特徴的な文法が有るらしい事に気付きました。
回答の趣旨と密接に関係する副詞が文頭に来て、
本来の修飾対象から掛け離れてしまうという現象です。
直近の例で見てみます。
NHK Eテレで2013年2月14日に放送された『オトナへのトビラTV』から。
街頭インタビューで、「自分は親離れできている」と思う理由を
訊ねられた一人暮らしの女性の回答です。
「そんなにさみしいって思って
自分から(実家に)連絡する事もそんなに無いので。」
ここで、一番目の「そんなに」が修飾しているのは直後の「さみしい」ではなく、
文末の「無い」だろうと思われます。
上記の例だけだと説得力に欠けてしまうのですが、
生憎、適当な発話例が思い出せません。
ただ、インタビューの場面で回答者が何かの理由を説明する場合、
それに関係する程度副詞を真っ先に口に出してしまう例が
数年前(或いはもっと昔から?)から出ています。
その背景から解釈すると、上記の発話例は恐らく、
まず心の中に「そんなに連絡しない」という大意が浮かんで、
それに情報を付加しつつ、並行して音声化しようとして、
第一声で「そんなに」と言ってしまった。
しかし、その後で思いのほか文の構造が重くなり、
「そんなに」の修飾対象が不明確になりそうだと思って、
本来の修飾対象の直前で改めて「そんなに」を加えた。
このように出来上がったと考えられます。
「そんなに」の他には「非常に」や「とても」なども
先走って文頭に出現しやすい語という印象を持っています。
また、インタビューの場面は必ずしも街頭に限らず、
会社の広報関係の部署に訪問してのインタビューなど、
回答者がそれなりに事前に準備できそうな環境でも
副詞の先走り現象は起こるようです。
2013年3月19日 用例追加
BSジャパン 「空から日本を見てみよう+」 渥美半島 3月19日放送
それまで川が少なく、水に乏しかった渥美半島が、
豊川用水の整備によって農作物が育てやすくなったという文脈で、
インタビューを受けていた万場調整池の管理者:
「すごく昔に比べると飛躍的な農業王国に(なりました)」
助詞など細部は写し間違えているかもしれません。
再放送が有ると良いのですが……。