.152723, 5.373223
自転車に乗った子供が自転車用の押しボタンを押しています。
信号と押しボタンは歩行者用と自転車用が別々に用意されています。
この視点からは信号機の灯火が見えませんが、
自転車用の押しボタンを押すサイクリスト
52.152817, 5.373686
信号待ちする自転車の視点まで下がると見えます。
灯火は対岸ではなく停止位置の直近で光っているんですね。
また、日本に比べてかなり低い位置に取り付けられています。
これは車道の信号機も同じです。この方式には2つの利点が有ります。
- 交差道路の信号機が見えない → 先走り発進の防止
- 停止位置を過ぎると信号機が見えない → 停止線超過の防止
一方、日本が採用している方式はアメリカに倣ったものです。
安全上優れているのは前者です。
日本が何故アメリカに追従するのか謎です。
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シリーズ記事の一覧
アームスフォートの自転車環境 (1) 市の概観
アームスフォートの自転車環境 (2) ネットワーク
アームスフォートの自転車環境 (3) 歩道
アームスフォートの自転車環境 (4) 自転車道
アームスフォートの自転車環境 (5) 自転車レーン
アームスフォートの自転車環境 (6) 車道
アームスフォートの自転車環境 (7) 横断歩道
アームスフォートの自転車環境 (8) バス停
アームスフォートの自転車環境 (9) 交差点
アームスフォートの自転車環境 (10) ロータリー
アームスフォートの自転車環境 (11) 踏切
アームスフォートの自転車環境 (12) 駅
アームスフォートの自転車環境 (13) 商店街通り
アームスフォートの自転車環境 (14) 広場