2013年2月15日金曜日

国交省の自転車ガイドラインの感想 p.50-54 バス停部分

国土交通省が2012年11月29日に発表した
安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン(PDF)
を読みました。

問題点が無いか1ページずつ見ていきます。


以下、ページ番号はPDFファイル上の番号基準です。
紙面のノンブルとは一致していません。


p.50
(1)基本的な考え方
  • バス停部の設計では、自転車とバス乗降客との交錯や、
    自転車が停車中のバスを追い越すことによる事故の危険性が
    あることに留意するものとする。
  • バス交通が多くない路線では、注意喚起を行い、前後の区間と
    同様に自転車通行空間を直線的に連続させるものとする。
  • バス交通が多く、道路空間に余裕がある路線では、
    自転車とバス乗降客の交錯を減らし、双方の安全性を向上させつつ、
    自転車通行空間を連続させるものとする。
  • 通勤通学時において、概ね常時バス停にバスが停車するほど
    バス交通が多く、かつ道路空間に余裕がないために自転車通行空間の
    確保が困難な路線では、自転車交通とバス交通を分離させるため、
    代替路を検討するものとする。

基本的には良い方向だと思いますが、最後の点については、
バス車体が車道幅に対して大き過ぎる路線が有る
という問題には触れていませんね。

それから、自転車が都市に於ける交通モードの中で
最も優位に立てるように、バスを簡単に追い越せるようにしよう
とも書かれていません。


p.50
自転車通行空間に屈曲部を設ける場合は、
「1.2.1 自転車道(6)線形」を参考にするものとする。

ここで線形というのは、

p.41
道路附属物等を回避するためにやむを得ず自転車道に屈曲部を設ける場合は、
自転車の通行の安全性を確保するため、すりつけ長を十分に確保するもの
とする。例えば、通行速度を15km/h 程度と想定する場合には、
幅員2.0mの場合はシフト比(下図のΔW:L)を1:4 以上、
幅員2.5mの場合はシフト比1:3以上とすることが考えられる。

これの事です。

サイクロイド曲線クロソイド曲線や三次放物線は使わないんですね。
自転車だって一瞬でハンドルを切れるわけじゃないんだから、
こんなにグキッと曲げたら車体が不安定になりますよ。

15km/hという想定速度も、
デファクト・スタンダードになる恐れが濃厚です。

勾配区間による自然な速度上昇も勘案されてません。
皆が皆、行儀良くブレーキで速度を抑制すると思ったら大間違いです。


(ところで、上の
速度15km/hで幅員2.0mの場合のシフト比 1 : 4
というのは恐らく、斜めに進行する自転車の
左右方向の速度を1.0m/sと仮定した場合の値です。

左右方向に1.0m/sで移動するような角度で進行した場合、
自転車の速度が15km/hだと、移動ベクトルの
左右方向と前後方向の比率が 1 : 4.04 になるからです。

同じ式を使って、速度30km/h、左右方向0.5m/sという
条件で計算すると、シフト比は 1 : 16.6 になります。

サイクロイドクロソイドを使わず、単純な屈曲で済ませようというなら、
これくらいゆとりを持った値で設計してほしいもんですね。
国交省の設計指針はギリギリを攻め過ぎです。)

このシフト比が実際のところ危険なのか安全なのか、
山手通りの歩道上に実際に整備された自転車通行帯を走って
確かめてきました。

山手通りの東側歩道に設けられた宮下交差点停留所は、
その前後で歩道上の自転車通行帯が急角度に曲げられています。
GoogleMapの航空写真から判断する限り、曲げ角度は15度です。


View Larger Map

15度をガイドラインの表記法に直すと 1 : 3.73 です。
このレーンは幅員2.0mなので、ガイドラインより若干急という程度ですが、

下り坂であるこの地点を速度が上がった状態で通過すると、
急な屈曲によって動線が思ったより大きく膨らみ、
対向自転車の動線の真正面に飛び出してしまいました。

2013年10月28日 追記
さらに同バス停では大型の広告板が死角を作っており、
対向自転車を隠してしまっています。

参考記事
山手通りの自転車通行帯はマリオのステージ


さて、バス停部の設計について複数の案が図示されています。

p.50

自転車と歩行者の動線が交差する設計です。
ここで示されている通り、自転車に速度を抑制させる構造は必要でしょう。

この案では勾配は直線的ですが、縦曲線で最大斜度を稼ぐ手も有ります。
どちらの方が速度抑制効果やバス停ハザードの認知促進効果が高いかですね。


p.51
極めてシンプルな案です。
この場合、乗降中の自転車通過を防ぐ策として、
アメリカの通学バスのように、バス車体の側面から
「停止」の標識が飛び出るようにする事も考えられます。



交通島を設置する場合として3案が図示されています。

p.52


p.53

三番目のこれは自転車道に勾配を設けないパターンです。
自転車に対する速度抑止効果が落ちます。
この案は要らないんじゃないでしょうか。


それにしても、オランダ方式が入ってないのは気になりますね。



自転車道と車道の間に連続して緩衝帯を設け、
これをそのままバス停の乗降スペースにする。
緩衝帯は他にも、中心市街での駐車スペースや、
交差点内での安全性向上に寄与する。



自転車道に続いて、自転車レーンの場合です。

p.53
動線の重なりが発生します。
注意喚起の路面標示は基本的に無視されるものなので、
当てになりません。バス運転手が自転車の速度を低く誤認して
巻き込み事故に至るリスクが有ります。

それからこの図では、
バス停の路面標示の幅が2.5mで描かれているとすると、
自転車レーンの幅は約1.9mという事になります。

p.43で示された「1.5m以上」という値に随分とおまけしていますが、
実際に車道に1.9m幅で自転車レーン作る状況が有るんですかね。


p.54
この案ではバスと自転車の動線が交差しています。
やはりあまり好ましくありません。

p.54

最後のこれが一番まともです。