2013年10月4日金曜日

トヨタのPHV車の宣伝



「本当にエコで経済的な乗り物だよな」


仕事(物理)の単位はジュール(J)です。
ジュールは動かす物体の質量で決まります。(加速度が同じ場合)
これはどう足掻いても動かせない物理的な事実です。

Prius PHV の車両総重量は最も軽いグレードLで1675kgです。
自転車は、例えばブリヂストンの実用車、ジュピターが23.8kgです。


車のエンジンと人体では燃焼効率はだいぶ違いますが、
それでもこれだけ圧倒的な差が有るわけです。

宣伝映像では自転車と車を両方出して、どちらも
「本当にエコで経済的な乗り物だよな」
と、阿部寛さん扮する郵便配達員に言わせていますが、
この感性は本格的に狂ってますね。


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もう一つ、同じトヨタのPHVについて、
東洋経済が制作した広告企画が有りました。
要はモニターレビューですが、ここでも信じられないような
感性のズレが見られました。

Aさんは45歳の主婦。高校生の長男と中学生の長女の母親で、
運転は二人の子供の駅への送り迎えと近所への買い物がメイン。

/* 中略 */

家から最寄りの駅までは片道5kmほどあるんです。
子供たちは二人とも名古屋の学校へ通っているので、
車で送らないと自転車かバスということになるのだけれど、
自転車は坂道がかなりきついし、バスはいつも渋滞がち
で、送り迎えになるわけですが、登校時間が違うので送りは2回。
帰りはできるだけ合わせるように言っていますが、
やはり2回になることもあります。

あとは、週2、3回の近場への買い物と、月に1回、
名古屋の病院に行きます。これが片道約30kmで、
グラフで走行距離が延びている日が、その日です。

え、たった5kmでわざわざ車?

自転車には坂道がきついと言いますが、
長崎のように30%級の上り勾配でも有るんでしょうか。
20%程度なら単にギヤ比を下げれば済む話ですが……。

お子さんがよほど体力に乏しいならともかく、
この程度の条件で自転車通学をさせないのはおかしいです。

それに「バスはいつも渋滞がち」というのは、
まさしくこのAさんのようなマイカー利用者が多い所為でしょ?
公共交通機関の為に道を空けるという発想は無いのでしょうか。
合成の誤謬を地で行く人だなあ。

悪天候の日や30kmの通院には車の利用も妥当ですが、
それ以外はちょっと車に過剰に依存しているのではと感じます。

続いてもう一人のモニター。

Bさんは26歳のドライブを趣味にする女性の会社員。
平日は通勤に使って、週末に友人たちと遠出を楽しむというパターン

/* 中略 */

鉄道の最寄り駅は遠いし、バスは不便で高い。
車を使わざるをえないような状況があるのです。
両親も公共交通の便がよくない地方の出身で、
ですから、物心ついたときから、車で移動するのが
当たり前という感覚で育ちました。

グラフで毎週末のように走行距離が延びているのもそのためで、
親しく付き合っている6人の仲間と大阪とか木曽の馬籠とかに
車で遊びに行きます。平日は、片道7kmのところにある
勤め先への通勤で、このときはもっぱらEV走行ですね。

私はエコ精神はあるほうで、言葉を替えればケチなのですが、
車だけが例外でした。外観重視で、燃費が悪く、
しかもハイオクの車に乗っていたのです。
モニターでプリウスPHVが来て、
やっと私のケチスタイルが完結したというか、
電気代は母が払うので、こまめに充電しました。

え? これのどこが「エコ精神」なんだ?
こういう例を見るにつけ、田舎者が言う
「車を使わざるを得ない」
は信用できないなと痛烈に実感します。

だいたい、片道7kmの通勤なら自転車でも30分掛からないのでは?
週末の遊びも「エコ精神」が有るなら電車で行けるでしょ。

趣味としてドライブを楽しむ事まで制限すべきではない
という考え方も有るかもしれません。
しかし、そうした自由の権利以前に、
地球温暖化で生存権が脅かされては元も子もない。

このモニターBさんは最後に、

地球に貢献しているのが実感できるので、
交差点で停止したときなんかも誇らしい。
できれば、私も買い替えたいです。

とまで言っていますが、Bさんが改善に貢献しているのは
Bさんの走行地域内のローカルな環境だけです。
(車そのものから出る騒音と排気ガスは減るので。)

ガソリン車とPHV車の違いは、端的には
車を動かすエネルギーを車上で作るか発電所で作るかです。

細かく見れば
  • 発電所から車までの送電ロスというマイナス
  • 車上の発電ブレーキによるプラス
も有りますが、トータルではほぼ同じになるそうなので、
「地球環境」という視点で見れば、別に改善していません。
むしろ広告文句の「エコ」に安心して車の稼働台数が
増える事の方が問題です。

この辺は、トヨタのイメージ戦略に
うまく乗せられたバカ消費者の好例と言えるのかもしれません。
(あーらら、「バカ」って言っちゃった。)